暮らし術

2019年が穏やかにスタート。
今年もよろしくお願いいたします。
半袖をしまったのはつい先日だと思っていたのに、もう、春の兆しです。

 

この梅が、咲いて、実が膨らんで、我が家の梅干しや梅ジュースになるから、この兆しは喜びそのものです

この梅が、咲いて、実が膨らんで、我が家の梅干しや梅ジュースになります。その頃には息子の大学受験も終わって……どうなってるやら!

 

ところで、昨年末にリクルートホールディングスが発表した「2019年のトレンド予測」をご存知ですか?
毎年、住まいや美容、飲食などのジャンルごとに“新たな兆し”を見出してトレンドキーワードとして打ち出すというもの。

今年の住まい分野のトレンドとして挙げられたキーワードは、『デュアラー』だそうです。
デュアルは「2つの」という意味であり、つまりデュアラーは“都市と田舎の2つの生活を楽しむ二拠点生活者”を意味する造語とのこと。

おっと。
とうとう、時代が追いついてんじゃないか?
空き家活用への動きが活発になってきたり、働き方改革によって若い人達のライフスタイルが変化したり、また地域貢献への興味が増すなどの社会情勢が背中を押しているのでしょう。これまでは2つも拠点を持つなんてお金持ちか悠々自適のリタイア組だと思われていましたが、現在の実態としては、でゅ、デュアラー(言いなれなくて舌噛みそう)は20~30代が過半を占めているようです。なるほどわたしは高齢枠の住人か。笑。

2007年にわたしたち家族がデュアラーデビューをした頃は、「週末に田舎に住む?そんな無謀な」と驚かれ、呆れられ、完全に変人扱いでした。
でも実際は、思われているほど敷居の高いライフスタイルではないし、何より人生全体がめきっと鮮やかなものになるという実感は、あり続けています。そうして思い余って『週末は田舎暮らし』という本を書いたり、NPO法人南房総リパブリックを立ち上げて二地域居住促進事業を展開している中で、ここ1~2年、ぐぐぐっと“デュアラー仲間”が増えてきたと思っていたんですよね。

トレンド、というのは半分人為的につくられるものだとは思いますが、そうだとしても、この潮流が大きくなることで多くの人達に二拠点生活の豊かさが届くといいなと願っています。

我が家のすぐ近くの、伊予ヶ岳という山。以前はこの山のてっぺんから、風景しか見えませんでした。今では、麓に暮らす大事な友人たちの顔が浮かびます。嬉しい変化です。

我が家のすぐ近くの、伊予ヶ岳という山。以前はこの山のてっぺんから、風景しか見えませんでした。今では、麓に暮らす大事な友人たちの顔が浮かびます。嬉しい変化です。

 

さて、今回は、デュアラーのリア充っぷり、ささやかながら満ち足りた日々のシーンをいくつかお見せしてみようと思います。南房総では、家にいながら冬もこれだけ楽しめるんだよ!という自慢です。
まあ、ただ、表側のリア充だけでなく、その周辺にへばりついている雑音みたいなリアルもチラ見せ予定。暮らしっぷりを立体的に想像してもらえればと思います。へへ。

ではまず自慢から。
『デュアラーの冬のベストアイテム3!』いきます。

①陽だまりポイントでハンモック読書

これまで「南房総は南とつくわりに冬はふつうにすごく寒い」と愚痴をこぼしてきましたが、実はゴールデンタイム&ゴールデンスポットがあります。それは、11時~14時の陽だまりです。この時と場所に関しては、東京より格段に暖かい。風さえなければ、上着がいらない程度にぽっかぽかなことが多いです。

そんな時は貪欲に。
この、超絶気持ちのいい陽だまりを最高の状態で楽しむためのアイテムを使います。
ハンモックです。

極めて上等なピクニックです。

これがあるだけで、極めて上等なピクニックになります。

 

