暮らし術

いやあ暑いですね。みなさん、ご無事ですか?
わたしはかろうじて生きていますがギリギリです。今年の夏は仕事が山積みなんですけど、そもそもこんなに暑い時に仕事するってどうなんだろうねえ!冷房効かせて働いて、室外機の排出した熱で外はもっと暑くなって。愚痴も増えて。ああこりゃこりゃ。

夏は、本気で南房総が恋しいです。週末が恋しいです。
なぜなら東京よりずっとずっと涼しいから。朝晩は空気がひんやりし、日中も木陰にいればしのげる程度です。夕方になって風がふくと、1枚羽織るものが必要なくらい。

それでも、今年はヒグラシの声が聞こえません。南房総なりに猛暑なのでしょうか。
地球、大丈夫かな。

土があるところは涼しいね。ピノ。

さて、前回ちょっと触れたとおり、我が家の家族として迎え入れた犬のピノとの暮らしが続いています。
かれこれ3ヶ月経ち、飼い始めた頃4キロだった彼女は現在15キロ以上。よーく目を凝らしていたら1分毎に大きくなるのが見えるのではないかという成長っぷりです。初めての犬育ては思ったよりも大変で、わたしの体重は減りましたよ。犬を飼うって体力がいるね!

で、今回は「犬と二拠点生活」の関係についてお伝えしようかと。
すでに犬に詳しい方、犬に興味のない方、すみません!飼い主という当事者になったばかりの人間が突然暑苦しく語るのを冷ややかに見ていただけたら幸いです。

そんなわけで、

犬との二拠点生活が楽しすぎる!!!

のであります。

二拠点生活やっている+犬を飼っている、という人がまわりに多い理由がようやく分かったよ。むしろ犬がいてこその二拠点生活なんじゃないかというほど、二拠点と犬は親和性が高い。
犬も嬉しい、人間も嬉しい、結果両者とも嬉しい!というね。

① 里山で遊ばせるのが楽しい。
犬の性格によりますが、里山には興味を持つ対象がたくさんあります。草むらではバッタが跳ね、木陰と日なたの境界では蝶のつがいが舞い、縁の下でニホントカゲがチョロチョロッと出入りして、風が吹けば裏山や竹林でいろんな音がする。それらの気配を全神経を駆使して受け止めるピノはとても生き生きした顔を見せます。東京の家の中では「ただヒマ」になる時間がありますが、ここでは座っているだけでもヒマではない。
犬にとって、遊ぶネタ、興味のあるネタがごろごろあるのが里山なんだと思います。

そして何よりいいのは、自宅の敷地内ではリードを外せること。
畑の向こうから「ピノ、おいで!」と言うとフリーピノが全速力でやってきます。リードで引っ張られることなく、嬉しい気持ちをそのままに、自分の持てる力を出し切って走る姿!!!

もんどりうって転がっちゃうこともあるほど。

公共の場所ではリードが外せないけれど、本来は自由に走り回りたいんだと思います。
それができる環境があるのが飼い主としてもまことに嬉しい。思うように動き回り、気が済むまでクン活に勤しみます。

ちなみに、我が家は猫も二拠点生活をしているので、犬と猫との違いを見るのも楽しいです。
猫たちは木登りをしたり、獲物を捕らえたりとやれることのレパートリーを広げていますが、住宅(建物)のある場所から離れることをあまり好みません。行動半径を広げるというより家の周囲を深く知って楽しむ知性派。犬は平面方向の広がりを単純に喜んで、身体を存分に使って満足する体育会系ですかね。

いやあ、敷地が広くてよかったよ。
これまでこのコラムでも何度か「うちの敷地が広すぎて困っている、8700坪もいらない」と愚痴をこぼしてきましたが、犬が走り回っているのを見ていて初めて「広くてよかった……泣」となっています。

② 海で遊ばせるのが楽しい。
ラブラドールレトリバーは水が好きな子が多いらしい。手に水かきがあるくらいですから。

ピノは家のタライの水から始まり、浅い川に足を浸す気持ちよさを覚え、「水って楽しい!」という体験をこれまで重ねてきました。

きっと海も好きだろう、と思い、農作業の終わる夕方になると必ず海に連れていきます。
海には遊び達者の先輩犬がたくさんいますからね。

ピノ、海だよ。先輩の楽(らく)からよく教わって。

ところがピノにとって、海はまだちょっと怖いところです。
水が定期的に押し寄せてきて、たまに自分も飲み込まれてびっくり。「ここなら大丈夫」と思っているところでも突然水が来ることがあり、いつもドキドキしてしまう。

それに比べて先輩のラブラドールは堂々としたものです。
木の枝を「とってこい!」と投げられると美しい犬かきでどんどん泳いで取りに行き、しっかりと引き返してきます。とても楽しそうで、自信に溢れ、海を味方につけている姿!

