みなさん、2016年の夏を満喫していますか?
リオオリンピックで興奮してますか?
半割りのスイカに頭をつっこんで食べてますか?
こちらは、たまたまこの時期に仕事が重なり、じっくりゆっくり心置きなく夏に身を委ねることができずにいます。冷気が逃げるのは分かっていながら窓をちょっとだけ開けて、セミの声に目を閉じ、あー夏のこの音が好きなんだよなーと癒される東京での日々。
どちらかというとわたしは、こどもたちが家にいる状態が好きな方なので、夏休みが憂鬱という感じではないんですけどね。仕事に集中してきたジャストタイミングで「ママお腹空いたー」が挟まることでの、はかどらなさ加減はすごい。
そんなわけで、不本意ながら週末の南房総生活にも仕事を持ってっちゃうことになっています。それでも、週末にむこうに行くのがいつにも増して楽しみで、空気の匂いの変わることでリフレッシュしています。
さて今回は、「やっぱり、住んでいるって強いぜ」とちょっぴり地元暮らしを自慢させてください。南房総は東京から近いため、観光に来ても日帰りできてしまうし、せいぜい1泊というかんじですよね。
でも、ちょっと来るだけじゃやっぱり分からないことって、たくさんあります。地域の魅力も、暮らしの豊かさも、大変さも、楽しみ方も。夏になるとたくさんの観光客が観光スポットに押し寄せているのを見て、なんとなくもどかしい気分になることも、正直あります。これが南房総だと思われるのは何だか、納得いかないなあ、みたいな。
ということで、わたしたちが暮らしの中で発見し、本当に素敵だなと思う『夏の南房総、3つのとっておき』をお伝えします。きっとどのガイドブックにも載っていない、とっておきの場所・とっておきの食べ物・とっておきの体験です。挙げ始めるとキリがないのですが、ひとまず今年の段階で確実にオススメできる3つをご紹介しますね。
1:とっておきの場所『洲崎の海』
山に住んでいても海が近い暮らしができるのが、南房総の最大の利点といってもいいですね。
夏になると、昼の暑い時間帯はほとんど海にいます。朝の涼しいうちに草刈りして、昼は海に行って汗を流し、夕方からまた野良仕事。だいたいそんな1日です。
起きたら天気予報を見て「今日はどこの海に行って、何をしようかな」と考えます。サーフィンやボディボードに最適な海、ビーチコーミングに最適な海、シュノーケルに最適な海などあり、こどもたちの好みによって意見が分かれたりもするんですが、この海は一致して「贅沢な海」ということになっています。
車道から入る小道があるんですが、だいぶ分かりづらいです。車窓から見つけるのは至難の業。すぐ見つかっちゃっても困るから、まあちょうどいいんだけどね。ふふふ。随分前に、「いい海ないかなー」と地図をしらみつぶしに探していて、たまたま見つけたんです。地元の人たちは大抵知っているみたいだけど。
とても不親切な、ほとんど朽ちかけてスロープ状になっている階段をそろそろと降りていくと、真っ青な海が、わたしたちを迎えてくれます。
ここを初めて見つけた時、「千葉県ってすごいじゃないか!」と改めて思ったことを覚えています。きれいな海を求めてわざわざ南の島に行くモチベーションがなくなるほど。
シュノーケリングをすると、魚影が濃くてまた驚きます。カゴカキダイ、イシダイ、クロダイ、メバル、ナミチョウチョウウオ、ヘラルドヤッコ、ハリセンボン、ボラ、メジナ、キス、イワシ、マゴチ、キビナゴ、ヒラメ、ウツボ、ソラスズメダイ、オヤビッチャ、キュウセン、ハコフグ、クサフグ、ワカシ……。来るたびに逢える魚が違うので、何度でも来てしまいます。
また、ここには良い貝殻もたくさん落ちています。
末娘のマメの趣味は、タカラガイ探し。近所の小出さんの家で「ほれ、これがシボリダカラ。これがチャイロキヌタ」と教えてもらい、さらに友達の池田さんの息子さんが小学6年生のときにつくったという『館山のタカラガイ図鑑』を手にいれて、そこから一気にハマりました。
ビーチパラソルが華やかに咲き乱れる観光の海ではない、野生の魅力を放つ海が、わたしたちの暮らしの一部になっています。
2:とっておきの食べ物『まる勇』
ほんとに毎日暑くて、食事なんてつくる気しないですよね。
というか、わたし季節を問わずに何度もそう言っている気がするな。笑。
そんな怠けたがり主婦の強い味方は、なんでしょう?
