暮らし術 15873465_1400096360014316_1030254256833755981_n

先日、南房総にも雪が降り積もりました。
なぜ今積もるんだよお、というタイミングでね。

ここはどこ?新潟?

ここはどこ?新潟?

 

実は、1月7・8日、14・15日の2週末に、当方の運営するNPO法人南房総リパブリックで「南房総DIYエコリノベワークショップ」を開催していました。その真っ只中に、滅多に積もらない雪が、積もるんだよなあ。
運営者としてはひやひやですよ!

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みんなの笑顔に救われつつ。

このエコリノベワークショップは昨年に次いで2度目の開催。前回についてはこちらの記事を読まれた方もいるかと思います。嬉しいことに、とても大きな反響をいただきました。

今回も、趣旨は同じ。そして内容はバージョンアップ。
建築家・竹内昌義さん(みかんぐみ)、設計施工家・河野直さん(つみき設計施工社)を講師に迎えて、古い民家を自分たちの手で断熱改修+αというプログラムです。

全国から延べ100人以上の参加者が南房総の里山に集まって、古民家の断熱改修作業を行いました。あまりに年明けすぎる開催日ゆえ応募が集まらないかと思いきや、募集開始から2日で全日満員御礼となった次第。それだけ「南房総」「DIY」「エコリノベ」というワードが響いたのだなと、感じ入りました。

朝はラジオ体操から始まるってところは前回と同じなんですけどね!

朝はラジオ体操から始まるってところは前回と同じなんですけどね!(写真・豊口信行)

 

日本の民家の8割は、ほとんど断熱されていないという現状をご存知ですか?
とりわけ古民家は隙間風ひゅーひゅーで完全なる無断熱、つまりもっとも暖まらない家の典型なわけです。
プロに発注すると1棟あたりの断熱改修は何百万円という単位になりますが、じぶんたちの手でできることがわりとたくさんあり、しかもわりと効果があり、それで家の快適性はぐーんと上がり、おまけに余分なエネルギーを使わなくてよくなる。だったら、みんなで学んでやってみようよ!というノウハウ共有の場をつくっている次第です。

大工の忍田棟梁に、道具の正しい使い方から教わります。

大工の忍田棟梁に、道具の正しい使い方から教わります。

 

つくったものをみんなで

みんなでつくって、みんなで体感して、「ほんとにこりゃいい」という実感も共有。

 

今回の会場は、なんと、このコラムでもおなじみの馬場さんち。そう、我が家です。
NPOの拠点としても使われるこの家の寒さには定評があり、同じ南房総住民の参加者から「いやー馬場さん、悪いけどここ、うちよりだいぶ寒いわ」と言われてショックが隠せないわたしでした。笑。
沿岸や平野部に比べ、中山間部は俄然寒いんです。

雪の次の日。足早に現場に向かいながらいろいろ連絡とって、この時は呼吸が浅かったなあ。

みんなで泊まっていた宿から現場に向かいながら雪対応の連絡とったりして、この時は呼吸が浅かったなあ。(写真:豊口信行)

 

さて、このDIYエコリノベワークショップについては、お伝えしたいことが山とあるので、2回にわけてお届けする予定です。

1回目の今回は、昨年の改修にはなかった新たな改修コンテンツについて。
(えー、しつこいようですが、昨年のコラムでエコリノベのベーシックバージョンについて詳しく触れていますから、そちらを読んだ上でこれを読んでいただけるとすごくよく分かると思います。)

①  畳の部屋を、板の間に。

昨年は畳の部屋の(画期的な)床下断熱を施したところ、「足元が冷たくないってすごいことじゃないか」と実感できたため、今年も畳部分は同じ方法を用いました。
でも1室だけ、畳部屋をフローリングに変えつつ断熱することに。レッツトライ!