楽は海遊びの達人。とってこいだけでなく、SUPにも乗れるそう。

ピノは今、少しずつ海に慣れている最中です。
一緒に足まで浸かり、「おいで!」と言われるところまでがんばって行ってみて、急いで浜に戻ったら「えらかったねー」と迎えてもらって一安心。何があっても大丈夫という安心を土台にして、チャレンジできるようになるんだよね。

今は浅瀬でも必死。そのうち海は気持ちがいいと思ってくれたら。

行動半径が広がると犬人生が豊かになるんじゃないか、というのは人間の勝手な思い込みかもしれません。でもできるだけ「好きな場所」が増えてくれるといいなと、心から願います。里山からすぐのところに海もある南房総は、そういう意味ではとても贅沢な環境です。

③ 人間も犬もラクチン。

二拠点生活をしていると、犬の飼い方も場所によって違うのかもしれないな、と気付きます。
たとえば農村部は、都市部より犬に対して大らかな気がするんですよね。犬が濡れた身体をプルプルすることでまわりにしぶきが飛んで人にかかる/モノにかかる心配をする人が少なかったり。地面でゴロゴロ転がって汚くなった犬が歩いていても肩身が狭くなかったり。なんというか、どうしても発生してしまう「ばっちい瞬間」が許容されるかんじです。

なぜなら、農村では大抵の人が「汚れてもいい服」で暮らしているからじゃないかな、と。
というか、犬がいようといなかろうと、汚れてはいけない服では暮らせないのです。自分も泥を触り、水を使って暮らしているからです。

都市部では、服を汚さない暮らしがデフォルトですからね。きちんとした身なりの人と大型犬の子犬というのは、取り合わせがよくありません。子犬は遊び方がわんぱくなので、本人はすぐドロドロになり、そんな身体で嬉しそうに誰かに飛びつきやしないだろうかと飼い主はいつもハラハラします。

翻って、大人しい子はいい子、動きが少ない子は楽な子、という基準ができている気がします。人とともに生きるのが犬の宿命ですから仕方がありませんが、心のどこかに(そうはいっても犬自体はもっとのびのびしたいんじゃないの)と思うことがあるんですよね。

どうなんでしょうね。本人は。

まあそんなわけで、みんなが野良着で暮らしている場所では、犬との暮らしもラクチンなんです。泥がついても叱られない、水が飛んでも気にされない。そして、人間が忙しい時も犬がヒマにならない。
人間だけでなく、いろんな生きものが一緒に暮らしている場所は、人間だけが特別扱いされることがありません。それぞれの生きものがちょっとずつ我慢しつつも、過度に気を遣わずに生きている。それが心地いいんだろうな。

 

ご近所に暮らすエイミー先輩のおうちへ。人も犬もおおらかです。

 

教えてもらったのは「犬が近づいたら、振るしっぽでテーブルがひっくり返らないよう押さえる」。犬を叱るんでも、テーブルを片付けるのでもなく、一斉に押さえる!

……と、書いていて、気が付いてしまったんですが。

そういえばかつて、人間のこどもたちのことも、こうして二拠点生活をしながら手探りで育てていたっけな。

こどもが見たい、知りたい、触れたい!と内発的動機を宿したことを大事にしたくて、それが都市環境では叶わないということで、南房総での二拠点生活を始めたのでありました。

一緒に海に潜り、川を楽しみ、山にのぼり、図鑑ではなくて現物を見る。夢中になるこどもの姿だけを見るのではなく、親も一緒になって現物を見て学ぶ。ドロドロになって遊ぶ。
それが我が家の二拠点生活でありました。

子育てと犬育てを一緒に語るなんてだいぶ雑ですが、きっと本質的な好みが変わらないんでしょうね。綺麗に生きるより、思いっきり楽しんで生きたい、というね。

そして爆睡。こないだまで存在していなかったピノが、当たり前のようにデッキにいるのが不思議です。

さて、今夏も残すところあと半月。まだまだ残暑が厳しそうです。
どうかみなさんも上手に涼をとりながら、健やかに生きながらえてくださいね。
南房総の海岸で黒い犬と(日焼けで)黒いおばさんが散歩しているのを見かけたら、いつでも声をかけてください。一緒に遊びましょう!
そして先輩方、犬連れで楽しめる場所をいろいろ教えてください。お願いします!

 

※本記事は、馬場未織氏の知識と経験にもとづくもので、わかりやすく丁寧なご説明を心がけておりますが、内容について東急リゾートが保証するものではございません。
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