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前回に引き続き、千葉県いすみ市で移住者の促進活動を行う「NPO法人いすみライフスタイル研究所」の理事長・高原和江さん、理事・江崎 亮さんのお話をうかがいます。
移住で一番気になるのは、地域への溶け込み方。地域とうまく生活するコツとは何か、長く移住者をサポートしてきたお二人ならではの、リアルなお話をお聞きしました。

移住者を受け入れやすい地域とは?

──移住者と地域をつなぐためにマーケットが機能しているというお話がありましたが、日常のなかでの移住者の方々のなじみ方はいかがですか?

高原さん:場所、地区によって差がどうしても出ますよね。たとえば、海側の地区は昔から別荘が多いエリアなので、今も移住者が多いんですね。そうすると、そのお子さんたちが成長して大きくなっていき、それが段々地元化していたり。逆に里山側は、あまり物件がないので、移住者も多くない。すると、家だけ気に入って買ったけど、まわりと話をするきっかけがない、という例を聞くこともありますね。

太東岬の高台から見えるいすみの海岸。

──確かに、山より海のほうが入りやすそうなイメージはありますね。

江崎さん:そうですね。さらに海側でも港ではなくて、どちらかというとビーチのほうが移住者にとっては入りやすかったりする。いすみ市のなかでも、移住者を受け入れやすい地域というのはあって、それは各地域いろいろなんですよ。移住のアドバイスをするときも「この地区だといいかもしれない」と、オフレコ的に教えてあげたりすることは多いですよ。

高原さん:地区のお祭りにしても、「ぜひ参加してください」というウエルカムな地域もあれば、代々の歴史があるから「入れません」という地区もあったり、さまざまです。ウチのメンバーで、PTAの会長をしている人がいるんですけど、「大体、この地区はこういう感じで、地区長さんはこの人で」という情報から、地元の掃除は出たほうがいいよ、など、地元ルールはお話しますね。

趣味を通して地域に接点をもつ

──より上手に地域で暮らすコツってなんだと思いますか?

高原さん:全部ではないにしても、やはり、地域の行事にちゃんと参加している方は、溶け込もうと意識されているので、うまくいきますよね。先ほど、地域のお祭りの話をしましたが、移住者が多くなったので長くやっていなかったお祭りが復活した、という地域の例もあります。そうなるまでには時間がかかるかもしれませんが、挨拶をちゃんとするとか日常のなかのちょっとしたつながりは本当に大事なんですよ。

江崎さん:移住してきて、地域のコミュニティに入れるかというと、それができる人はいいんですけど、できない人もいらっしゃいますよね。それなら、無理にすべてを合わせなくても、合う部分だけ見つけるやり方でもいいんじゃないかな、と思います。たとえば、この近くの地域には「いすみ薪ネットワーク」という会があるんですよ。薪もホームセンターで買えば高いし、そもそもそこら辺にいっぱい木の枝とか落ちている。それだったら、自分たちで薪を拾ったり、希望があればご近所の木を剪定して、薪を融通し合おうよ、という集まりなんです。そういうところから地域と接点をもつ、というやり方もありますよね。それが絵を描くことだったり、里山をとにかく歩きたいとかね。

高原さん:そういう会を定期的にやっている方もいらっしゃるんですよ。女性だったら音楽を習いたいとかね。趣味でつながっていく。

江崎さん:どの地域でも、自分が入って行ける入口って必ずありますから。特に田舎暮らしをしたくて引っ越してきた方々は、何かしら共通項がある。そういういろんなコミュニティがあることを僕たちが知っておくだけでも、それをネタに移住者同士をつなげてあげることができる。

高原和江さん「本業は野菜ソムリエ。職業柄、食や農業のことを考えるようになって、6年前に両親の田畑のあるいすみにUターンしました」

江崎 亮さん「93年に東京からいすみに。サーファーの友だちに“海岸がいい”と教えてもらったのがきっかけです」

前のめりに家を探す前に考えたいこと

──いすみ市は若い移住者が多いとも聞いています。

高原さん:2008年の最初の体験ツアーからもそういう傾向があったようです。移住といえば、定年された年配の方々がいらっしゃると思ったら、予想に反して若い女の子が参加してきた。そのなかから、6~7年前に二人の女の子が実際に引っ越してきたんですよね。

江崎さん:2000年代になってから、ちょうど、ロハス、マクロビオティック、オーガニックというキーワードが出て来て、田舎暮らしに憧れる波と合ったんだと思います。

高原さん:マクロビオティック研究家で著名な中島デコ*さんが、ご家族でいすみに1999年に移住されて、マクロビ関係の方が随分、遊びにいらっしゃるようになったという流れもありましたね。

*マクロビオティック料理研究家。一家でいすみ市に移住し、写真家でご主人のエバレット・ブラウン氏とカフェ、宿泊、イベントなどを行う「ブラウンズフィールド」をいすみで主宰。

江崎さん:さらに 震災以降の流れとして、収入は減るかもしれないけれど、都心を離れて田舎や地方で地域の社会貢献活動をしながら、モチベーションもって生きていく、という志向が、移住者の方々を見ているとリアルにあるような気がしますね。

