暮らし術 village_members_1200*447

都市と田舎の「ピンポン暮らし」を続けてきた堀江康敬さんのコラム第3回をお届けします。

今回の主人公は、都市から田舎に移住することになったドクターS氏。その周囲にマチ・ムラから人々が集まり、美しい風景とコミュニティを生み出すお話しです。

こんにちは、地域活性化プランナーの堀江です。

今回は、日本のノスタルジックな風景を舞台にした「茅葺きの家づくり」をご紹介します。

今回のプロジェクトは、単に「伝統的な日本の家づくり」を体験し学んだだけではありません。
都市部から地域へ移り住むことを選んだ人物が暮らす場所を、都市部のNPOや市民サークル、日本家屋づくりの匠が協働して作ろうというものです。魅力的な暮らし方を地元に提案し、次々と賛同者の輪を拡げていくことが目標でした。

移住を決意したのは、私が参加しているNPO(非営利の市民活動団体)仲間の知人であるドクターS氏。「周囲の自然に調和した懐かしい農家を復元して、患者さん一人一人を大切にしたサポートをしたい」といいます。

平地から山間地にかけての中山間地域や離島地域では、数十年前から過疎化が進んでいます。高齢者だけが残され、地域の商店(街)も閑古鳥が鳴き、嫁の来てもないという、深刻な状況が続いています。
そして医療環境。やはり地方ほど医師不足が深刻で、医療格差は現実に存在します。

田舎暮らしを楽しむためには、田舎で安心・安全に暮らせる環境が不可欠です。街から「腕に覚えのある」ドクターが、医療過疎に悩んでいる田舎に引越して来る。都市部で培ったスキルを持ち込み、その地域の心も身体も元気にする。これはもう、移住したい人と移住を歓迎したい地域にとって、双方がプラスになるwin-winの関係です。

 

参加者全員が意見を出し合い作業を体験するワークショップ

取り急ぎ、推進チームへの参加を呼びかけるレジメを作成。プロジェクトは何を目指すのか、チームはどんな活動をするのか等々、ザックリとまとめたものを、NPOのメンバー宛にメールで一斉送付しました。

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無類の茅葺きフェチ・古民家フリークが多い、ムラ・マチづくり関連のNPO仲間にとって、これはもう放ってはいられません。「ヒントは現場に埋もれているんだ!会議室じゃない」と、各地から里山に集結。集まってくれたのは、街からは建築家・ITコンサルタント・アート関連のラボ運営者・行政書士など、地元からは造園家・大工の棟梁・有機農業就農者などの皆さんです。

今回のプロジェクトは、専門家から一方的に指示されるのではなく、参加者それぞれが討論に加わったり、体を使って体験したりする、ワークショップスタイル(住民参加型のまちづくりの手法として、よく用いられています)で進行することにしました。下記のような流れです。

  1. 各自の夢とスキルを持ち寄りワークショップに参加
  2. 終わったら美味いものを食べながら次の計画について話し合う
  3. 作業を重ねることで気心の知れた仲間と夢を共有する
  4. 地域の人たちとの交流で計画が理解され嬉しくなる

 

さぁ、汗まみれ泥まみれの茅葺の家づくりのキックオフです

資材の調達から壁土づくり、棟上げ、屋根の茅葺きまで、家づくりを一から十まで体験できる!と里山に集結したプロジェクト・チーム。最年少は20代の女性から、最高齢70代までのやる気満々の10余人。8ヵ月後の完成見学会を目指して、いよいよスタートです!

