お役立ち情報

日本で唯一、執事によるフルオーダーメイド型バトラーサービスを提供する日本バトラー&コンシェルジュ株式会社。同社の社長で、自らも執事として現場に立つ新井直之さんは、国内外の豊かな暮らしを知る方々が、どのように別荘で過ごされているかをよくご存知です。
そんな新井さんに執事という立場から見たリゾートについて語っていただきました。前回の「執事が見た、本当に豊かな人の別荘での過ごしかた」に続き、今回は後編となる「リゾートで快適に過ごしていただくために、執事が心がけていること」です。

執事の新井直之と申します。

私は国内外のお客様にお仕えし、日常生活から冠婚葬祭、旅行、別荘でのリゾートライフ、留学の同行、プライベートな催しまで、あらゆる事柄に対してご要望にお応えすることを仕事としています。

私がお仕えする方々の共通項の1つが、別荘をお持ちであることです。ただし、映画やドラマの世界に出てくるような豪奢な作りの建物ではありません。その代わり、財を成した方ほど各地に別荘をお持ちになり、四季折々の気候の変化に合わせ、その時々の気分に合わせて利用される形を取っていらっしゃいます。

では、そうした別荘でみなさまがどのようにお過ごしになられているのか。前回は、執事の目から見た「本当に豊かな人の別荘での過ごしかた」についてお話しさせていただきました。

今回は、執事がどのように考え、リゾートで過ごされるお客様を支えているのか。実際にあったエピソードも踏まえながら、ご紹介させていただきます。

 

執事を呼ぶ煩わしさを感じさせないおもてなし

別荘で過ごされるとき、お客様はひとりになること、本来の自分自身に戻ることを大切にされます。そこで、求められるのは過剰なおもてなしではなく、気配を消しながら、お声がかかるまでお側に近づかないサービスのやり方です。

長いお付き合いのお客様であれば、ソファで本を読まれているとき、どんなタイミングでお茶を飲みたいと仰るか、こちらも経験的に理解しています。

そこで、お声がかかる前にお茶をそっと出し、そのまま部屋から出て行く。そんな「なにもしないおもてなし」こそが、大切と考えています。

また、風邪などで体調を崩されては、せっかくのお休みが台無しになってしまいますから、都心と気温差のあるリゾート地では空調の管理にはいつも以上に気を配ります。毎時間、毎時間、室温計を見て、一定の温度、湿度に保たれるように空調を調整。窓辺で過ごされるようであれば、すぐに使えるようひざ掛けやタオル、軽く羽織れる上着などを事前に準備しておきます。

これもまた、お客様に自ら声を上げ、わたしたち執事を呼ぶ煩わしさを感じさせないためのおもてなしです。

 

嗜好品から万が一に備えた医師の同行まで、事前の準備とおもてなし

現地では「なにもしないおもてなし」を心がける一方で、リゾートで過ごされるお客様のために執事が細心の注意を払うのは事前の準備です。

前編で紹介したとおり、お食事についてはご当地の旬のものを好まれる方がほとんどなので、食材は現地調達となります。しかし、普段飲まれているコーヒーや紅茶、日本茶、ワインといった嗜好品は、お客様それぞれに“これ”というこだわりがございます。

当然、なかにはリゾート地で手に入れるのが難しい銘柄も多々あります。こうしたものはすべてリスト化し、事前に購入して、現地に持ち込みます。さらに海外へ行かれる場合、食品の持ち出し、持ち込みともに厳密なルールがあり、事前の手続き、持ち込めない場合の代替品探しなど、行うべき項目は一気に増えていきます。

すべてはリゾートで豊かな時間を過ごしていただくために必要なこと。異なった環境を楽しみながら、いつもどおりの嗜好品でリラックスしていただく。違和感を覚えないこともまた、なにもしないおもてなしなのです。

とはいえ、どれだけ綿密な準備を重ねても別荘地での気候や生活リズムの変化でお客様が体調を崩されてしまうことがあります。そんな万が一のケースに備え、金銭的に大きな余裕のあるお客様の場合、24時間体制でお医者様に待機していただくサービスを利用しています。

