暮らし術

ハァ~とうとう夏が終わりました!
みなさんのお休みは、どうでしたか?

我が家は、今年はけっこう気合が入っていました。ひょっとしたら家族5人でちゃんと遊べる最後の夏かもしれないということで。来年は息子の大学受験です。(いちおう。)
「日本でいちばん海の綺麗な場所に行きたい」という彼の希望に添い、座間味島で過ごすことを決めていました。小さな島なので早めに予約し、他のこまごました計画含めもっぱらわたしが進めていました。ブッキングだけでも宿3ヶ所、飛行機、空港駐車場、レンタカー2ヶ所、離島への高速船ほかいろいろいーろいろ。それらがすべてパチリとはまって、あとは行くだけ、という状態だった時の、ワクワクったらなかった。いよいよ行けるなあと。
というのも、過去に座間味旅行を台風直撃でキャンセルしたことがあったからです。ぶーすか言うこどもたちをなだめたなあ。

で、今年いよいよ!

のはずが、なーんと、まさかのキャンセル。

身内にちょっとしたことがあり、東京から遠く離れることが難しくなってしまったのです。
しかもキャンセル料がグイッと高くなる出発数日前の決定でした。
キャンセルボタンを押すたびに、諭吉さんが天高く舞い上がって消えていきました。

「しかたない。しかたないよ。ママだって残念だ。でもひょっとしたらこれだけ座間味に行けないということは、行かない方がいいと神様が言っているのかも。きっとそうだ」

こどもたちにも自分にも言い聞かせましたが、誰も聞きゃしません。
「それで今年はどこにだったら行けるの?」

答えに窮するわたし。
というか、答えはたったひとつ。

「南房総の、里山リゾートかな」
「……いつもの?」

そう。
予約不要のやつ。

まあ軽く300回以上行ってるやつね。

まあ軽く300回以上行ってるやつね。

こどもたちの反応はご想像のとおりかなと思います。
少なくとも、ぱっと顔が明るくなったようには見えませんでした。でも、誰が悪いわけでもないしな。

「宿はたしかに、うち。でもそのかわり今回の休み中は、大人は決して野良仕事をしません。全部遊びます。だったらいい?」
と言ってみると、末娘のマメだけちょっと嬉しそうに笑いました。
「それだったら、いい!!」

……そんなわけで、今年の夏休みは南房総リゾートライフを満喫した次第。
いつもは行けないところに行きたい、したかったことをしたい、というこどもたちの想いを汲んで(南房総で行ってないところやしてないことなんてあったっけと思いつつ)、みんながばっちり楽しめるように努力しましたよ!親としては。

こどもそれぞれの希望は、ざっとこんなかんじです。

9歳娘マメ『シュノーケリングがしたい!』
「だっておかしいじゃん、今年はまだ1回も海に入ってないんだよ」
いつもは7月後半から毎週末のように海に行く我が家、それなのに今年は天候不順が重なって、海に入ることができなかったのです。行って、眺めるのが関の山。

この憂さ晴らしを一気にしたい!
そしてあの、座間味の海に入れなかった恨みも一気に晴らしたい!
という分厚い思いを持つのはマメだけじゃなく、ほとんど家族全員一致の心の叫びだったと思います。

で、今回は南房総のいろんな海を巡りました。
1日2浜ペース。

その先の、海へ!

その先の、海へ!

おいおいそんなにいくつも行って、ただ疲れるだけじゃないの?
と思われそうですね。

我が家の海の楽しみ方って、ひょっとしたら一般的ではない気がします。
テントやシートなどを持っていかないので、基本的に浜に居場所はありません。
シュノーケル、水中眼鏡、フィン、マリンブーツ、ライフジャケットをそれぞれ人数分と、小さなバスタオルを1~2枚、これをざくっと詰め込んだ海道具セットを持っていき、浜についたらそれぞれぱっぱと身につけます。

マメが初めてシュノーケリングをしたのはいつだったんだろう。5歳くらいだったかなあ。道具の扱いには慣れていて、水中眼鏡の曇り止めに洗剤を塗ったり、シュノーケルの弁が壊れてないかまず確認したり、フィンを履いたりと、自分で全部ちゃっちゃとやれるようになったので、母は本当に楽ちんです。

準備が終わると、はじめに泳ぎの達者な男衆がぐるりと一周見てまわります。戻ってきて「今日はここはいろいろ見られるよ」「今はだいぶ濁りが入ってる」「きれいだけど魚は少ない」「あっちの岩のまわりがポイント」などと概要を教えてくれます。
それに従ってみんなで海に入り、それからひたすら、海の中を見る。
ずーっと見る。

 

焼けるのはもっぱら背面。オセロだわな。

焼けるのはもっぱら背面。オセロだわな。

交代で休憩をとりながら(岩の上とかで体をあたためる)2~3本泳いだら、だいたい海の中の状態が把握できてたいへん満足するので、「じゃ、帰るか」となる。身体を流すのは2リットルのペットボトルに入れた水、1人1本。

所要2時間、うんと長くても2時間半の滞在です。だから1日2浜は余裕で行ける。日常の海遊びだったら、帰ったら草刈り野良仕事となりますが、今回はそれはしないからね!

