インタビュー

セカンドハウスの生活を満喫している方にお話を伺う「Villaの達人」シリーズ。前回に引き続き、「ハコスコ」社の代表、脳科学者の藤井直敬さん、同社共同経営者の恵子さんご夫妻のインタビューをお届けします。熱海と東京のデュアルライフのあり方をお聞きします。

「二拠点の週末婚で、夫婦喧嘩がなくなりました」

──さて、東京だけでの住まいからこちらとの二拠点生活をはじめて、何が変わりましたか?

恵子さん:やっぱり、私は日々を丁寧に暮らすようになりましたよね。前職のころは夕飯が食べられなくて自販機で買ったおせんべいで終わり、みたいなことが結構あった。さすがにそれはダメですよね。この家に移ったことと前職をやめてハコスコをはじめたタイミングが同じということもあって、自分が納得できる時間の使い方ができているのが大きい変化です。家の庭作りなどに時間をかけることができている。あと、ふたりでいて変わったことがふたつあるんです。まず、二拠点にして週末婚というスタイルをとると、主人がこの家に来るのは金曜日の夜から日曜日の夜までの限られた2日間の48時間。だから、喧嘩することがない(笑)。

直敬さん:まあ、喧嘩したら東京に帰ればいいので(笑)。

恵子さん:喧嘩しても毎週毎週気持ちは切り替わるので、週末にわざわざ東京から来てくれているという気持ちになるんですよね。主人が来る前には「お掃除しておこう」っていうような、これまでにないおもてなしの気持ちが生まれました。

直敬さん:結婚して15年ですからね。ベタベタとずっといなくても週末婚、通い婚みたいなかたちは、実際試してみるとよかったと思いますよ。

ガラス張りの二階のバスルーム。伊豆山の自然を眺めながら入浴できます

収納はすべてビルトイン。洗濯機も美しく収まっています

家に戻ることが小旅行、家にいることがレジャー

恵子さん:2番目に変わったこととして、以前はせっかくの連休や土日となると、レジャーはどこか行かなくちゃ、って思っていたことが、家のメンテナンスの時間に変わって、結構楽しいんですよ。芝刈りをする楽しみや、裏の畑で農作物をつくるとか。私たちには子どもがいないので、そういう点で、「家」という夫婦で共通して育てるものが出来たのは楽しいですね。

──畑仕事などのお家のことをやっているほうが落ち着けるということですよね。

恵子さん:はい。家のことをやるのは、表面的にはレジャーじゃないかもしれないけど、私たちの気持ちはレジャーなんですね。家のメンテを楽しむことは「積み重ね」ていく感じがあって、今日芝を刈ったらきれいになる、畑作業すると実がなる、みたいな。目に見えて変わっていくことが楽しいんです。今までのレジャーと違って、例えば何かを見に出かけ「消費する」だけということとは違いますよね。

直敬さん:ここに来ると、僕も芝刈りをしたり、裏庭の畑の作業をちょこちょこやって、あとは普通に仕事したりゴロゴロしたり。僕はもともと出不精なんだけど、毎週小旅行しているようなもので、彼女は彼女で週に一度、水曜日に東京にミーティングで行く。お互い小旅行を定期的にやっている楽しさがありますね。新幹線のこだまも遅れないから快適だしね。

恵子さん:私は水曜、木曜しか東京に行かないようにしているから、一週間にメリハリがあって、仕事の効率もいいんですよ。週末は二人で過ごして、水木は東京、月火金は熱海のこの家でがっつり作業、と、リズムが出来やすくなりましたね。

二階にはお二人それぞれの書斎とベッドルームが

リモートワーキングの時代だから場所から解放される

──他にお仕事の面で気持ちが変化したことはありますか?

恵子さん:去年の夏、サラリーマンを辞めて、そこから主人とハコスコの事業を一緒にはじめたわけですが、私はほとんど熱海にいるという物理的な制約があるじゃないですか。だから、人にまかせるということをするようになって、仕事面で大らかになったかもしれませんね。自分が東京にいたら、自分が作業しなきゃ、ミーティングに出なきゃ、って思っていただろうけど、どっちみち行けないとスタッフや主人にまかせざるを得ない。

──それで会社のオペレーションは可能なんですか。

直敬さん:そもそも会社は自分たちを入れて8人ですけど、全員リモートワーキングなので、週に1~2度のミーティングで充分。あとは一週間の動きを共有、すり合わせしておけば、基本的に誰がどこにいてもいいんですよ。

恵子さん:リモートワーキングでできるところは、各自が全責任もってやりますしね。ハコスコ社は、実はデータのやりとりがほとんどの会社なので、基本的ににリモートで大丈夫なんですよ。

直敬さん:原宿のオフィスは、3LDKで自分たちの東京の住まいと、オフィススペースは全員働けるスペースがあるけれど、ほとんど人はいない。でも、皆、オンラインでつながっている。それでOKです。あと、僕の場合、仕事の変化としたら、週末が楽しみになった。

──それはすばらしいですね。

直敬さん:今まで区切りなく働いていましたからね。まず週末ここに来れることについて、マイナス要素が本当になくて。ある程度の年齢になるとセカンドハウスをもって人生がリフレッシュする、っていう話を聞くたび「本当かな?」って思っていたんだけど、「出来るんだ」と実感してますよ。

「気」のいい家で自然を再認識

──藤井さんは、脳科学の研究をなさっていて、たえず頭の中でアイデアを求めて生活されているのかなと勝手に思っているんですけれど、この生活は何か発想に影響を与えたりしますか?

