暮らし術 kominka

リゾートエリアへの定住や二拠点生活をする方にとって、地域のコミュニティに接することは、快適で豊かな生活のためのひとつのカギとなり得ます。
そんな地域コミュニティについて知る・考えるために、今回編集部が白羽の矢を立てたのは、地域活性化を生業とする、堀江康敬さん。都市と田舎を行ったり来たりする生活を長く続けてきた、言わば田舎暮らしのプロです。そのお仕事をご紹介いただきながら、都市ではない場所で暮らすことについて考えてみたいと思います。

初めまして。堀江康敬と申します。

私はこれまで、地域の活性化や田舎暮らしにまつわるさまざまなコト・モノを企画してきました。時には都市部に暮らしながら過疎化が進む村や町を訪ね歩き、そしてある時は田舎に住みながら豊かで元気な生活のモトを探す。……そんな生活を長らく続け、今では「地域活性化プランナー」として本を書いたり、こうしてどなたかに向けてお話しをしたりしています。

今回編集部からお声がけいただき、まず考えたのは、「私の活動の一端をご紹介することで、地域コミュニティを楽しむヒントが見つからないか」というアイディア。初めにご紹介するのは、「どこでも書斎計画」。本をきっかけにした地域の楽しみ方です。

 

「本を地域活性化に活かす」というアイディア


「旅行に一冊の文庫本を携えて行く人も多いはず。旅と本は、グッド・パートナー。だったら、本それ自体にクローズアップした旅も面白そう」。

あるとき、そんな思いがフと頭をよぎりました。

例えば、旅の途中にふらっと寄った小さな古書店で、すっかり忘れていた昔の愛読書を見つけて心を動かされたり。あるいは、見知らぬ土地でいつもとは少し違う気分になって、普段では絶対に手に取らなそうな面白い本を見つけたり。

そんなことをつらつらと考え、忙しさにかまけて忘れてしまい、また思い出して……と暮らすなかで、本が地域活性化のシンボルになっている事例に出会いました。本を目当てに、その街に人が集まる、「ブックツーリズム」というコンセプトです。

本が主役になって田舎の町が元気になった

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ロンドンの西200キロ位置し人口約1,5000人の田舎にある古書の町、ヘイ・オン・ワイ(Hay-on-Wye)。30軒以上の古本屋が並ぶこの町は不便な場所にあるにも関わらず、多くの人が訪れゆっくりとレジャーと読書を楽しむ場所になっています。古書を核にした地域おこしの先駆的事例であり、今では「古書の聖地」として知られているそうです。

2009年には、日本でも長野県で「高遠ブックフェスティバル」が登場。城下町風情の残る通りの随所に古書棚が置かれ、観光客はゆっくりと好みの本探しながら散策することができます。町内の様々な会場で朗読会や製本ワークショップ等のイベントも用意されています。

町中でも本をテーマにしたプロジェクトがありました。カフェやショップなどに小さな本棚を置き、それらを「はしご」して楽しむネットワーク型の、はしご図書館。本棚には地元に関わる本や店舗オーナーの趣味・趣向など、お店が選んでくれた取って置きのオススメ本が並んでいます。

本の魅力で地域を元気にする、ブックツーリズム。新しい旅のスタイルが、地域を元気にしているようです。

 

本の町があったら行ってみたいと答えた人が約65%

田舎(地元)の散策と本の探索を同時に楽しめる、ブックツーリズム。この旅のスタイルへの関心についての、興味深いアンケート結果を見つけました。

Q.丸一日ゆったりと過ごしたいと思うことがあるか?
A.「ある」(よくある+たまにある)合わせて89.9%がと回答。男女・年代を問わず同様の傾向で約90%。

Q.目的なく散歩をするのが好きか?
A.「好き」(とても好き+わりと好き)が61.8%。「好きでない」が38.2%と半数以上の人が目的のない散策を好んでいる。

Q.書店やコンビニなどで偶然「いいな」と思う本・雑誌に出会うことがあるか?
A.「ある」(よくある+たまにある)が8割の79.5%。男女別では女性の方がいい本との偶然の出会いを感じる人が多く、年代別では30代が最も多く、以下40代、20代と続いた。

