暮らし術 2015-12-19 10.03.07

あけましておめでとうございます!
2016年がスタートしました。
みなさま、年末年始はいかがお過ごしでしたか?

我が家は1月10日をもって、南房総と東京との二地域居住10年目に突入しました。

南房総では、水仙はとても早くから咲きはじめ、お正月には土手一面に咲き誇ります。

南房総では、水仙はとても早くから咲きはじめ、お正月には土手一面に咲き誇ります。

つんと冷たい空気の中に流れる甘やかな水仙の匂いには、何か背筋の伸びるものを感じます。

昔は、水仙の匂いを嗅ぐと、卒業の頃の切なさが体に蘇っていました。でも最近は、南房総の生活を始めた頃の張りつめた気持ちを思い出します。期待と不安が51:49くらいで、でも細かい苦労はほとんど笑い話に変えていけるくらい前向きなエネルギーがあって。
新春は、そんなスタートアップの真っ白な心に戻れる季節です。

しかしな。
心は真っ白でも、ゲレンデは真っ茶っ茶。まったく困るよな。
今年は雪不足につき、冬休み恒例のスキーをキャンセルしました。ひーひーぶーぶー文句を言うこどもたちをなだめつつ、スターウォーズのDVDを毎夜上映し、頭の中にはダースべーダーのテーマ曲が流れる年末年始、というのが我が家の実情であります。

冬は寒いはずの南房総の家も、今年はそれほどでもありません。
暖冬バンザイ!寒くないって、辛くないってことだもん。
一方で、別の心配も頭をもたげます。こんな時期なのに雑草が伸びている気がするからです。心なしか土地がフレッシュな緑色な気がするし。まさか1月からハードな刈払い始動か?いつもはお彼岸まではのんびりできていたのに。
あたり一面が枯れ果てた冬の景色がもたらす心の安寧よ、いずこへ。

まるで春。家より外の方があったかいので、陽だまりでランチ。質素でも美味しく感じます。

まるで春。家より外の方があったかいので、陽だまりでランチ。質素でも美味しく感じます。

でもね、まあいいのです。

実はわたしは今、雑草が愛しい。
ホトケノザ、ヒメオドリコソウ、ペンペン草、オオイヌノフグリ、タンポポ……
そんな小さな花がたくさん咲いて欲しいと願っています。
いやもっと積極的に、家に花を増やしたいと思っています。
特に12月から4月にかけて咲く花をね。

なぜならば、今うちにホームステイしている子たちが、無類の花好きだからです。
この箱の中に、花好きのかわいいヤツがいっぱいつまっているんだな!

なんだよこれ。何入ってるんだよ。

なんだよこれ。何入ってるんだよ。

実は昨年12月より、我が家で長野の養蜂家さんの受け入れを始めました。
南房総はミツバチの避寒地として適しているのだそう。「巣箱を置かせてもらえませんか」と知り合い伝手に依頼があり、「いいですよ」と気軽にOKを出したところ、受け入れ場所がなくて困っていたらしくてたいそう喜ばれました。
ミツバチといってもハチにはかわりありませんから、敬遠される場合も多いとのこと。我が家の場合は概念的な恐怖心はあまりなくて、むしろ好奇心がムクムク、また近くに民家がないのでミツバチの糞が車や布団に落とされるといった心配もなく、ぴったりだったというわけです。ちょうど持て余していた農地があったので、喜んで提供することにした次第。

すでに昨年春からいろいろ説明を聞いたり、養蜂家さんと一緒に土地のチェックなどは進めていましたが、いざ「巣箱をセットしました!」と電話があると、東京にいながらそわそわして落ち着かない。寒い寒い長野から、遠路はるばる車に揺られて南房総にやってきたドナドナミツバチたちに思いを馳せていました。

……そして、わたしたちが南房総に来た日の早朝。
いつものように畑チェックに行くと、まだ暗い畑にはミツバチ1匹飛んでいませんでした。後ろに背負った山が邪魔をして、冬の午前中はなかなか日の当たらないのです。でも次第に太陽の光が入ってくると、明るく日の差した場所めがけてすぐにミツバチがやってきました。

このひたむきな顔!

ナバナにしがみつく、このひたむきな顔!

おお、めっちゃ真面目に働いてる。

必死になって花に頭をつっこみ、何らかの作業が終わるとすぐ、次の花へ。
真面目に観察したことなかったけど、なんか、かわいいぞ?

モフモフした体。
憂いのある垂れた目。
みつばちマーヤのような触覚。(あ、こっちが本家か。)
そして、一途で責任感のある表情。

よく見ると、後ろ足に、ぷっくりと花粉だんごがついてる!
図鑑でしか見たことのなかった、花粉だんご。見えます?

黄色いかたまりが左足にくっついていますよね?

黄色いかたまりが左足にくっついていますよね?