陸から見えるのは、シュノーケルが立っている姿ばかり。

陸から見えるのは、シュノーケルの吸気口の立っている姿ばかり。

シュノーケルをつけていても会話はできます。
「あれ、ソラスズメダイの群れだよ」
「青いねえ、キラキラ」
「その岩の下、イセエビだよ、イセエビ」
「ほんとだ!触覚がゴキブリみたい」
「サンゴもほら、小さいけど」

男衆についていくと、ぼんやりしていたら気付かないようないろいろな生きものを見つけては教えてくれます。

うちの男衆は、遊びに関してだけはうんと頼りになるんですよね。深い世界へ連れて行ってくれるし、ガイドとして雇ってもいいくらい信頼できます。

日常生活では頼りになって遊びはからっきしな人と、日常生活ではほとんどまったくぜんぜん役に立たなくて遊びが上手な人と、一体どっちの方がいいんだろう?
後者の場合は、「ああいてくれてよかったな」と心の底から思えるのがだいたい1年のうちに10日くらい。微妙だ。

まあいいや。

毎日休みだったら最高に頼もしい存在だったろうに。

毎日休みだったら最高に頼もしい存在だったろうけどね。

今回はとくに、素晴らしく美しい海に出会うことができました。
うちからちょっと遠くの海です。(といっても南房総の海だけど。)
その日は良く晴れていて、海の中まで光がキラキラと差し込んでいたこともあって、ここは竜宮城じゃないかと思うほど。
彩度の強い絵のようでした。

逢えた魚は、
シロギスの大群、カタクチイワシの大群、ソラスズメダイの大群、キビナゴの大群、イカの大群、メジナ、ハコフグ、サヨリ、キュウセン、オヤビッチャ、ウツボ、フタホシキツネベラ、ナミチョウチョウウオ、トゲチョウチョウウオ……

マメは贅沢だなあと思いました。小さな頃から、こんなにたくさんの魚を、ホームの海で見られるなんてね。ありがたく思って欲しい!
わたしは父の体が弱かったこともあり、こういう海遊びは大人になるまでほとんどしたことがありませんでした。たしか10歳くらいのとき、伊豆の海で友達に水中眼鏡を貸してもらい、磯の生きものをちょっと見たことがありました。そのとき「うわああああ!面白い!」とすごく強く思ったのですが、それっきり。おかげで大人になって、やたらと感動できるんですけどね。

「ママ、海の場所によって、水の温度がぜんぜん違うね。それで見える魚もぜんぜん違うね。海の中にもいろんな国があるみたい」

自分の目で見たこと、体感したことを、ずっと忘れないでもらいたいな。

 

16歳息子ニイニ『釣りがしてぇ!』

だろうね。
彼はいつも、釣りの動画と、釣った魚の捌き方の動画を家で見ていますから。
じつはわたしはそれほど釣りが好きではありません。嫌いでもないですが、気持ちよく泳いでいるのにわざわざ釣らんでも、と妙に魚側に感情移入してしまうのです。(そのくせ食べてるけど。)

「なんでそんなに釣りが好きなの?」と聞くと、ニイニは「釣り竿1本で、海の中を探検するのが面白い」と言います。それだけ聞くとなんか深い気がしますが、「あー将来は釣りばっかりやって暮らしてえなあ!」というのを聞くと不安になります。保育園の卒園式で「将来はマグロの一本釣り漁師になりたいです」と言っていた時と変わらないじゃないか。

で、3日間、彼は存分に釣っていました。
「悪いけど食事は外食にならないから。釣果でよろしく」と言われ、あらそう?それは楽しみ、釣れたら写真送ってねと言って防波堤やら桟橋やらに送ってあげるわけです。

1日目。
大潮、満潮、夕間詰という最高のコンディションでの釣りだったはずなのに、ぜんぜん連絡が来ない。

しばらくしてLINEがピコンとなりました。
「15センチのタカノハダイ。臭いやつだけど針飲んじゃったからリリースせずキープ」

なるほど、釣ったうちに入らないやつね。
その後またしばらくぜんぜん連絡がなく、日はとっぷり暮れ、そろそろ迎えの約束時間となったところでまたLINEがピコン。

「だめだめ」

なーんだ、だめだめか。

行く時は意気揚々だったのにな。ちなみにタカノハダイのお刺身1匹分、まあまあ美味しかったです。(少なくて味がよく分からないという説も)