自立式ハンモックをずるずると好きな場所に移動させて、好きな本と、おやつを手元に。
あとは、空中に体をゆだね、ストレスのかからない柔らかな浮遊状態を心身で楽しみます。

冬は、実は、外をくつろぐベストの時期なんですよね。
まず第一に、冬は虫がほとんどいない。春めいてくると虫たちがわらわら出てきます。なんやかんやと体を這ってくるものがいることをそんなに素敵に感じない人も多いはず。
まあ、わたしは変態的に虫好きなので「それならそれで!」と観察を楽しみますけどね。

それから、この時期は紫外線が少ないので、日差しを浴びることに抵抗を感じずに済みます。
まあ、わたしみたいに全身シミ的なオークル肌だと年中気にしてないですけどね。

あとは、単純に野良仕事に追われていないから気分が楽。
一般社会のみなさんがピクニックを楽しむような季節は、すなわち雑草がどんどこ生えてくる季節。草刈や畑仕事も増えるため、日中は寸暇を惜しんで働きたくなるわけです。
でも冬はね、雑草がぜんぜん伸びないんです!
これはとても素敵なこと。大手を振ってのんびりできる。
1年分ののんびりを使ってやれ。と心から思います。

春の大風、梅雨のじとじと、秋のスズメバチなど季節ごとにさまざま厄介がありますが、「晴れた冬の日」は宝物のような透明感があって、本当に気持ちがいいです。

 

電気毛布は50wの救世主。

ちなみに、外は勘弁というほど寒い時は室内で、電気毛布をインして使うと最強です。電気毛布はたった50wの救世主です。

 

②断熱された部屋は灯油ストーブ1つでぽかぽか

以前の我が屋は、家の中が外気温でした。
家族全員コタツの中に肩まで浸かりこみ、みかんを食べる間に凍えた手を慌ててまたコタツに突っ込む、という冬を過ごしていました。築120年の古民家は「ああ、昔の人って寒い暮らしをしていたんだな」という体験をリアルにできる空間です。
そんなですから、コタツは11月に出して5月に片付けるまで、わたしたちの命を守るシェルターでした。身動きのとれない最小シェルター。これに全身をゆだねて生きていました。

ところが去年、今年の冬はだいぶ違う。
2017年に屋根裏、床下、障子まで断熱が施されてからは、冬が、圧倒的に楽です。
→断熱ワークショップの内容は2016年2017年の記事に詳しいです。

今の我が家のシェルターは、8畳の洋室全体です。コタツから、部屋へ!だいぶ広がった。
ここに灯油ストーブを1つ置けば、室内温度が18度程度まで上がります。ふつうに手足をのびのびさせ、心と身体をリラックスさせることができます。食事もテーブルについて、冷めるより先に食べようと思わずに、ゆっくりいただけます。
そんな当たり前のことが本当に幸せに感じるほど、古民家の冬は厳しかったんですね。
断熱を施した“暖かい古民家”を体感することで、年間の4分の1の時間が快適になる価値の大きさを実感するようになりました。

そして、以前の10年間のガマンを懐かしく思い出します。
ああ、以前は寒かったね。なんてさ。
過去の自分たちに対するこの優越感ったらない。

友人のつくったお餅と、友人のつくった大根と鶏肉で、お雑煮をつくります。時節柄。

友人のつくったお餅と、友人のつくった大根と鶏肉で、お雑煮をつくります。時節柄。

灯油ストーブは、つけているだけで料理もできちゃう。
お雑煮をつくったり、シチューをくつくつ煮たり。暖まりながら部屋が美味しい匂いで満たされていくのも、冬の贅沢な風景だなあと思います。

③敷地内空き地で小さなドローンと戯れる

去年のクリスマスに、末娘のもとにやってきたプレゼント。
それはなんと、小さな小さなドローンでした。
サンタさんも大変だね。どう考えてもプレゼントしたくないもの(モーター付きのスケボー)を欲しがる子には、別の喜びそうなものを用意しなければならないんだもんね。

