新コラムのスタートです。
著者は、八ヶ岳で田舎暮らしをする友枝 康二郎さん。『週末移住からはじめよう──田舎に小さな家をもつ2拠点ライフ』の著者であり、デザインのお仕事のかたわら、スタイリッシュな新しい田舎暮らしを提案する、私たち編集部の先達です。
初となる今回は、今の生活に至る58年のできごとを、ぎゅっと凝縮してお届け。その唯一無二の「スタイル」を感じてください。
◆
切っ掛けは二十歳の春だった。
初めて400ccのバイクを買って、会社の先輩達と一緒に八ヶ岳へツーリングに出かけた。
初めて泊まった宿は、原村にある先輩の義兄の小さな別荘。
そこには、薪ストーブが有り、夕方から薪をくべて暖を取った。
薪ストーブの小さな窓から見える炎は心まで暖めてくれた。
カルチャーショックだった!
熊本で生まれ育った僕は、針葉樹の森も薪ストーブも初体験!
「日本でもこんな生活が出来るんだ!」と思った。
その頃から、八ヶ岳での暮らしに憧れるようになった。
時は過ぎ、結婚して長女も生まれ、そして29歳の年に、二十歳から勤めた会社を独立した。
転職先が決まっているわけでも無く、ただ会社を辞めて起業したかったのだ。
景気も良い時代だったので、仕事は途切れなく、夏休みなども無く働いた。
気がつけば、9月になっていた。
遅めの夏休みをとることにして、当てもなく箱根から八ヶ岳へと泊まりたい宿にアポ無しで泊まり巡った。
そして、原村のペンションへ泊まり、近所の別荘地を見学に行き、ひなびた別荘地を見つけた。
管理事務所へ行き、別荘販売の価格表を貰うと、茅野市財産区借地権別荘地で300坪で300万円という相場だった。
「車一台分の費用で300坪の土地が買えるんだ!」
これまた、カルチャーショック!
僕が住んでいた大田区池上界隈で、300坪というと6軒以上の家が建つ大きさだ。
二十歳の春に夢見た八ヶ岳ライフへの第一歩が、実現出来る金額で目の前にある。
とりあえず、買ってみることにした。
起業するにも会社を辞めてみないと始まらないのと一緒で、八ヶ岳ライフを実現するにはまず土地を手に入れる事が最初の一歩だ!
そこに、どんな家を建てるかなどは考えなかった。
最初は、週末にその土地に訪れて、ピクニックでも楽しめれば良いなあ位に思っていた。
5年か10年後くらいに建てられたら良いなあと考えていた。
でも、いざ土地を手に入れてみると、嬉しくて嬉しくて、寝ても覚めても八ヶ岳の土地の事が頭に浮かぶ。
妻とどんな家が良いかなあと、毎晩楽しく話し合った。
そして気がつけば、11月には北欧のログハウスを注文していた。
翌年の9月には完成して、土地を買って一年後には八ヶ岳ライフが実現していた。
今、思えば行き当たりばったりの夢の様な出来事だが、自分の心の声に素直に従ったのが良かったと思う。
夢は叶える将来の目的
田舎暮らしやセカンドライフ、デュアルライフなど、移住の呼び方は色々あると思います。
完全移住するまでのプロセスとしてのSTYLEを、僕は「週末移住」と呼んでいます。
週末移住を実現して行くにはどうすればいいだろう?皆さんが一番興味ある所だと思います。
実は簡単なのです。
情熱に素直になること!
これが一番。
出来ない理由を並べるよりも、八ヶ岳ライフが現実になった時、したいこと、やりたいことの夢を並べるのです。
我が家の場合は、広い森の庭、吹抜、ウッドデッキ、ガレージ、広いリビング、書斎、ガーデニング、気兼ねなく聞ける音楽鑑賞、家庭菜園、ドライブ、ウィンタースポーツ等、挙げたら止めどなく出てきました。
八ヶ岳に300坪の土地を買って家を建てれば、その全てが叶うのです。
土地と新築の家を合わせても、都心でマンションを買うよりも安く実現出来るのです。
もうひとつの、大きな夢
それと、僕にはもう一つ大きな夢がありました。それは、妻と僕の店を持つことでした。
妻はガーデニングが好きで、都心でのコンテナガーデンでは無く、広い庭での本格的なGardenを夢見ていました。
それとクラフト作家でもあるので、自分の世界観を演出して売る店を持つ事も夢でした。
でも、都心で店を持つには多額の費用がかかります。我が家にはそんなゆとりはありませんでした。
八ヶ岳に限らず、田舎は都心より地価が安い。僕らはそこに目を付けました。29歳でログハウスを建てて、41歳までは別荘として通っていました。
通う度に、八ヶ岳での暮らしが心地良くなり住みたくなりました。
その間に子供も2人増えて3人になり、田舎でノビノビと子育てをしたい!お店を持ちたい!という新たな夢が芽生え、41歳の夏に家族は移住する事になりました。
僕は、東京での仕事が沢山ありましたから、デュアルライフというスタイルになりました。
叶えた夢は更に広がっていく
それから、今年で29年目になります。
ある意味、この家は八ヶ岳ライフでの別荘とも言えるものです。
当初別荘として建てたログハウスが、今では自宅であるからです。
八ヶ岳という、日本有数の高原別荘地に自宅と別荘があるという生活。
八ヶ岳別荘ライフから、二拠点居住、そして完全移住。
僕の人生の二番目の折り返しとも言える今年から、また新しい八ヶ岳バーチカルライフが始まります。
これから、八ヶ岳での楽しい暮らしや出会い、二拠点移住から完全移住して変わったこと、田舎に暮らす、メリットとデメリットなど、具体的に役に立つような内容を連載でお届けしていきます。
> 過去の記事はこちらから