直敬さん:うーん、この暮らしをはじめたからといって、何かが思いつきやすくなるとかはないんですけど、この家はなんだか空気が違うんですよね。空気というか、「気」がいい。気持ちいいんです。だから、同じ場所でも別の家を買って住むのなら、今みたいな二拠点の生活は送れなかったと思うんですよ。やっぱり、この家に来るというのがひとつの歓びなんですよね。

写真からも、確かに「気」のよさが伝わってきますね

──正面には桜の木がありますね。

直敬さん:そうです。春は結構きれいですよ。でも、桜は咲いたあとが大変。桜の軸、花びらがガラスに張り付くとなかなかとれない。改めて「自然って大変なんだ」って再認識しますよね。赤塚不二夫のマンガの『天才バカボン』でレレレのおじさんっていたじゃないですか。「おでかけですか?」って言って毎日掃除している。どうしていつも掃除しているんだろう?って思っていたんだけど、ここで暮らすようになって、「そうか! 落ち葉は際限ないんだ」ということが分かって(笑)。レレレのおじさんのように掃除しないとダメなんだ、と。こんなことをここに来て気づくなんて、自分でもどうなんだと思うけど(笑)、住むことって、自然との闘い。こういうことは東京じゃ感じないことですからね。

恵子さん:虫とかもすごいしね。ゲジゲジとかね。

直敬さん:多分、彼女も東京にいたら「キャー!」って言っていたのが、今は平気でティッシュでつまんで、外に出してるもんね。偉いよ。東京と違って、季節が変わるとやることが変わってきちゃう。冬になったら薪をくべなきゃいけない、夏は虫を退治しなきゃいけないとか。それが物凄く暴力的な自然だと辛いけど、この程度だったら、それも楽しめる範囲なんですよね。

ガラス戸は湿度の影響で動かない時間帯が…。「ここで暮らすなら仕方ない。大らかになりましたね」(恵子さん)

恵子さん

直敬さん

リタイヤを待つ必要はない

──これから、二拠点での生活を考えている方々に何かアドバイスはありますか?

直敬さん:偶然なんですけど、最近、僕のラボの若い研究員が「熱海にマンションを買ったんです」と言うんですよ。驚いて聞いたら、なんと30万円のワンルームの物件で、そんなに広くないけど温泉がひいてある。リゾート会員権を買うより安い値段ですよね。そういうところから探して、気軽に、適当に、まずははじめてみたらいいんじゃないかと思いますよ。あと、大事なのは移動の距離と時間。

──それを考えると1時間半は本当に絶妙ですね。

直敬さん:例えば、お子さんがいて奥様が専業主婦だと、こっちを拠点にして、単身赴任みたいに週末は東京から帰ってくるとか。家族の形態としてアリだと思いますよね。ラボや会社の若い世代の子の話を聞いていると、パートナーがいても自分の時間は確保したいという話をよく聞く。それでいいじゃん、って思うんですよ。週に2~3日、家で一緒にいるぐらいで。嫌ならちょっと離れればいいんだから。それぞれが自活できるカップルなら、家二軒を行き来するのっていいですよ。

──安い物件から気軽に実行してみるのも手ですね。

恵子さん:そうです。私も最初は東京を離れて拠点を持つことは、仕事をリタイヤしてからと思っていたけれど、それを待つ必要はもうないんじゃないのかな。今の時代はリモートワーキングでどこでも仕事が出来るようになったから。特に熱海という場所は、東京でお仕事される人にはとてもいい選択肢だと思うんです。

──東京からの距離もいいし、海も山もあって食べ物もいい。うってつけですよね。

直敬さん:毎週土日は駅が混雑していて、でも、みんな楽しそうにしているんだよね。すごくいいこと。町自体が機嫌がいい。例えば車を一台買うんだったら、この辺りの見晴らしのいいリゾートマンションを一軒買うという選択肢もある。

恵子さん:やっぱりおいしいものは、先に食べよう! という感じですよね。私がそうだったように、山の上の一軒家を買って、そこに畑がついているというような、リゾートの家を求められるのなら、体力も必要。リゾート暮らしは早いほうがいいですよ。

──なるほど、「引退して田舎暮らし」だけじゃないってことですね。

恵子さん:引退して「自分にご褒美」のため初めてリゾート物件を買う、という先まで待たなくても気軽に実践できますよ。

直敬さん:働き盛りのときのほうが移動も苦になりませんよね。そして、やはり、リモートで働けるようになったのは本当に大きい。

恵子さん:社会的なインフラが整ったからね。お客さんとの打ち合せもスカイプで出来る時代になっていますから。

直敬さん:10年前だと無理でしたね。電話とFAXでやり取りして、「ああ、もうそっち行く!」みたいな(笑)。家族もみんな一緒に住まなければいけない、という必要はないと思います。呼べばいるんだったら隣の部屋にいるのと変わらない。

恵子さん:そうですよ。Facebookでもスカイプでもつなげっぱなしにしたらいいわけですから。一緒にいなくてもつながっていられますよ。

直敬さん:PCから普通にメッセージがラインやメッセンジャーで来る。リモートの意味が全然昔と違う時代になったからね。

恵子さん:リモートもリゾートもね。

直敬さん:うまいこと言ってる(笑)。

天気のいい日は窓から海と大島が見える「山から見える海は空との境目がなくて不思議な風景ですよ」(直敬さん)

リビングの中央には暖炉。この冬、初めて薪をくべることに

【オーナーインタビュー】「リゾート暮らしは、引退まで待つ必要なし」藤井さんご夫妻の場合 前編」はこちらから

 

撮影:内田 龍

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