これは、執事がいくつかの医療機関や医師と連携しながら、健康に不安を持つお客様のために、別荘への往復の移動・滞在期間に医師の同行をコーディネートをするものです。別荘からほど近い場所にホテルを取り、「具合が悪くなった際にはお願いします」と、温泉などを楽しんでいただきながら待機していただきます。

 

リフレッシュを求めるお客様の一途な想いを全力でお支えします

私のお客様が、別荘で過ごされる際、重要視されているのは気分をリフレッシュさせることです。日頃、忙しいビジネスオーナーの場合、読書、お昼寝、ティータイムと何もしない贅沢を味わい、時間を無駄にすることで日常の中の非日常を楽しまれています。

一方、明確な趣味をお持ちの方の場合、リゾートで思う存分、遊びに熱中することで英気を養われます。あるお客様は、趣味として釣りを始められたばかりで、釣り船をチャーターされました。

キンメダイを釣り上げると意気込み、出港されたものの、潮の回りがよくなかったのでしょう。プロの船長さんが魚群探知機を使ってポイントを割り出しても、どうしても釣れません。

引っ込みのつかないお客様は「釣れるまで帰らない」と言い、お食事もせずに没頭されています。執事としても、魚を持ってお客様の釣り竿の下に潜り、針に引っ掛け、「釣れました」と演出することはできません。

結局、日没まで挑んだものの、釣果はゼロ。船長さんが「すみません。これ以上船を出していると危ないので帰りましょう」と言い、ようやく船は港に戻りました。

しかし、納得できないお客様は「釣るまで帰らない!」と岸壁での夜釣りを始めます。すると、小さな豆鯵でしたが、次々と釣れて、ご機嫌に。やはり一代で財を成される方は、「不可能の向こうにこそ、可能がある」という考え方をされ、ストイックに妥協せず行動されるものだなと。改めて、そう感じさせていただきました。

 

執事が改めて感じている、別荘ライフの価値とは?

Close-up of a maid's hands making bed in a hotel room.

ある程度、旅慣れた方が最終的に行きつくのが別荘です。

私のお客様も、最初は各国の一流ホテルを泊まり歩き、その過程でホテルではカバーしきれない部分に気づかれます。

例えば、安眠のためにこだわったベッドなど自分の気に入った家具、家電製品を置いておくことができない。ペットを同伴で滞在することができない。自分に対するスペシャルな対応に限界がある。そういったホテルで補うことのできない点が、別荘ならば実現できるわけです。

富裕層のお客様は金銭的に豊かなだけでなく、多くの経験によって培われた見識をお持ちです。そんなみなさまが何を基準にして物事を選び、購入されるかと言えば、それはスペシャリティです。自分にとって特別な体験、特別な時間、自分だけのもの。別荘は、自分なりにカスタマイズすることができ、快適さを追求することができます。

しかし、利用する期間は年間わずかな日数です。経済的に考えれば、一流ホテルに泊まったほうが安いかもしれません。それでもあえて別荘を選ばれるのは、そこにプレミアムな価値があるからです。

執事は、その価値をさらに高めるお手伝いをする。そんな気持ちでお仕えしています。

 

リゾート地で過ごすことは、日常から離れ、自分を取り戻すための大切な非日常。執事として、そんな時間を支える新井さんのお話はいかがでしたでしょうか。

ストイックなまでに快適さを追求する方々のエピソードは強烈でした。しかし、そこには多くの人がリゾートに求める、「自分だけの空間、自分だけの時間、自分だけの特別感」に対するヒントが隠されていたのではないでしょうか。

監修

新井直之

日本バトラー&コンシェルジュ株式会社代表取締役社長。大学卒業後、米国企業日本法人勤務を経て、同社を設立し、大富豪、超富裕層、エグゼクティブの方向けに、バトラーサービスを提供。自ら執事としてお客様を担当する傍ら、企業向けに富裕層ビジネス、顧客満足度向上に関するコンサルティング、アドバイザリー業務、講演、研修を行なっている。また、映画『謎解きはディナーのあとで』『黒執事』において執事監修を行ない、北川景子、櫻井翔、水嶋ヒロへ所作指導も。最新著作は『執事に学ぶ 極上の人脈 世界の大富豪が、あなたの味方になる方法』きずな出版刊。

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