八ヶ岳で “スタイル” のある田舎暮らしを実践している、友枝 康二郎さんのエッセイをお届けします。第9回は、八ヶ岳の暮らしの冬支度について。都会に比べればいろいろ手間暇はかかりますが、これも楽しみのひとつ、と言えるようです。
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八ヶ岳山麓での暮らしは、豊かな四季が魅力です。春夏秋冬、とても美しい景色を見せてくれます。
とくに八ヶ岳山麓の冬は、首都圏や都市部郊外から、2~3時間の距離ですが、カナダ、北欧に例えられる程、日本離れしています。
また、南麓、東麓、西麓で、冬の環境が全く違うと言えるほど変化に富んでいます。
南麓は、定住できる所が標高600~1,000m位に限られ、その為、積雪も少なく、気温も激寒にはならないので、過ごしやすいとも言えます。自然環境は、標高が低い分、都市部郊外に似た感じですね。
東麓は、日本の激寒地域の5つに入るほどで、真冬はマイナス30度にも達します。マイナス30度の世界は、ペットボトルから注いだ液体がそのまま凍り始めるそうです。
1月に仕事で東麓の小海町に行きましたが、途中、「八ヶ岳おろし」というブリザードが横なぶりに吹いてきて、完全にホワイトアウトになりました。車を停車して暫くやり過ごしたら、道が雪に埋まって無くなっていました。幸い、前に地元の軽トラックがいたので、その後ろを付いていき難を逃れました。
その後、南麓の大泉町のコンビニに寄ってコーヒータイム。東麓と違い南麓は晴れ渡っていて、ジャケットもいらないほど日差しが暖かく、さっきのブリザードが幻のように思えるほど小春日和! 東麓から20㎞しか離れていないんですが。
そして、夕暮れ時に、僕が住む西麓に入ると、南麓では沈んでしまった夕日が、まだまだ輝いている。西麓は西側の高地に位置するので、日没が遅いのです。
生える樹木まで凜とした東麓、里山の様に穏やかな南麓、そして北欧の様な針葉樹の森が美しい西麓!
僕の住む原村は、定住エリアが800~1,600mと標高差があります。低いエリアが地元民が住み、僕らの様な移住者や別荘族は標高の高いところに住むことが多く、僕の住んでいるところは、標高1,500m辺りです。なので、真冬の夜から朝にかけてはマイナス10度まで下がります。1月の下旬から2月中旬辺りはマイナス15度になることもあります。
こんな、まさに白銀の世界を快適に暮らすには、秋のうちに冬に備えることが大事です。
薪の調達と準備
まずは、寒い冬を快適に過ごす為の暖房である薪ストーブの燃料になる薪を確保すること!
一年中薪集めを出来れば良いのですが、雪が溶けて春になるとウキウキして日中は、この素晴らしい自然の中で遊びたくなってしまう。いつも準備は春を思いっきり楽しんでからになってしまいます。
さて、薪を調達するには、二種類あります。
まずは、買う。
これは、お金がかかりますが、一番簡単で気楽です。ただ、買うのも春から予約しておく必要があります。寒くなってからでは、その冬に使う薪は手に入らないので注意が必要です。何故かというと、薪は伐採して割って乾かすのに1年かかるから。
割ってすぐの薪は水分が多くて燃えにくく、無理して燃やすとタールが煙突に付着して危険です。
次に、自分で作る。
定住者の殆どは、自分で薪を作る事が多いです。事前登録が必要ですが、行政で間伐する材木を貰う事が出来ます。別荘を建てる時にも伐採をするので、伐採業者にお願いして分けて貰ったりと、皆さん色んなツテを見つけて原木を手に入れます。
チェーンソーで50㎝位にタマ切りして、それを斧で8等分くらいに割ります。庭に薪棚を作って1年乾燥させます。3年乾燥させた薪が最良とも言われているので、拘る方は庭中が薪棚になっている家も見かけます。しかし、借景は台無しになってしまうので、家の軒下や薪小屋を作って、乾燥させる薪、今年使う薪、と治めておいた方が良いです。
我が家は、建築端材を貰えるツテがあるので、毎年せっせと貰いに行きます。ガレージスペースの両側に薪棚を作ったので、そこに積みます。
ひと冬、湯水のように焚くには、早春にも何度か貰いに行きます。端材も、10㎝角あるので斧で割ったり、長さを整えたりします。
この作業も筋トレと思えば、一石二鳥で楽しくなります。そうそう、田舎暮らしの極意は、苦労を愉しむ事にあります。
薪ストーブのメンテナンス
冬の八ヶ岳の暮らしの醍醐味は、なんと言っても薪ストーブのある暮らしです。家の中にユラユラと燃える火は、都会では味わえない心地良さです。