行く時は意気揚々だったのに。

 

結局釣果はしょうもないタカノハダイだけでした。「内臓が臭いわ、すげえ臭い」と言いながら捌き、お刺身自体はふつうに美味しかったけど少なくて味がよく分かりませんでした。

2日目。
今日こそはリベンジだと息巻いて夫と2人で出かけていきました。
「夕食待ってるから!」と一応背中を押してあげる優しいわたし。

しかしながら、またしばらく連絡がきません。
いいことがある時はうるさいくらい連絡があるので、きっと今回もダメなんだなと思ってたら、「釣れた~」と写真が送られてきました。

そうか!
何が?

あらー!ウツボ。午前中のシュノーケリングでも見たやつ。

あらーウツボじゃないの。午前中のシュノーケリングでも見たやつ。

しっかし外道!あまりに外道。
噛まれると大ケガをする以外の印象のないやつ。

こんな怖いものリリースしてくるだろうと思っていました。
そして、もっとちゃんと食材を釣ってくるだろうと思っていました。

とっぷり日が暮れて、帰ってきた2人の顔には、喜びの表情はなし。

これを、、、か?

食える食える、というけどどうよこれ!カサゴは美味しいが1匹ぽっきりだし。

「調べたら、味自体は美味いらしい。小骨の処理だけだな。あとはヌメリとり」と、こともなげに言いますが、これ、食うのかあ?

きゃーきもーいと言いながら楽しそうにヌメリをとる娘。

きゃーきもーいと言いながら、ヌメリとりをさせられている末娘マメ。

3日目。
この日は本当に本当に本当に釣ってくるぞと、早朝ボートを予約。
ボート釣りは普段できませんから、16歳には充分贅沢な釣りです。「大海原へ漕ぎ出せば、入れ食いよ」と言うことだけはいつものように勇ましく、朝日ものぼらないうちから出かけていきました。

で、わたしもさすがにちょっと期待しましたね。ボート釣りだもの!きっと今日は魚三昧の夕飯だろうと。天ぷら粉は足りるかしら、いいワサビも用意しようかしら、なんてさ。

そして一応、写真は送られてきました。

おお!シロギスじゃないか。食材じゃないか。

おお!シロギスじゃないか。食材じゃないか。

これがいっぱい釣れたら天ぷらだ天ぷら。がんばってねーいっぱい釣ってねーとエールを送り、とても楽しみに待っていました。
すると、それ以来ぱたりと連絡が途絶え、5時間。

帰ってきて、釣果をざらっと並べたら、、、

しょぼいぞ。

しょぼいぞ。

昨日のウツボと合わせて、夕食1回分になるかなー。ならないかな。
なのにまったくめげていないニイニ。ちょっとしかいないシロギスと小真鯛とメゴチを丁寧に捌き、「いやー、釣りは奥が深いよ。釣れないからこそ、また行きたくなるんだよな!」と言っていました。

半日釣ってこれだけなのに、楽しいのか?
ほとんど待ってる時間だったろうに。
わたしにはやっぱり釣りはよく分からない。

シロギスの刺身に、ウツボの唐揚げ。美味しかったよ!少なかったけど。

シロギスの刺身に、ウツボの唐揚げ。美味しかったよ!少なかったけど。

 

わたしはこういう夕食を期待していたのだ!館山の富鮨「地元握り」。

わたしはこういう夕食を期待していたのだ!ぶだい、かじき、きんめ、いしもち、わらさのなめろう、まだい、しめさば、くろむつ、するめいか。館山の富鮨「地元握り」。

泳いで、釣って、捌いて。
「あー早く車の免許が取りてえなあ、そしたら好きな時にここにきて、好きな時に釣りして、好きな時に泊まっていけるのに」と、ニイニ。
そうだね、それは素晴らしそうだけれど、本当に釣りだけなんだろうか?親の知らないうちにここに“誰と”泊まりに来るのかっていうのは大変気になる。そういうとき、この家のことを突然“うちの別荘”とか呼び出しそうだし、「平日はうちの別荘あいてるから、行こうよ」とか誘いそうだし。

まあいいや。

里山暮らしだけれど、海暮らしもできるのは、半島暮らしだからこそ。
座間味はどっかいっちゃいましたが、南房総リゾートもまあ負けてないなと、改めて思えたのはとてもよかった。これであとリネンサービスと朝夕食がついてたら完璧でした。(←実はわたしにとってそれとても大事)

……そうそう!
13歳娘ポチンの夏については、次回にお話します。

※本記事の情報は、公開当時のものです。以降に内容が変更される場合があります。
リゾートさがしガイドブック集