ただ今年のサンタは冴えていました。ドローンは、娘の欲しいもののど真ん中だったみたい。「こんなものをもらえちゃったよ!」と狂喜乱舞し、年末年始は限りある室内空間でせっせとホバリングの練習を重ねてきました。

それにしても、ドローンの操縦って難しいんですよね!
わたしも少しだけ使わせてもらいましたが、上下、左右、前後、回転を同時に考えながら操るのは想像以上に困難です。ユンボの操作以上に難しいです。

それでも、室内でちまちまと飛ばしているうちに勘がつかめてくるらしく、「外でもやってみたい」と言われ始めました。

たしか、ドローンはいろいろ規制が厳しいんだよね。
娘が手に入れたのは200g以下のホビードローンと呼ばれるもので、航空法が適用されませんが、それでもドローンの飛ばせる場所は都市部では見つけがたい。公園で飛ばすのも、一般的には禁止されていますから。

そこで頭に浮かんだのは、南房総の我が家の敷地です。
何しろ8700坪ですからね。無駄に広い。

周囲に住宅地などもなく、道路もなく、誰にも迷惑をかけず、法律に触れることなく、存分に練習できる場所を自前で持っているなんて贅沢な話です。いつもは「草刈りが大変で、広いのってホントやだ」と悪態ついてるけど、こういう時は大威張りな気分。
この冬休みは珍しく、娘から「今度はいつ南房総に行く?」とせがんできて、何だか報われた気分になりました。

冬は草丈がないため、足元がすっきりしていて、畑をつくらずにただ遊んでいる土地が体裁の良い広場のように使えます。

この、蘇鉄のあたりに儚く浮いているのがドローン。

この、蘇鉄のあたりに儚く浮いているのがドローン。

サンタさん、娘にドローンをくれて、ありがとう!

・・・・・・・・・・・・・・・

さて。
こうして冬の、心地よい、楽しい過ごし方を並べてみますと、見ようによっては何だかまあ良さそうな暮らしぶりに見えますよね。ウソは書いてませんし、事実そこそこ幸せな日々です。

でもね。
詳細はいろいろあるのよ。
そんなにふわっふわで、わっくわくで、ほっくほくな日々なわけがないじゃない。

たとえば①のストーブの上でつくったお雑煮は、わたしとしては家族そろってきちんと食べたかったわけ。
いいかんじでお餅が焼けたら、テーブルにきれいにお椀を並べて、「できたわよー」とみんなに声をかけて、「今年もここで1年が始まるね」と感慨深く食卓を囲み、はふはふと熱いお餅を楽しもうと思ってたわけ。

なのによ。
気が付いたら、なにそのフライングは!

え?なにひとりで?

え?なにひとりで?

あーーーーあーーーーー
「お餅見ててね」とは言ったけど、「出来たら床で食べ始めて」とは言ってない。
断熱がしっかりしてあるから、床がそれほど寒くないんです。という話でも、ない。

②のハンモックも、実は奪い合いでした。
黄色い椅子はウェイティング用。「20分で絶対交代ね」と決めて、2番目のわたしはしんねり順番を待っていました。だって、このハンモックはいつもこどもたちに占拠されていて、わたしが揺られることなんていつも1日に30秒程度なんだもの。

冬休みくらい母親だってしっかり休みたい。
時間厳守だよ、と言い渡し、コンビニで調達した焼きプリンと木のスプーンも準備して、まずは座りながら揺れながらプリンを食べて、それから寝そべって読書をしようと楽しみにしてたんだ。
待っている間に、いろいろと年始から動いている仕事のメッセージをせっせとチェックして、ああだこうだと指示を出したり、複雑な連絡事項を片付けたり。そういう過ごし方自体が優雅ではないんだけれどね!