お世話になった畳をくいっとはがすと、下地の荒板が現れます。
まず驚くのは、古民家の荒板って、けっこうワイルドな張り方だということ。ばらばらの大きさの板をパッチワーク状につないでいる状態です。むかーしむかしの職人さんたちの「見えないしこれでいいだろ」「じゅーぶんじゃね?」という会話が聞こえてきそうな、ね。笑。持ち合わせの材料で、直し直し凌いでいたのでしょう。しかも、釘が抜けてしまってフカフカになっていたり、穴が開いていたりしているんだから、隙間風ウェルカム。この上に、直接畳を置くんですからね。足が冷えるわけだ。
これを、直すところから。

つぎはぎの、穴だらけ!(N)

つぎはぎの、穴だらけ!(写真:中野香織)

 

床板を乗せるための根太(ねだ)を張るための仕込み作業は、なかなかの苦戦を強いられます。
ワークショップ全体の指導にあたっている大工の忍田棟梁は、現場を睨んで厳しい顔。
「床がね、こう、沈んで傾いているんですよ」。
よく見ると確かにぜんぜん水平ではない……谷のように沈んでいます。

これは

これはレーザー墨出し器。かわいい。月面探査機みたい。(写真:中野香織)

 

「でもね、水平に合わせればいいかっていうと、そうすると落差がありすぎて現状に合わなくなってしまう。こういう時は、塩梅を見ながらなだらかにつじつまを合わせていくんです」

教科書どおりの仕事ではなく臨機応変にその場を収めていけるのは、数多の経験を積んでこそ。みんなぽーと見惚れます。自分が手を動かして作業していると、大工さんのことばや所作のひとつひとつが尊敬の対象となり、ことさら沁みるのです。

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下地板はきちんと直され、美しく根太が張られました。これだけでも感無量。(写真:中野香織)

 

この根太と根太の間を、断熱材のスタイロフォームで埋めていきます。
隙間なく埋めることで、足元の暖かさが確保されるわけです。

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もう隙間風は入れません!

そしてこの上に、気密シート、フローリングを張っていきます。

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場の空気と、できあがりのクオリティは、忍田棟梁(手前から2番目)の真剣な姿勢が伝わることでぴしっときまっていきます。

 

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緑のぺらぺらは、均質な目地間隔をとるために挟む「スペーサー」というもの。(写真:豊口信行)

 

今回使用するのは、杉の無垢材。合板のフローリングとは趣が異なります。
無垢の板は風情がいいだけかと思いきや、柔らかい材質で歩き心地がよく、合板フローリングに比べて熱が伝わりにくい(熱伝導率が低い)のが特徴です。ほら、中に熱いスープが入っていても、木製の食器だとアッチッチにならずに持てるでしょう。それと同じ。これが、床の体感を良くしているんですね。

4日間で、畳からフローリングに生まれ変わりました。
本当に、きれい。

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こうして張られてしまうと、ずっとこの状態だったのように馴染んで見えます。足の裏の感触を何度も確認したくなる気持ちよさ。

実はこの改修、ちょっと勇気のいる判断でした。
というのも、この部屋は別名「冬の家」と呼ばれ、畳にコタツを置いて家族全員ほぼそこだけにいた、という家族の濃密な憩いの場所なのです。ストーブや暖房を入れても家全体が温まらないから、コタツという熱源に体をつっこむのが唯一暖をとる方法。コタツは熱の逃げないミニマムな断熱シェルターみたいなものですからね。笑。

その部屋をなぜフローリングに変えようと思ったかというと、家族が突然、ハウスダストアレルギーになっちゃったんです。コタツに入ると咳くしゃみと膨大な鼻水、目の痒さがひどくなる始末。寒さと目の痒さを天秤にかけてどっちかをガマンするという苦行が続いていて、フローリングへの変更をちらと考えるも「この室温でコタツなし?……ないわ」と思っていました。

でも、断熱改修して部屋全体がちゃんと温まるようになれば、フローリングの部屋でもやっていけるかもしれない。アレルゲンとお友達な暮らしから脱却できるかもしれない。と、判断したわけ。
つまり、断熱改修の効果を全面的に信頼しているってこと!

実はまだ改修後にここで過ごせておらず、居住性を確認するのはこれからです。「アレルギーが起きないし、寒くもないし、体が楽だね」という報告がアップされるのを楽しみに待っていてください。(ちょっとドキドキ笑)

② 屋根裏断熱に、羊毛断熱材を使用。


前回は、屋根裏断熱に一般的なグラスウールという断熱材を使いました。
これがね、本当にちっくちくするシロモノで。グラスウールに直接触れた肌のみならず、施工に関わると顔から背中からちっくちくになるんです。人体に害はないといわれていますが、とてもじゃないけど感じのよい素材ではなく、企画メンバーも「今回もまたあのちっくちくかー」と苦笑いを交わすほどでした。

チクチクとの闘い。

見ているだけでううううう。チクチクとの闘いでした。

 