高原さん:確かに、「生き甲斐のある、自分に合った心地よい暮らし方を見つけたい」という方が多いように思います。ただ、実際引っ越して、そこに落差があると、なかなか大変。それは年齢問わず、どなたにも言えることだと思います。だから、急に前のめりで家を買って移住しようとする方には「ちょっと待ってください。いきなり土地購入じゃなくて、家を借りるところから始めて、この地域のことが分かってから、ちゃんとおウチを探したほうがいいですよ」という話はしますね。いきなり引っ越してしまう前に、部屋を借りてちょっと通ってみる、という方法もあります。

──それなら、肩に力を入れなくてもいいですよね。都心から通える距離なんでしょうか。

江崎さん:通えます。なんとかなります。例えばいすみの上の一宮町にある上総一ノ宮(かずさいちのみや)駅は、快速特急の始発なので、座って通勤できて、実際、東京まで通勤している人もいる。そういうライフスタイルもありますよ。

高原さん:仕事があるかどうかで移住を悩んでいるなら、まずは都心、田舎の両方を楽しむところからはじめるのも手です。例えば最初は千葉あたりに引っ越して、そこからいすみに来てもらってもいいわけですし。相談者にも敢えて最初は「遊びに来て下さい」とお話しています。

江崎さん:生活の優先順位をどうつけるかだと思いますよ。そこをきちんと整理してから、場所・物件を探し、暮らし方を探す。その辺りが整理されていなかったら、「こんなはずじゃない」ということになりがち。夫婦で移住する場合は、夫婦間でちゃんとすり合わせをすることも大切ですよね。とても多いのは、奥さんは都会で暮らしたい、というパターン。女の人はちょっとショッピングに行ったり、映画を見たり、友だちと食事をしたり、というのが好きな方が多いですよね。

──女性はカルチャー好きですからね。

江崎さん:はい。でも、旦那さんは大自然のなかで鳥の声を聞き、草花とたわむれ、釣りをして、みたいなのが好きだという(笑)。もちろん、お二人ともそういう暮らしが好きで上手くやっていらっしゃる方もいる。

高原さん:体験ツアーでも、「奥さんを連れて来ようかと思ったけど、内緒で来た」とか、その逆もありましたね。

江崎さん:どういう暮らし方をしたいかで、住む場所も変わってくる。房総といっても広いですし、地域の特性もあるから自分たちが過ごしたいライフスタイルに合ったエリアを探すことですよね。例えば、千葉県で気軽に都心と行き来するなら内房だと君津、木更津、外房なら一宮。自然の中でどっぷり田舎暮らしするなら館山、南房総、鴨川というように、視野も変わってきます。

公園としても整備されている太東岬の灯台。断崖絶壁の眼下には円みを帯びた水平線も美しい太平洋が。

自然は本当の意味でのパブリックスペース

──では、手はじめに地域とつながりのある、こちらのようなNPOなどに自分でコンタクトをとったり、イベントに遊びに行ってみるところから探ってみる、ということですね。

江崎さん:房総でいうと館山市の移住定住ネットワークのNPO「おせっ会」やウチのようなところを尋ねてみてください。

高原さん:そうですね。いすみと館山とでも情報が違うし、お互い交流もあるから、情報交換もできます。実際、ご自身で来て、場所に触れてみてください。そうして、気軽に遊びに来れる、第二の本拠地をつくってもいいかもしれない。

江崎さん:いい感じで物件を見つけて買って、そこで完結してもいいんですが、何かあったときに、地域とゆるいつながりがあると暮らしやすいですよね。環境ひとつとっても、ここには都市部にはない、山、海をはじめ、広大なパブリックスペースがある。

高原さん:そうですね。共通の話題として「あそこの桜がきれいだね」と、皆で共有して楽しめる。

江崎さん:自然が地域のもので、皆が共有できる本当の意味でのパブリックスペースがたくさんある。それをゆったりと楽しむことができます。いすみはコンパクトなエリアに里山、里海があり、いすみ鉄道というローカル鉄道もあって、田舎を短時間で楽しめますからね。

高原さん:いすみを流れている夷隅(いすみ)川という二級河川は、生物多様性のなかで重要なはたらきをしていて、いまだに新種のキノコや植物が見つかったり、河口の海べりには器械根と言われる広大な岩礁地帯があって、伊勢エビやサザエが生息していたり。

江崎さん:いろいろなものが揃っているので、それぞれいろいろな人が面白いと思うツボがそれぞれあって、どれかのツボにはまると思いますよ。なぜか面白い人もたくさん集まってくるんですよね。

高原さん:そう。いすみに集まる人は人間も多様で、それぞれに楽しんでいるんですよ。そんな生活を試してみたいと思ったら、まずは、私たちとコンタクトをとって、知り合いになるところから始めてみてください。そして、また気軽に来れるようなら、遊びに来て、移住されるならお手伝いします。そのために、この事務所もそうですし、いつでも誰でも来れるような場所を私たちはつくって待っていますから。

江原さん:「移住」といえば構えてしまいがちですが、最近、若い人たちがグループで一軒家のセカンドハウスを探している、という話を耳にしたんですね。仲間との共有なら、いろいろなリスクも軽くなるし、なるほどな、と思いました。そういう敷居の低い方法からはじめるのもアリですよね。スタイルはいろいろあると思います。田舎暮らしに興味をもったなら、現地にリフレッシュ目的でいいので、一度遊びに行ってみてください。自分のペースのやり方が何かしら見つかるはずですよ。

里山地帯。のどかで静かな時間が流れています。

 

NPO法人 いすみライフスタイル研究所 高原和江さん 江崎 亮さん インタビュー 〜前編」はこちらから

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