その薪ストーブも、定期的なメンテナンスが必要です。通常は、自分でお掃除をする程度で良いのですが、3年に一度はプロにメンテナンスして貰う事が、薪ストーブを長持ちさせる事が出来て、火災などの事故も未然に防げますし、火力の安定にも繋がります。
原村には、「ストーブハウス」という老舗のストーブ専門店があります。ここに行くと、薪ストーブに関する備品や雑貨も売っていて、思わず新しいダッチオーブンや斧が欲しくなります。
庭の手入れ
晩秋になると、300坪ある庭の山野草も枯れてきます。それを放っておくと、春の芽吹きの時にあまり綺麗ではありません。
草刈り機で綺麗に刈ると、見栄えも良いですし、春には新芽が元気に育ってくれます。せっかく作った小道も、雑草に覆われて分からなくなったりします。
我が家の庭には、芝の種を蒔いている所があり、放っておくとモコモコになってしまいます。刈り揃えてやると、春には綺麗な芝生になっていきます。このワイルドな庭造りが我が家のスタイルです。
冬には、もちろん雪景色になり、植物は雪の下に埋もれてしまいます。
家の中に緑があると、冬の日々も癒やされます。なので我が家は、鉢植えの植物も育てています。
春から秋の初めまでは、庭に出して太陽の光をたくさん浴びて成長させます。そして、霜が降りる前に、サンルームへ移動させます。
しばらくは、ここで朝夕の寒さから守りながら、日中は温室という環境で育てます。本格的な冬になると、サンルームも夜にはマイナス10度になったりするので、その頃には、家の中に移動します。
アボガドを食べた後の種を水耕栽培したら、うまく育ってくれて、今では2mを越えるようになりました。こんな南国の植物も、室内は薪ストーブでポカポカなので問題無く越冬出来るのです。知り合いの人は、バナナの木を吹き抜けスペースで育てていて、スクスクと大きくなっています。
近い将来の夢は、2階からバナナをもいで食べることだそうです。夢があって良いですね!
スタッドレスタイヤ
八ヶ岳での交通手段は自家用車です。4WDである事は必至です。そして、雪の降る前にスタッドレスタイヤに履き替えることが大事なのですが、すり減るからと、なかなか履き替えない人がいます。それは辞めた方がいいですね。
雪が降らなくても、11月になると、朝夕は氷点下になり濡れた路面は凍ります。移住してこちらで勤めている方は、早朝に出勤するので、凍った路面に遭遇することになります。
特に日陰のコーナーが凍っていることが多く、スピンして道端の木に激突という事故が毎年あります。事故を起こされた方は、地元の方が殆どです。なので、自分の生活スタイルに合わせて、取り替えた方が良いのです。
僕は、早朝に車を運転することは無いので、履き替えのタイミングは、八ヶ岳の山頂に3度目の冠雪があってからです。地元では「八ヶ岳に3度冠雪すると里にも雪が降る」と言われます。これはほぼ当たります。
僕もすり減るのが惜しくて、ギリギリまで替えません。我が家には3台自動車があるので、3度目の冠雪があると、まず軽トラックを履き替えます。
そして、里に軽い積雪が来たら、後の2台を履き替えます。タイヤのメンテなどは、タイヤ専門のお店「タイヤガーデン ピットイン」にお世話になっています。
こうしたお店も、車社会の田舎ならでは!
軽トラックには、安くてすり減らない業務用のスタッドレスタイヤ。
妻がメインで乗るMiniには、とにかく安全性の高い高性能のスタッドレスタイヤ。
HONDA S660にも、スタッドレスタイヤを履かせます。ほぼRRの駆動なので、割と雪道にも強いんです。
冬の晴れた日に、オープンにして走ると幸せな気持ちになれますよ!
八ヶ岳は、自然の移り変わりをリアルに愉しむ事が出来ます。
晩秋の八ヶ岳は、広葉樹の紅葉も終わり、針葉樹が黄色く黄葉します。この黄葉した葉が全て落ちて枝だけになる頃、本格的な冬の到来になります。
さあ、冬が来る前に、諸々の備えを抜かりなく!
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9回に渡り、八ヶ岳での暮らしを綴らせて頂きました。
29歳でログハウスを建てて今年で30年。私なりに、住んでいなければ出会えない景色や事柄をお伝えしてきました。少しは、皆様のお役に立てたでしょうか?
今回が最終回となりますが、Comebackすることがあれば、また楽しい八ヶ岳ライフをお伝えしたいと思います。
本当にありがとうございました!
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