日本で唯一、執事によるフルオーダーメイド型バトラーサービスを提供する日本バトラー&コンシェルジュ株式会社。同社の社長で、自らも執事として現場に立つ新井直之さんは、国内外の豊かな暮らしを知る方々が、どのように別荘で過ごされているかをよくご存知です。
そんな新井さんに執事という立場から見たリゾートについて語っていただきました。「執事が見た、本当に豊かな人の別荘での過ごしかた」、「リゾートで快適に過ごしていただくために、執事が心がけていること」という前後編に分け、お届けます。
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みなさま、初めまして。執事の新井直之と申します。
私は国内外のお客様にお仕えし、日常生活から冠婚葬祭、旅行、別荘でのリゾートライフ、留学の同行、プライベートな催しまで、あらゆる事柄に対してご要望にお応えすることを仕事としています。
私がお仕えする方々の共通項の1つが、別荘をお持ちであることです。ただし、映画やドラマの世界に出てくるような豪奢な作りの建物ではありません。その代わり、財を成した方ほど各地に別荘をお持ちになり、四季折々の気候の変化に合わせ、その時々の気分に合わせて利用される形を取っていらっしゃいます。
では、そうした別荘でみなさまがどのようにお過ごしになられているのか。執事の目から見た「本当に豊かな人の別荘での過ごしかた」についてお話していきたいと思います。
別荘で過ごす時間は、自分をリセットする極上の一時
私がお仕えする方々が別荘で過ごされる大きな理由の1つは、環境を変え、自分をリセットされる時間を持つためです。
特に一代で財を成されたビジネスオーナーの方は、日頃、かなりお忙しい毎日を過ごされています。そこで、ホテルとは違い予約の必要もなく、自由に好きなときに利用できる別荘を持ち、ひとりの時間を確保されるのです。
身近な例になりますが、私なども見慣れた通勤経路を少し変え、ひと駅分ゆったり歩いてみると気分が変わるように、身を置く環境の変化は心身をリフレッシュさせてくれます。
別荘で過ごされる方々も、そういった効能をよくご存知で、「別荘に行って仕事をしてくる」と言われるお客様も少なくありません。
私が「別に別荘でまでお仕事をなさらなくてもよろしいのではないですか?」と聞くと、「いや違うんだ。向こうでやる。ひとりになって気分を変えると、新しい発想が生まれる。そういう時間が大切なんだ」と。
実際、ビジネスオーナーの方は東京で休日を過ごされていても、何らかの連絡があり、仕事に応じなければなりません。しかし、「この日は軽井沢にいる」「この日は箱根でアイデア出しをしている」と言うと、さすがに周囲のみなさんも諦めてくださるのだとか。
また、なかには電話をはじめとする一切の通信手段がない別荘をお持ちのお客様もいらっしゃいます。滞在時は携帯電話の電源も切ってしまわれるので、私も「緊急時にお困りになるのでは?」とお諌めしたことがあります。
しかし、「本当に緊急のときは誰かが、来るよ。ここにいるのは知っているわけだから」と。物理的に「ちょっと行っていいですか」という来訪者もなくなり、外部との接触をブロックした上で、ひとりになれる場所。それが別荘の大きな役割であり、そこで過ごす時間は「まさしく自分の極上時間だ」と仰る方もいらっしゃいます。
より時間を共有し、関係を深める社交の場としての別荘
ひとりで過ごす時間を大切にされる一方、社交の場として別荘を活用されるケースも多々あります。
ビジネスオーナーの方は人とのつながりの中でビジネスを広げていかれているので、絆に重きを置かれていることがほとんど。そこで、ご自宅にはお招きしにくい大切な方を別荘での小規模なパーティでおもてなしされるといった場面には、何度となくご一緒しています。
例えば、「軽井沢の別荘でパーティを行います。泊まりでいかがでしょうか?」とお誘いすれば、招待される側は宿泊費や食費を心配せず、参加できます。そして、都心を離れ、長い時間を一緒に過ごす中で、お互いの関係性が一歩深まっていく。そんな効用があるのもまた別荘を持つ理由の1つでしょう。
また、ビジネスからリタイアされた方、二代目、三代目といったお客様の場合、ご自分の別荘の周辺での交友関係がすでに確立されています。那須ならば那須、軽井沢ならば軽井沢、別荘のある地域につながりのあるご友人がいて、季節に応じて集まっては旧交を温めるといったシーンも。こちらの場合、ビジネスとは関係なく趣味や地縁で出会われた関係が多く、よりリラックスしたお付き合いをされているように思います。
ゆったりした別荘ライフの楽しみは、やはり食事
では、実際にみなさまが別荘でどのような日常を過ごされているか言いますと、基本的にゆっくりとした時間を楽しまれています。どこどこへ観光に、どこどこへ買い物に、といったスケジュールは組まず、“静養”という言葉がぴったりくる過ごされた方です。
ゴルフやテニス、マリンスポーツなどが趣味の方は少々アクティブに動かれますが、テラスでの読書、ご近所の自然の中を散歩といった、なにもしない贅沢を楽しまれています。
このようにゆったりした時間の中で、みなさまが楽しみにされているのが食事です。私のお客様の場合、お付のシェフをリゾートに同行させることが多く、朝、夜は地元の食材を使った手作りの料理を別荘で召し上がり、ランチは近辺のお店に出て、地域の方との交流を楽しまれているようです。
海外のセレブリティが日本で選ぶ別荘地は?
海外のセレブリティをアテンドする際、最も人気のある地域はやはり京都です。しかし、京都にはなかなか別荘地がございません。また、別荘として売りに出る物件があったとしても、独特の文化があり、外国籍の方がパッと購入しにくい地域でもあります。
そういった意味では憧れの場所ではあるのですが、実際に長期滞在される別荘地として人気があるのは、伊豆です。熱海、伊東、川奈。意外に思われるかもしれませんが、山と海があり、東京からのアクセスがいいことも人気の理由ですが、なにより「富士山が見えること」が理由に上げられます。
逆に欧米の方からは、軽井沢や那須といった西洋の香りのする別荘地の名はあまり出てきません。風光明媚で日本らしい自然を楽しめる地域が人気です。
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普段なかなか知ることのできない方々の別荘での過ごし方を教えていただきました。どのエピソードにも共通していたのは、ゆったり、おいしく、親しい人と時間を楽しむこと。オンとオフを切り替え、自分をリセットする意識を持つことは、お金に換算できない大きな意味を持ちます。リゾートを楽しむ意義は、そんなところにあるのかもしれません。
次回、後編では「リゾートで快適に過ごしていただくために、執事が心がけていること」として、現役の執事だからこそ見えてくる別荘ライフのあり方をより深く語っていただきます。
「リゾートで快適に過ごしていただくために、執事が心がけていること〜執事・新井直之さんが語るリゾートライフ 後編」はこちらから
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監修
新井直之
日本バトラー&コンシェルジュ株式会社代表取締役社長。大学卒業後、米国企業日本法人勤務を経て、同社を設立し、大富豪、超富裕層、エグゼクティブの方向けに、バトラーサービスを提供。自ら執事としてお客様を担当する傍ら、企業向けに富裕層ビジネス、顧客満足度向上に関するコンサルティング、アドバイザリー業務、講演、研修を行なっている。また、映画『謎解きはディナーのあとで』『黒執事』において執事監修を行ない、北川景子、櫻井翔、水嶋ヒロへ所作指導も。最新著作は『執事に学ぶ 極上の人脈 世界の大富豪が、あなたの味方になる方法』きずな出版刊。