「やっぱり素材が勝負だよね」と言えちゃうやつ。それを煎じ詰めて、素材でしか勝負していないやつ。ごはんを炊いて、お浸しでもつくって、あとお味噌汁があって、もうあとは何も考えなくていいやつ。並べりゃいいやつ。
……答えは、お刺身です。
内房は「天然の生け簀」と言われているほど魚の豊富な場所です。暖流の魚も寒流の魚も入ってくるため、とっても種類が豊富。スーパーのお刺身コーナーもかなり充実しています。
時期によってばらつきがあったり、スーパーによってもばらつきがありますが、東京よりはだいぶいい。(ちなみにわたしが一番好きなスーパーは、保田の『おどや』です。珍しい魚がたくさん売ってます。)
さらに、「よし、今日は美味しいお刺身を食べたいぞ!」となると、予約の電話を入れて向かうお店もあります。
それが、JR内房線九重駅近くの、『まる勇』です。
ちいさな魚屋さんなのですが、気のきいたものがちゃんと手に入ることが多いので重宝しています。「今日は何が入ってますか?」と聞くと、「そうだね、いいヒラメがあるよ。イワシ、それからクジラもだね」と教えてくれて、人数と予算に合わせてたっぷり目に用意しておいてくれるんです。
そして、これらが抜群に美味しい!外れたことがありません。
忘れてはならないのが、まる勇の特徴、「珍品魚屋」ということです。
この辺では名物の、クジラのたれとか、かじきの塩辛などもちゃんとありますが、この前オマケしてくれたものは、確かに珍品でした。
「奥さん、マグロの目玉、つけとくよ。野菜と一緒にホイル焼きにすると美味しいから」。
マグロの、目玉ですか……
目玉ですか……
実はわたし、目玉はどうも得意ではありません。シラスやホタルイカ、小さな魚などは食べられますが(でもあえて目を合わせず、意識をしないようにしています)、金目鯛は目のまわりが美味しいんですよ~といくらすすめられても、気分はあまり乗らない。
目ん玉だけが怖いなんて、「肉は食べててなに言っているんだ」「内臓や舌だって食べるだろう」と言われりゃそうなんですが、どうもね。
でももらってしまったので、料理しましたよ。言われたとおりに。
マグロってさ、目ん玉ほんとうに大きいのね。こどものゲンコツ級。
家族の前に出すと、しばし沈黙が流れます。
「じゃあ、食うか」。
息子のニイニが思い切って箸をつけ、食べ始めました。
「うーん味は美味い!」。
わたしも、つくっておきながら食べないわけにいかないので、恐る恐る口にします。
……味は、美味い。いや、かなり美味い。
多分コラーゲンたっぷりです。明日になったらほうれい線が薄らいでいる気がするくらい。この部分を好んで食べる人の気持ちが、初めて分かった気がしました。
でもやっぱり、どぅるん、とした感触がなんとも、ええと。
オマケでもらわなかったら、多分一生食べなかったと思うけど、ひとつ乗り越えた気がします。マグロに比べりゃ、金目鯛の目なんてかわいいもんよ!
フツウに美味しいお刺身も、ちょっとフツウじゃないものも手に入るから、やっぱりまる勇はすごいや。南房総に遊びにくる方も、覗いてみる価値あると思います。
3:とっておきの体験『スウェーデントーチ』
野外で夜を過ごすのが楽しい季節、バーベキューをする方も多いと思うんですが、火おこしってわりと面倒ですよね。あれ?そういうことを言うのはわたしだけ?火おこしも楽しいか?
まあでも、もしまわりが充分に広くて、丸太が手に入って、家にチェーンソーがあったら、ぜひとも試してみるといいのが『スウェーデントーチ』です。以前、飲料のCMに登場して話題になったもの。よく考えたら南房総だからスウェーデントーチっていうワケではないのですが、都心でもできるバーベキューをそのまま持ち込むスタイルとはまた違った味わいがあり、里山暮らしがひときわ魅力的に感じられるひとときが過ごせたので、ご紹介しますね。
手間的にはかなり楽です。
そして火力バッチリ。
まず、椅子程度の高さの丸太を用意して、チェーンソーで4~8等分で切り目を入れます。切り目が細かいほど、火が強くなりますから、お好みで。
切り目にたまった木くずをそのままに、中心に枯草や小枝の火種を入れます。
あとは、充分に火が大きくなるのを待つだけ。
「トーチ」とは、たいまつという意味ですよね。火力もすごいですが、灯りとしても美しく、真っ暗闇の田舎の夜を素敵に過ごすことができます。
先日、野外で林業関係の方々と夜を過ごしたとき、このスウェーデントーチの上で竹飯盒炊飯をしました。太い竹の中に米と水を入れて、火にかけます。
その昔、ニイニも細い竹で「竹で炊いたたけのこご飯」をつくったことがありますが、竹が薄いとごはんが竹に焦げついてしまって可食部が減ってしまうのが課題でした。太くて肉厚の竹だと、そのあたりがうまくいくみたい!
食べ終わった竹の飯盒は、トーチで燃やして、おしまい。
トーチ自体も燃え尽きて、おしまい。
……3つのとっておき、どうでしたか?
夏は、いつも行けない、いつもできない非日常体験を求めて多くの人が外に出て、心の充電をする時期です。南房総には、そんな人たちの期待に応える観光地としての役割がありますが、一方で、観光ではなかなか至ることのできない素敵な非日常が、隣りにあります。
これをすこしずつ知る楽しみこそが、「同じ地域にばかり通いつづけるなんて、飽きない?」という質問に対する答えなんだろうなと、思っています。