 

1.竹林間伐と竹炭づくり
建築現場の裏の竹林整備(手入れ)を兼ね、巨大な孟宗竹を切り出します。竹炭用に、カパンカパンと竹を縦四つ割りに。
手作りのドラム缶窯に竹をビッシリと詰め込み、いざ、点火!ゆっくりと白煙が、山里にたなびいて…… 焼き上がった竹炭は、床下の湿気対策として使用。

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2.壁土づくり
茅葺きの家のための、土壁用の土つくりに挑戦。冬空の下で踏んで踏んで踏みまくれ!キンキンに冷たい稲藁入り泥池で素足が凍りつく。熱々の、ご当地猪鍋ランチで、じんわり生き返ります。

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3.茅葺き用竹の油抜き

土を堀り熱源用の火床をつくり、竹を回転させながら油抜きを開始。額に汗と目に涙。熱し過ぎた竹がパンパンと弾け、腰が引ける。数週間の天日干しで腐食を防ぎ、虫が入りにくくなるんですね。

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4.上棟式
遂に棟上げ!上棟式を終えた後の、建設中の屋根から餅まき。当日は雨降りにもかかわらず、ご近所の方々も多数駆けつけてくれました。

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5.屋根の茅葺き
トラックに山と積まれた茅が到着。遂に、全員がやりたがった屋根の茅葺きがスタート!脚立風運搬エレベーターで、屋根に控えているメンバーに次々と運び上げます。
軒部分の傾斜を考慮しながら、茅を束ね、縄で縛り、その縛り具合を見極めながら角度をつける…… 職人技が冴えます。

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6.壁下地工事(えつりかき)
竹を使って土壁の下地を作る「えつりかき」。割り竹を縄で編み込むように、縦・横に固定していきます。スタッフも見よう見まねで、職人さんの作業を手伝います。

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そしてついに、完成!茅葺きの家での新しい暮らしが始まります。

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昔取った杵柄(街で身に付けた技能や腕前)で地元に溶け込む

田舎暮らしで最も苦労するのが「近所付き合い」とは、よく言われることです。それでは、新規移住者として地域に溶け込むにはどうしたらいいか?私の経験から言えば、あぜ道でも・道の駅でも・あまり知らない人でも、ひたすら挨拶をする。共同作業や地域のイベントにはできるだけ参加する。回覧板の配布や子供会の世話など積極的に当番を引受ける……。とまぁ、やや我慢しつつも積極的に顔出しすることが田舎のテッパン・ルールです。

ドクターS氏は、医師としてのスキルを地域に持ち込みました。こうした、都市部で培った自分の技術や能力をアピールすることも、あなたのアドバンテージ。インターネット、茶・花道、焼き立てパンづくり、ウクレレ演奏など、一定レベルの実力があるなら、地域文化のブラッシュアップのために役立てることができます。一人から始める田舎貢献と言えますね。

 

「この地域に惚れ込んでいます」と事あるごとに宣言する

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茅葺の家づくりの柱や梁、土台などを組み合わせた骨組みが立ち上がった頃から、チラホラと見物客が訪れるようになりました。畑仕事の途中の地元の人や、車椅子で散歩中のホームのお年寄りたちが、興味津々と眺めていきます。

作業現場のあちこちから、スタッフが一息入れながら積極的に話しかけます。

「茅葺の家を建てているんですよ、懐かしいでしょ?」
「街のお医者さんが、ここで暮らしながら病気の人を治したいって」
「吹き抜けの屋根裏ロフトに、ピアノを運び込むらしいですよ」
「完成したら、ご一緒に庭でバーベキューとか楽しみたいですね」
「この辺で捕らえたそうですが、イノシシって美味いですねぇ」
「僕らの肉体労働の報酬は、その焼肉とおにぎりだけ!」
「み~んな、この里山に惚れ込んじゃったんです!」

せっかく実現した田舎暮らしです。移住した地域の人口を増やすだけじゃ余りに勿体無い。地元の人の中に思いっ切り飛び込みましょう。そして、この地の好きなところ、この地で何をしてみたいのかを、事あるごとにアナウンスする。それが口コミでリレーされ、地元のコミュニティに拡散していくはずです。

フレッシュな視点を持った新入りとして、地元の埋もれた魅力を発掘する探検家として、田舎と都市との交流を推し進める仲人役として…… 地域はそんな移住者を、きっと待っているはずです。

 
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※本記事は、堀江康敬氏の知識と経験にもとづくもので、わかりやすく丁寧なご説明を心がけておりますが、内容について東急リゾートが保証するものではございません。
※本記事の情報は、公開当時のものです。以降に内容が変更される場合があります。
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