Q.日本でブック・ツーリズムができるような「本の町」があれば行ってみたいと思うか?
A.「行ってみたい」(とても行ってみたい+試しに一度は行ってみたい)が64.8%と比較的関心は高め。
・特に目的なく散歩をするのが好きとした人では76.9%と、好きではない人(45.4%)に比べると、「本の町」への関心はかなり高い。
・いい書籍との偶然の出会いがあるとした人も、「本の町」へ行ってみたいと答えた人が7割を超えていた。

データ出典:ブック・ツーリズムに関する意識調査(アイシェアの市場調査ページ「rTYPE」)

ゆったりと過ごす時間や目的を決めないブラブラ歩きを好む現代人は、本と旅を同時に楽しめる“ブックツーリズム”を、新たな旅のスタイルとして注目し始めているようです。

 

活字中毒者を説得して蔵書をコレクションする

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早速、このブックツーリズムを通じて地元を活性化できないかと、アイディア会議をスタートしました。集まったのは、まちづくり関連の活動を行っている市民団体“NPO”の仲間たち。“地域の活性化”というミッションを共有する仲間たちが安易な結論は出さない、人のコメントにイチャモンをつけない、しかし他人の意見に便乗OK、質より量だ。といったルールで、ケンケンガクガクと進行します。
構成メンバーは、都市部から建築設計、不動産屋・宅建、リフォーム、IT関連などの皆さん。そして地元からは住民有志と、移り住んで田舎暮らしを実践中のご夫婦。それぞれの立場から、多彩な意見交換がされていきました。

「まず、肝心の本をどう集めるかが最優先だね」
「街の古本屋とのコラボが手っ取り早いけど、最初は知人・友人といった仲間内でいきたい」
「世代別で考えると、人生体験が多い分だけシニア層が蔵書も大量に抱え込んでるはず」
「それにあの世代は本好きが多い。1日1度は本屋を覗かないと落ち着かないタイプとか」
「そうそう、出張先でも知らない街でも本屋さんがあると入ってしまう」
「バックに文庫一冊も無いと不安になる」
「ハイハイ、ぜ~んぶ私に当てはまります。文字や文章に過度な執着心を見せる、いわゆる活字中毒者。椎名誠氏は、連続性視覚刺激過多抑制欠乏症とも表現しております」
「そういえば、部屋の床が抜け落ちるとか部屋を狭くしてるって、奥さんから愚痴られてるって話、聞いたことあるなぁ」
「古本だから買い取ってもらっても目方で査定されるし、でも捨てきれないのが本読みの宿命だね」
「本音を言えば、捨てるくらいならゴミになるなら、何処かの誰かに引き取って欲しい!」
「自分が夢中で読んだ一冊の本が、知らない誰かを感動させる!これはもう、読書家冥利に尽きる!」
「(全員)いいね!!」

 

ブックツーリズムの“アジト”をつくる

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大まかな方針が決まったところで、今度は具体的なことに踏み込んでいきます。

「シニアの蔵書を活用させてもらうとして、次は、読書のための空間の確保です」
「すぐに思い付くのが、過疎化が進んで廃校になった小中学校の木造校舎」
「教室の数だけ機能が持たせられるし、木の香りが何より本のイメージにぴったりだよね」
「あの時代に戻れますって感じ?」
「私は大人の放課後!と呼びたい。♪兎追いし……」
「ウェブで地方自治体の空き家バンクなんかにも当たってみる価値はあるな」
「築百年前後といった古民家だったら理想的。地元のランドマークになるし」
「ココから地域ならではの情報を発信できるし、地域外と地元の住民との交流も期待できる」
「蔵書の提供者には、古民家の一室を自由に自分の書斎として使ってもらおう!」
「プロジェクトのためのアジトとも言える!」
「(全員)いいね!!」

アジト、数ヵ月にわたる自治体サイトのチェック、そしてメンバーの仕事の同僚・友人・知人など人脈をフル回転させ、遂に探し出しました!

いよいよ、古民家アジトに集合します。乞うご期待。

後編:都市と田舎をつないでコミュニティを元気にする。「どこでも書斎計画」 〜後編

※本記事は、堀江康敬氏の知識と経験にもとづくもので、わかりやすく丁寧なご説明を心がけておりますが、内容について東急リゾートが保証するものではございません。
※本記事の情報は、公開当時のものです。以降に内容が変更される場合があります。
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