楽しみ方

あの音楽を聴くと、青春時代を思い出す。
新入社員の頃、あの曲があったから頑張れた。
妻と、あるいは夫との初めてのデートで行ったあのコンサートは最高だった……。

人には誰しも、そんな忘れられない“音楽”があるのではないでしょうか。
気分をなごませ、喜びを広げ、悲しみを癒やし、ときに励ましてくれる“音楽”は、カタチこそありませんが聴く人に寄り添い、心を豊かにしてくれる素敵な存在です。

慌ただしい日常を忘れ、自分らしい時間が過ごせる別荘ライフ。都会の喧騒を離れ、ゆったりくつろげる空間は、好きな“音楽”を楽しむのにも最高の環境と言えます。
別荘で趣味を堪能しよう 第2回目は、「オーディオが深める豊かな時間」。あの頃の感動にもう一度出会い、その感動をさらに深める豊かな時間の始め方を、オーディオの達人にうかがいました。

 

STEP1:自分の感性に響く音を、自分の耳で見つける

オーディオで聴く音楽の魅力を「音だけのタイムマシーン」と表現するのは、創業51年の老舗オーディオショップ『DYNAMIC AUDIO 5555(ダイナミック オーディオ フォーファイブ)』の佐藤泰地さん。アーティストが奏でる最高の音を、その場で聴いているような感覚で時を超えていつでも楽しめるのがオーディオの魅力だと言います。

スピーカーの歴史が俯瞰できる店内。いろいろ聴き比べて、別荘の空間にお似合いな自分好みの音を探してみるのも楽しそうです。

そんな佐藤さんにオーディオ選びのポイントをうかがうと、「まずは自分の耳でオーディオの生の音を聴き、実際に感じてみては」とアドバイスが。
オーディオは、レコードやCDを再生する「プレーヤー」、音(電気信号)を増幅させる「アンプ」、空気に振動を与えて音を出す「スピーカー」の3つの機器をベースに構成されています。この3つを一体化し手軽に音楽を楽しめるのが「コンポ」ですが、オーディオはこの3つを自在に組み合わせ、自分にとっての最高の音を見つけられる醍醐味があります。

都会の喧騒を離れた別荘という空間で自分の好きな音楽を楽しむなら、「実際に自分の耳で音を聴いて、自分の感性に響くオーディオと出会えたら、音楽を聴く喜びも広がり、実りある時間を過ごせるのではないでしょうか」と語ります。

中央にあるお馴染みの長方形のモデルは、アメリカで70年の歴史を誇る老舗ブランド「JBL」のスピーカー。古くは劇場で鳴らしていたスピーカーを家庭でも楽しめるようにと開発され、カタチもそのままに現代まで受け継がれています。一方、両サイドにある流線形のモデルは、南アフリカの革新的なブランド「VIVID Audio」のスピーカー。振動をコントロールし、音源以外から無駄な音を出さないようにするため、このカタチにたどり着いたとか。スピーカーだけでも多種多様です。

 

STEP2:デザインも含め自分好みの組み合わせを選ぶ

1950年代にその技術は頂点に達し、ほとんど完成したとされるオーディオは音の出る仕組みにも変化がなく、壊れにくいのが特徴です。
そのため趣味として長く愛用するなら、少し高めでも自分の感性に合った納得のいく機器を選ぶ方がお得です。とはいえ他の趣味と同様に、上を見れば切りがないほど奥が深いのがオーディオの世界。
「いい音を長く楽しむなら、初めての方は50万円を目安にプレーヤー・アンプ・スピーカーの組み合わせを考えてみてはいかがでしょう。その予算ならきちんとしたオーディオが揃えられます。
また、インテリアとして楽しめるのもオーディオの魅力です。いい音を出すことは大前提で、カタチがかっこいい、これを部屋に置きたい、という動機でオーディオを選ぶのもアリだと思います。お気に入りの空間で、好きな音楽を聴きながら過ごす時間を愛でるのもオーディオの楽しみ方ですから」

さまざまな取材で「これから始める方におすすめの3点セット」を聞かれることもあるというオーディオの達人は、「感性は一人ひとり違います。オーディオは3つの機器を自在に組み合わせられるのが魅力。先入観にとらわれず、デザインなども楽しみながら、自分にとっての最高の音を見つける時間も楽しんでください」と言葉を続けます。