あ、20分経過。
「そろそろ替わって」
「もうちょっと。あと1分」
「だめ、替わって。時間です」
「わかったから、わかったからもうちょっと!これ読み終わるまであと1分だから」

1分か。仕方ない。黄色い椅子に戻り、イライラと待ち、「29、28、27、」とカウントダウンをしてやると「そんなことされたら落ち着かない!」と娘がさらにイライラ。
「だいたい超過なの。もう1分経った。替わって。替わりなさい。替われ!」

せっかくの穏やかな陽だまりをわたしの鋭い命令口調が濁していきます。「ママって大人なの?」と娘に軽く蔑まれながらようやく交代を果たしましたが、なんか面白くない。腹いせにぐいんぐいんと揺らしてやります。
あー揺れる。揺れるのは大人だって楽しいんだ。ずっとこれがしたかったんだ。ふん。

そうだ、それで、頭に描いていた「大好きな焼プリンを食べながら揺れる」ってやつをやろう。
最高に楽しくて美味しいやつをやろう。

……ん?
ん???
なんか、プリンが空っぽになってる!

「ちょっとーーー食べたの?ねえ、あなたこれ食べちゃったの?
ママのだって分かってて、食べちゃったの?!」
「ん? んーー。美味しそうだったから。ごめんねごちそうさまー」

あーあ。泣くよ。
プリン楽しみだったのに。
べつに食べてもいいけど、今日は食べて欲しくなかったんだ。
完璧なハンモックタイムを過ごしたかったんだ。

悲しい。
せめて20分、きっちり揺れてやる。

20分はわたしの権利。いじわるばあさんをたしなむ。激しいいじわるに胸のすく思いがするわ。

20分はわたしの権利。いじわるばあさんをたしなむ。激しいいじわるに胸のすく思いがするわ。

 

そして、③のドローンをくれた、サンタさんへ。
確かにドローンは楽しいです。
充電がなくなるまで遊び、なくなるまで遊び、とやっていると1日があっという間。空を飛んで撮影できるものを操縦する奥深さは想像以上です。

でもね。
過ごす時間の内訳は、ドローンの操縦3分につき、紛失・捜索・救出に30分。
そういう遊び方で合ってますか?

とっても高い、柿の木にひっかかっちゃったよ。一番長い竹を探して、枝を落として、くいっくいっと。難しい。

風に流されて、とっても高い柿の木にひっかかっちゃった!一番長い竹を探して、枝を落として、くいっくいっと。操縦より難しいじゃないか。

 

見つけた!!!光ってる。

落とせた!見つけた!!光ってる!!!

 

戻ってきた。うまく飛ばせた時より嬉しい。

戻ってきた。うまく飛ばせた時より嬉しい。なんなの。

 

ドローンの飛ぶところを見ていると、数年前、この敷地で放鳥したキジのきーちゃんを思い出します。
親から見放された卵を拾い、我が家で孵化させて育てあげ、野に返す時期が来て、万感の思いを胸に「ばいばい」箱をあけると、中からばさばさっと飛び立って竹藪に突っ込んで消えていった、きーちゃん。かわいかったな。いつまでも人に馴れなくて、それも野性味があってよかった。

操縦の下手くそなドローンはまさにきーちゃん。
でも、ドローンには野性味はいらない。

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デュアラー一家の珍道中は、13年目も変わらず続きそうです。
つぶさに見れば、しょうもないことだらけのね。

でも、そんな、てんで穏やかでない喜怒哀楽のデコボコした日々を重ねていくうちに、きっと複雑で豊かな風合いの人生が織りなされていくんですよね。きっとね。デュアルライフは、デコボコの起伏を大胆にしてくれる暮らしですから。

さあ、今年も細かいことを気にせず伸びやかに元気に生きてまいろうと思います。

水仙の香りにつつまれるのも、13年目です。

水仙の香りにつつまれるのも、13年目です。

 

※本記事は、馬場未織氏の知識と経験にもとづくもので、わかりやすく丁寧なご説明を心がけておりますが、内容について東急リゾートが保証するものではございません。
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