これこれ。
巣の中でこの花粉だんごと蜜を混ぜた保存食をつくり、それを若い働き蜂が食べて消化吸収された後に体内から分泌されたものが、いわゆる「ローヤルゼリー」です。女王蜂だけが死ぬまで食べ続けて、それで大きくなって3年も長生きするってやつ。そして、人間サマも美容と健康のためにありがたがるやつ!
でもこの、一生懸命花粉だんご持って帰る子自身は、この冬いっぱいが寿命でしょう。切ないものだなあ。

1匹のミツバチが一生かけて集めるハチミツの量ってどれくらいなんだろう、と調べたところ、わずかティースプーン1杯程度なんですって。また、働いたご褒美で自分もちょっと飲んじゃえばいいのにと思うのですが、絶対に手をつけずに巣の中の貯蓄担当に全額、いや全蜜渡してしまうという……なんと勤勉実直な。
しかもですよ、そうして集められたハチミツもローヤルゼリーも、人間がどっさり横取りするワケだ。
これからはわたしたちも、1滴も無駄にせずに味わって食べなくちゃ、なんかこう、申し訳ないよな……

ミツバチの一生分。

ミツバチの一生分。

 

「ママまだ畑いたの?」
はッ。
畑でミツバチを見ているだけで午前中が過ぎてしまいました。

これまでわたしは、ミツバチに思い入れを持ったことなど、特段なかったんですけどね。ブーンと近くを飛ぶ音がするとぱっぱと手で払うくらい。むしろ夫の方が以前、「ねえ、養蜂って夢のある仕事じゃない?やってみたくない?」なんて与太話を持ち掛けてきたことがありましたが、「これ以上手を広げてどうするってんの?」と一蹴しておしまいでした。
なのに自分の敷地に巣箱があるとなったら、一気に感情移入しちゃったりして。
興味の入り口は実に浅はかなもんです。

その後、長野から運ばれてきた巣箱を、家族そろってぞろぞろとのぞきに行きました。
巣箱の置いてある農地は飛び地になっていて、家からちょっと離れたところにあるのです。

「ハチの巣箱見に行くよ」と声かけたら、付き合いの悪い息子までついてきた。

「ハチの巣箱見に行くよ」と声かけたら、昨今付き合いの悪い息子までついてきた。

おおお!
あった、あった。

太陽の方角にあわせて置いてある模様。

太陽の方角にあわせて置いてある模様。

全部で5箱。
静かに置いてあります。

もっとこう、ぶんぶんぶんぶんしているのかと思いましたが、そんなでもない。
でも近寄っていくと、そこにはミツバチの「仕事場」の真剣さがありました。

飛んできてる子もいます。

飛んできてる子もいます。

巣箱に開けられた狭い出入り口を出たり入ったり。出たり入ったり。みんな忙しそうです。
一見無秩序な動きに見えますが、よく見ていると、ぷーんと飛んでくる子は間髪を入れずに巣箱に入りますが、うろうろたまっている10匹前後はメンバーが固定で、飛びもしなければ中にも入ろうとしません。コンビニの前にたむろする若者みたいだ。そしてたまに、入ろうとする子に対してえいっえいっと攻撃し、巣箱に入れないようにしている。いじめか?

気になってまたすぐに調べてみると、たむろする子たちは門番バチで、巣箱への侵入者を撃退しているんだと分かりました。人間と同じでミツバチにも自分の家があり、そうでない者はヨソモノ。ヨソモノは、匂いが違うからすぐわかっちゃう。
しかし、ちゃんと自分で花まで行って蜜をとらずに他の巣からかすめ取ろうとするヤツがいるなんてな。‘楽して得する’は本能なんだな。

そんな、活性の高い状態が見られる箱が4つ。
あと1つは、どうも気になる状態にありました。

無残です。

無残です。

出入り口付近にミツバチの死骸がたくさん落ちていたのです。そして出入りするミツバチが極端に少ない。
何か中で悪いことが起こっているに違いない、と大至急養蜂家さんに電話をかけたところ、「ああ、やっぱり。実はその箱、設置した時に確認したら、中に女王蜂がいなかったんですよ」とのこと。女王蜂がいないと、巣の中が統率されず、まだ若いオスのハチが外に追いやられるなどして死んでしまうことがあるそうです。

そうか、ご存知ですよね、慌てちゃってすみません……と言うと、「いえ!そうやって状況を知らせてくれるのはとてもありがたいんです。これからも何でも知らせてください!」とのこと。
ああ、もっといろいろ知りたいなあ。そしたら少しは役に立てるのに。
知らないことが多すぎる!
知りたいことが多すぎる!!

いったい、女王蜂はこの箱のどこに、どんな風にいるんだろう?蜜や花粉だんごはどうやって貯められているんだろう?働き蜂はどうやって役割分担しているんだろう?人間はハチミツをどうやって集めるんだろう?集めたあと、ミツバチはどうやって気を取り直すんだろう?

養蜂家さんとお会いした時のために、質問をためておかねば。
それから、近所で養蜂を手掛ける知り合いもいるので、今度見学させてもらおう。
できれば将来、自分で養蜂できるようになりたい。

そんなわけで、冬、南房総の家へ行く楽しみがひとつ増えました。
ミツバチがここで、待っていてくれるということ。
いや、待ってなんかいないさ。わたしが一方的に、会うのを心待ちにしているだけ。

この生活ももう10年目だし、そろそろ季節季節の繰り返しを楽しむループに入っていくのかなと思いきや、新しい出会いや、発見や、学びや、好きがまだたくさんある。未来を楽しみに思える日々が続きます。
これからも、ささやかだけれど大きな喜びを、みなさんと共有していけたらなと思います。突然ミツバチに恋したりもするけど、どうかお見限りなきよう。できれば一緒に恋していただけますよう!
今年もよろしくお願いいたします。

※本記事は、馬場未織氏の知識と経験にもとづくもので、わかりやすく丁寧なご説明を心がけておりますが、内容について東急リゾートが保証するものではございません。
※本記事の情報は、公開当時のものです。以降に内容が変更される場合があります。
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