暮らし術

こんにちは!
だっれにも頼まれないのに週末南房総暮らしをし、本まで書いて南房総暮らしの魅力を言いふらし、住民票までうつし、最近では週末以外にもけっこう南房総にいる馬場です。はい。

最近は、「南房総の冬は寒いんだよなー」「朝晩きびしーなー」「東京より何度低いんだよー」「あったかそうな名前のくせにー」とぶつぶついいながら暮らしています。

じゃあやめたら? 頼まれてもないんでしょ?
と、言わないでね。
「好き」をベースに文句言ってるだけだから。

今さら改めて言うのもなんですが、好きであることって、大事です。
ダメ出しよりも、まずは好きになること。
ありのままの南房総が大好きで、たとえ苦労や不便があっても「魅力のうちさ」と丸ごと味わってきました。というのも、苦労や不便があることは、べつに不幸ではないから。むしろそこから生まれる愛着があったり、学びがあったりするわけです。

で、ブレずに10年すごく好きだったら、どうなったかというと。
もう、好き好き言わなくても大丈夫という間柄の中で、「南房総にはこれがある!」だけでなく、「南房総にはこれがない!」も、認識するようになってきました。

まったくないもの。ちょっとはあるけど足りないもの。ない方がよくて、ないもの。あるものも大事だけど、ないものをちゃんと分かって、それに納得して暮らすのはとても大事なことだなあ、と。

なので今回は、【南房総ないない】を(勝手に)5つ挙げてみました。
これから南房総に住みたい人、ご参考までに!
今南房総に住んでいる人、同感共感違和感反感受け付けます!
他のところに住んでいる人、あなたの地域はどうですか?

【南房総ないない①】車がなくても行ける店
うちから徒歩圏にあるのは、田畑と隣家と集会所、それからお寺です。
昔は、里山といえば暮らしの場。山あり川あり田畑ありで、狩りができ、蚕から絹をとり、葉で染め、山からは薪炭や家づくりの材料を調達し、完璧な自給自足のできるところでした。今でも「ちょっとやそっとじゃ食べ物には困らない」「なんとなればここでどうにか生きていける」という安心感はあります。でも日常生活においては、外への買い出しなしではまあ、だいぶ不便です。

もし車がなかったらどうやって生活しようかなあ。そう考えると、車社会はもろいですね。高齢者の運転中の事故多発のニュースを見るたびに、超高齢社会の南房総はどうなるんだ?と思います。実際、認知症が進んで施設に入った方が、その直前まで運転していた姿も目にしているし。
で、頼みの公共交通である市内バスは、1日数本!高校生の息子はサーフィンに行くのに海までバスを乗り継いで行っていますが、絶対乗り遅れられないという緊張感がハンパないです。

それでも、このバスがなかったら車なしの人間はほぼ動けないわけだから、ありがたいですよ。

それでも、このバスがなかったら車なしの人間はほぼ動けないわけだからね。バス停前にて。

今は、車はおろか免許も持たない若者が多いですよね。二地域居住や移住を希望する人に「まず免許とってから田舎おいで」というのは簡単ですが、未来向きに考えるとそれは、どうだろうと思う。誰もが住むことのできる場所にするためには、シェアできる交通をもっと増やせるといいはずです。あと、自転車も実は有効!スポーツとしての自転車だけでなく、交通手段としての自転車ね。
民間でできることを、真剣に考えるべきだなと思います。

【南房総ないない②】地元の若者がデートできる場所
以前、女友達に聞いたら「デートは地元ではなく、地域外まで行きますね。木更津とか」とのこと。多分理由は2つ。1つは、デートしているところを知り合いに見られてしまう確率が高すぎる。もう1つは、気の利いたデートスポットがあまりない。
いやあ二人きりなら、海に行くだけでも、山にのぼるだけでも、田んぼのあぜ道を歩くだけでも充分楽しいですけど、その「二人きり」という状況がつくりづらいのは厳しい!

2人きりで眺めればこんなに素敵なものはない。はず。

わたしにとっては、行く先々に知り合いがいる状態というのはけっこう心地いいのですが、確かにデート中の知り合い目撃→噂→広く周知、となるとぜんぜん心地よくないですね。あんまり日常では行かないね、みたいな穴場のデートスポットがひそかにできたらいいんだけど。
子育てしやすい田舎っていうのはよく言われますが、その前段階として「愛を育める田舎」があるといいなあと、最近つくづく思います。別に都会的なものでなくていい。その土地ならではのセクシーな場所があると、いい。


【南房総ないない③】スタ〇などのチェーン系カフェ

あーちょっと一息つきたいなーというとき、いちどは検索しませんか?
「南房総 スタ〇」って。笑。
そして予想通り0件しかなくて、ちょっとがっかりするんだけど、「そういう店がないのが、いいんだよね!」と思い直すわけです。

でもね、正直言って、たまにこう、アノニマスな場所でぼんやりコーヒー飲んで、できればFree Wi-Fiもばりばりあって、ぱたぱたっとパソコン仕事をして、また野良仕事に戻るというような切り替えができたらなあと思います。別に家でコーヒー飲んでもいいし、すごく美味しいコーヒーなら地元の素敵なカフェにあるのだけれどね。

