暮らし術

都市だけではない、新しいライフスタイルを提案する堀江康敬さんの連載をお届けします。

今回のテーマは「自転車」。住む場所をよりいっそう楽しむために、とても有効だとか。堀江さんならではのアイデア、編集部も「乗り」ました。住む前に、その土地を良く知るためにもいいかもしれませんね。

新しい公共交通システムにもなる、エコロジカルで健康にも良い自転車の魅力

街の新たな移動手段として、自転車をシェアリングする“コミュニティサイクル”が注目を集めています。歩道など公共空間を利用して、街のあちこちに自転車の貸出場所(エコポート)を配置し、事前登録すれば誰でも低料金で自由に利用することができます。
2015年時点で全国の77都市で本格導入されており、観光振興や地域の活性化、公共交通の機能補完を目的に、多くの都市で本格導入を推進中です。

例えば、千代田区の「ちよくる」、横浜市の「bay bike」、神戸市の「Kobe Lin(通称:コベリン)」、札幌市の「ポロクル」、姫路市の「姫ちゃり」、鹿児島市の「かごりん」、岡山市の「ももちゃり」……など なかなかノリのいいプロジェクト名があります。
早速ペダルを漕いで、街を探検したくなりますね。

これは田舎暮らし、リゾート暮らしにも使えそう、というわけで、今回の主役は自転車。新しい暮らしを探す人向けに、“ポタリングライフ”を提案します。

 

“ポタリング”とは?

ポタリング(puttering)とは、目的地や走行距離を決めないで自転車でブラリといく散歩(旅)のこと。語源は、ポッター(potter)という「のんびり・ブラブラする」という言葉からとか。自転車で散策しながら走るという意味から、“散走”という言い方もあるようです。

せっかくのセカンドライフなんだから、晴耕雨読だけじゃもったいない。ポタリングは、車よりゆっくり風景が楽しめるし、歩くより遥かに広い活動エリアになるし、おまけに日頃の運動不足を解消する適度なエクササイズ効果も期待できます。

ただ走るだけでは物足りない人は自転車を止めて、自分だけの“どこでもカフェ”を開店しましょう。清流の水でコーヒーを沸かしたり、森の樹にもたれて文庫本を読んだり、iPhoneで音楽を聴きながら昼寝をしたり。オプションとして、農家の縁側でお茶をご馳走になったり……。

もう、想像しただけで幸福感に満たされてしまう!これこそ、ポタリングならではのSlow & Easyなひと時……。

 

移住地の新しい魅力を引き出すポタリングの効果

知らない路地に迷い込んだり。
地元の新しい風景に気が付いたり。
ユニークな人物に出逢ったり。
新しいお店を発見したり。

足取り軽くポタリングを始めましょう。地元に潜む隠れた魅力を自らが体感することで、より一層の“我がふるさと”という意識が芽生え、コミュニティを元気にする原動力にもなるかもしれません。そのメリットをまとめてみました。

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□ 新しい観光スポットを掘り起こす
クルマのように速すぎず、歩くより遠くへ快適に。地元住民との触れ合いや、思いがけない風景を見つける喜びがある。

□ 身体も心もシェイプアップ
歩く・走るより運動量アップでカロリー消費。クルマと比べ交通法規等の制限も少なく、運転免許も要らない自由が味わえる。

□ 財布にも優しい経済効果
ガソリン消費から体力消費へ。都市部でもマイカーから自転車に乗り換えた、ツーキニスト(自転車通勤者)が登場して久しい。

□ 地球に優しい環境面でのメリット
走っても走っても、排ガスを出さないクリーンな移動手段。クルマやオートバイのように、地域社会に騒音被害を加えることもない。

 

ポタリングにはどんなタイプの自転車が向いているか

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その良いところが明らかになったところで、実践編へ移ります。自転車はどんなタイプを用意すると良いでしょうか。

田舎の悪路をモノともしないマウンテンバイク、街乗りにも使えるクロスバイク、折り畳めるフォールディングバイク、避暑地を颯爽と走るロードレーサー等々。さて、自分のセカンドライフにぴったりの自転車は?移住地でのポタリングへの夢が駆け巡ります。

結論。新天地での新しい魅力を探るには、あの“ママチャリ”がベスト。長距離だったり、よっぽど傾斜が多い立地でなければ安心安全のポタリングを楽しめます。観光地にあるレンタサイクルのほとんどがこのタイプですね。

前輪の上にかご付きだから畑で貰った大根を放り込める。後輪のキャリア(荷台ですね)には、もしもの時のレインコートやパンク修理用のツールも載せられる。両立スタンドだから安全性はバツグン。両足がデンと地面に届くものを選びましょう。

ポイントは、移住先のサイクルショップ(最寄りの駅前とか、商店街で見つけましょう)で購入すること。愛車の駆け込み寺ですね。「当店購入の自転車はメンテナンス無料!」が普通だし、常連になればサービスやアドバイスが気軽に受けられ、ポタリング仲間に出会えるかもしれません。
まずは住むエリアの立地をサイクルショップに相談してみましょう。

 

フィールドに飛び出す前に、まずはシェイクダウンで走行を

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ポタリング初心者の心得を知人のサイクリストが教授してくれました。

「自転車は手に入れた。いざ、緑の中を風を切って!」
「ダメダメ、いきなり遠くへ行っちゃ。まずはシェイクダウン走から始めるべし」
「シェイクダウンって何?」
「モータースポーツ界でいう、テスト走行のこと」
「慣らし運転とか……」
「そ、自転車乗りは新しいパーツとかを初めて使う時には、近場を走って安全をチェックする」
「OK。じゃ、ポタリングを始める前にやるべきことは?」
「まずタイヤの空気圧は適正か。次にハンドルにガタ・ユルミが無いか、スム ーズなペダリングができるか、ブレーキの効き具合は確実か、そしてサドルの フィット感など、事前に点検をしっかり行う必要がある」
「それを確かめながら、近所を一回りするわけだね」
「その後は、購入した自転車屋さんに相談して、定期的にチェックしてもらうこと」
「必要な調整を受ければ、トラブルフリーでポタリングを続けられるってわけだ」

ここまで済んだら、あとは前述のように、あえて知らない小道に迷い込んでみたり、少し勇気を出して誰かに話しかけてみたり、いつもと違うお店に入ってみたり……、風のように自由に楽しんでみればいいと思います。

時速15kmのフィールド・ポタリング。田んぼの中を突っ切る農道、木漏れ日のトンネルを抜ける林道、せせらぎが聞こえる川沿いの道。自転車で行く小さな旅は、セカンドライフをより新鮮でドラマチックな舞台に変えてくれるはずです。

 
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※本記事は、堀江康敬氏の知識と経験にもとづくもので、わかりやすく丁寧なご説明を心がけておりますが、内容について東急リゾートが保証するものではございません。
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