ちなみに、オーディオを選ぶ際には住空間とのバランスを考えることも重要です。音楽を聴く部屋のサイズ、天井の高さ、床・壁の素材の違いで音の響き方が変わるからです。オーディオを選ぶ際には、そうした情報も整理して店員さんに相談しましょう。

[上]飾りたくなるイタリアンメイドのカラフルなスピーカーは全6色(Sonus Faber「Chameleon B」)
[左下]女の子とセットになったキュートなスピーカーはイタリア製(Audel「Fred & Ginger」)
[右下] 佐藤さんも納得の音質。スマホとBluetooth接続する最新スピーカー(Celsus 「SP ONE」※近日発売予定)

 

STEP3:音のシャワーを三角形の頂点に集中させる

音楽を聴く理想の環境は、「視覚的に言うと、左右のホースで水を飛ばして、真ん中の一点に一滴もこぼさずに水を当てるイメージ」だと言います。

左右のスピーカーを底辺とした三角形の頂点(聴く人=リスニングポイント)に音を集中させるイメージです。ポイントは、左右のスピーカーを同じ状態にすること。角度・高さはもちろん足元もぐらつかないように固定し、スピーカーを安定させます。

また、スピーカーと壁の位置も重要です。スピーカーが壁に近づきすぎると、スピーカーの背後に回り込んだ低音がこもるなど影響を受けるからです。スピーカーと壁を適度に離すことで部屋全体に音が回り、低音が生きた奥行のある音楽を楽しめます。

「セッティングがうまくいくと、音楽が部屋に響いたとき目の前にボーカルが像を結ぶような感覚になります。音は聴くだけでなく、見るもの、触れるもの。音を収録した時代、その現場に自分も居るような感覚で、音楽を全身で味わえます」

英国王室御用達のオーディオブランド「LINN」のスピーカー「EXAKT AKUDORIK」は、音質補正機能を搭載。部屋のサイズ、スピーカーやリスニングポイントの位置などを入力するだけで、その空間にフィットした最良の音質を再現します。5~10年かかって習得する音づくりのノウハウを5分で実現できる優れモノです。

 

STEP4:嫌いなジャンルも好きに。広がる音楽の喜び

音にとことんまでこだわりだすと、音の余分な反射や響きを抑えるために絨毯やカーペットなどを駆使したり、ケーブルの質をグレードアップしたり、クリーンな電源を使用したりするなど、さまざまなテクニックがあり、その先には深淵なるオーディオの世界が広がっています。

しかし、そうした知識に最初から振り回されることなく、「まずは好きな音楽をたっぷり聴いてほしいですね」とオーディオの達人は語ります。
デジタルメディアが発展した昨今。『DYNAMIC AUDIO 5555』のお客さまにもご自宅のコレクションを全部デジタル化し、それを別荘で聴くという方がいらっしゃるそうです。豊かな自然に包まれた静かな別荘で、好きな音楽にじっくり浸る気分は格別でしょう。

「できれば今まで嫌いだと思っていたジャンルも聴いてみてほしいですね。きちんとしたオーディオはジャンルを選びません。いい音で聴けば、好きな音楽がもっと好きになるし、今まで嫌いだと思っていたジャンルの良さに気づかされることもあります。そうやって自分の世界が広がり深まっていくことこそ、実りある豊かな時間と言えるのではないでしょうか」

トーマス・エジソンが音を記録し再生する機器を発明したのは1877年のことでした。フォノグラフ(蓄音機)と呼ばれるその機器に、最初にエジソンが録音したのは「HELLO」という言葉です。
週末や長いバカンスのひととき。静かな別荘のお気に入りの空間で、いい音で好きな音楽にたっぷり浸りながら、あの頃へ出かけてみませんか。さらに深い感動の世界が、きっと「HELLO」と笑顔で迎えてくれることでしょう。

膨大な知識と深い愛情を持ってオーディオの魅力を語る佐藤さん


 

DYNAMIC AUDIO 5555

住所:東京都千代田区外神田3-1-18
営業時間:10:00~19:00 定休日:なし

1965年創業。日本のオーディオ文化をけん引する老舗オーディオショップ。7階まであるフロアは各階ごとに個性が異なり、さまざまな視聴シーンを用意。体験と感動を通して納得のいくオーディオ選びを楽しめるお店として人気です。ご自宅・別荘へのオーディオの設置にも対応しており、初心者の方でも安心。

撮影:内田 龍

 
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※本記事の情報は、公開当時のものです。以降に内容が変更される場合があります。

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