以前、市役所の方と今後の南房総のあり方について話していた時、「スタ〇にきてもらいたい!」「我が市にもツタ〇図書館がくれば!」と力説されました。それに対して、いやいやチェーン店の誘致での地域活性はどうなの、地域内循環型経済を目指す方がいいのでは、と応じたのですが、その時の真剣な「欲しい、行きたい!」という真剣な眼差しに、ハッとしました。南房総に対して“この土地固有のものを大事にして”というのは押しつけではないか、と。地元の人たちが欲しいと思っているものがあるとき、その本質を汲まずに否定するのはすごく冷たいことなんじゃないかな、と。
最近話題の『君の名は。』という映画でも、田舎のまちにカフェがないことを地元高校生が嘆くというシーンがありましたが、地域での日々にサードプレイスがあればどんなにいいか、みんなが欲しているか伝わってきました。

サードプレイス=“第3の居場所”が、南房総にもできたらいいなと思います。別にチェーン系カフェでなくていい。でも、こってり濃厚な空気の個人経営のカフェでもなくて。どういう場所だったらいいだろうね。

【南房総ないない④】雨の日に楽しめる外出先
これは、都市生活でもなかなかアイディアの出ないところですよね。
映画いく?美術館か博物館?デパート?……雨の日の外出ってお金かかるなあ。実家に顔でも出すか。
そんなかんじです。できれば外出したくないけど、ずっと家にいるのも気分が変わらないし。

一方で、雨の南房総で外出できる先はもっと少ない。もし観光中の雨だったら、これは気分がさがりますね。せっかく見に来た風景もイマイチだし、道の駅で買い物でもして魚食べたらもう手詰まり。季節限定でビニールハウス内のイチゴ狩りがあるかな、という程度です。
あとはホームセンターとショッピングセンター。なんともはや。

では、田舎暮らしでの雨の日は、どんだけつまらないか!というと。
実はわたし、雨の日が好きです。
だって、野良仕事ができないんだもん。うふふ。
できないものはできないから、正々堂々とだらだらできる。

晴耕雨読とはよく言ったもので、雨は休息の時間です。ごろごろ寝たり、ゆっくり料理をしたり、気が向いたら農機具の手入れをしたり、思いつきで廊下を磨いてみたり。たまの雨は、自然にとっても人間にとっても大事だなーと、田舎にいるとしみじみ思います。

というわけで、行く先がないけどあまり困ってないです。強いていえば、気分転換になるカフェが……(話が戻りますね笑)

【南房総ないない⑤】児童公園
地域で小さな子を育てるママたちからは「もっと公園が欲しい!」という声があがっています。あるはある、でも、数は圧倒的に少ない。家の徒歩圏内にないので、遊具を求めて遠くの公園まで足を伸ばすそうです。
二地域居住を始めたきっかけが、「公園じゃない大きな自然の中で子育てしたい!」だったわたしからすると、えーと驚くところ。田んぼの中に手をつっこめば、生きものがいるよ、裏の山をのぼれば、ターザンできる太いつるもあるよ、秘密基地だってつくれるし、小石や花びらやいろんな実で本格的なままごともできるよ!と言いたくなります。
実際、地域の自然全体を遊びの場として使い倒すという保育の「森のようちえん」もあり、公園がない=公園なんて必要ないくらい豊か、との考え方もあります。

ただですね。
週末しかいないわたしさえ、実はたまーに、公園があったらなと思うことがありました!というのは、こどもにとって「なんらか人がつくったもので遊ぶ」というのはご褒美みたいに楽しいことだというのも、分かるからです。こども(とくに乳幼児)と暮らすながーい時間の中で、そういうちょっとしたウキウキがあるのは、親もありがたい。公園を通じて親同士が繋がれたらいいな、との声も。(都会では公園デビューという儀式の鬱陶しさが言われていますが。)
行政に、「公園が欲しいです!」と声を届ける方法もありますが、ひょっとしたら、公園の欲しい人たちで私設公園をつくることも考えられそう。

遊具みたいに、木で遊べると楽しいよね。

遊具みたいに、木で遊べると楽しいよね。

 

……ということで、南房総ないない。

勝手に挙げてみましたが、どうでしょう。
「いや全部いらん!」とか、「もっとアレが欲しい」などあるかもね。

「ない」というのは、たしかに不便だしつまんないし、他とくらべてあーあ、と思うこともできますが、ないことで気付くさまざまなことがあったり、じゃあどんなところが欲しいだろう?と考えたり、思い余って自分でつくりだしちゃったり、新しい展開を生むきっかけになったりも、しますよね。

ちょっぴり「ない」、南房総。その足らなさと可能性も、わたしは好きです。

※本記事は、馬場未織氏の知識と経験にもとづくもので、わかりやすく丁寧なご説明を心がけておりますが、内容について東急リゾートが保証するものではございません。
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