ところが、このワークショップ開催直前、Facebookでこんな投稿を目にしました。
「モンゴルの起業家が、羊毛断熱材の製品化を果たした。日本で使いたいという人はどれくらいいるだろう?」

投稿したのは、『ナリワイをつくる』(東京書籍)という著書で知られる友人の伊藤洋志さん。モンゴルで武者修行ツアーなどを企画するなど、現地の遊牧民と親交のあるお人です。

投稿を目にした瞬間、これはきっといい、と直感し、「できれば1月のワークショップで使ってみたい」というメッセージを彼に送ったところ、「試しに使ってみてもらいたいのでどうにかする」と、とても前向きな返信をもらいました。まだ日本への販路が確立していないにも関わらず、おそらく多くの無理を押しての判断だっただろうと、想像するに余りあり。

慣れない輸入手続きで関わる誰もがドキドキする事態が幾度かありましたが、ワークショップ当日の朝、モンゴルの空気を孕んだ羊毛断熱材が10ロールも届きました。
モンゴル産羊毛断熱材輸入、日本での第1号!

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モンゴルと南房総が繋がった瞬間です。

 

これが、衝撃的に気持ちいいの!
もうほんと、断熱材にするには惜しいほどの手触りなのです。ふあふあできめが細かく、上質なシフォンケーキみたい。みんな「うわあ」と飛びついて、巻きついて。

おふとんじゃないから笑

おふとんじゃないから笑

 

これこれ笑

戯れすぎだから笑

 

ちなみに、すでに日本に導入されているオーストラリア産のものも、「比べてみて」と伊藤さんが送ってくださいました。手触りは圧倒的にモンゴル産に軍配。まあ断熱材なので手触りの重要性はさほどない気もしますけどね、施工者やオーナーが愛せるのって、いいよね。

これを、天井に敷きこみました。

天井の補強や、隙間風の穴をふさぐ作業もした上で、断熱材投入!

天井の補強や、隙間風の穴をふさぐ作業もした上で、断熱材投入!

 

グラスウールは巻物の幅が通常910mmですが、羊毛断熱材の場合はその約半分の450mm。というのも、羊毛をほぐしてふわふわにしつつバラバラにならないように一体化させるという製造過程があり、つなぎ力の問題で910mmの幅でつくるとコストアップしてしまうとのこと。そんな話も伺うと、モンゴルで苦労してこれが開発されていったであろう様子も想像してしまいます。
結果的に、450mmという幅はむしろ扱いやすくてよかった、という声が。

それにしても、なぜ伊藤さんがモンゴルの羊毛断熱材輸入を手伝っているか、気になりますよね。
伊藤さんは、そもそも遊牧民が生活を続けるにはどうしたらよいか、というプロジェクトに学生時代に参加してモンゴルに行ったのをきっかけに、今では「モンゴル武者修行ツアー」を自ら企画運営するほどモンゴルとの関わりを深めています。ガス、電気、水道などのない独立した遊牧民と暮らしをともにしているうちに、彼らの財産である羊からとれる羊毛が原材料のまま中国などに安く売られている現状が発見されたとのこと。この現状を変えるために、「極寒のモンゴルであれば建築資材として断熱材をつくるべきだろう(モンゴルでも輸入のグラスウールなどが使われている)」と、遊牧民出身の起業家でツアーのパートナーでもあったバギーさん一家が5年ぐらいかかって断熱材製造工場が立ち上げ、商品を開発し、ようよう輸入できるようになったのが今、現在です。

つまり、まさに開発したて、できたてほやほやのモンゴル産羊毛断熱材ということ。

天井が抜けないならぜひここで寝たい!

普段目に見えないところに使われる素材が、こんなに愛おしく思えるというのは、なかなか幸せな話です。
屋根裏の断熱はとても大事で、暖気が上に逃げていかないように手厚くしてあげるととても大きな効果があります。グラスウールでもいいですが、普段目に見えないところにこうしたナチュラルな素材を敷き詰めてあげると、暖かさだけでなく、家自体へのさらなる愛着も手に入れられる気がします。

……ということで今回は、断熱関係のバージョンアップのお話でした。
次回は、「古い家にみんなで手を入れたら、手に入っちゃった意外なものたち」について。

お楽しみに!

※本記事は、馬場未織氏の知識と経験にもとづくもので、わかりやすく丁寧なご説明を心がけておりますが、内容について東急リゾートが保証するものではございません。
※本記事の情報は、公開当時のものです。以降に内容が変更される場合があります。
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