インタビュー 043_w840

リゾートが身近な生活、を満喫している方にお話を伺う「Villaの達人」シリーズ。今回は、スマホと組み合わせて手軽にVR(仮想現実)を体験できるサービスを提供するハコスコ」社の代表であり脳科学者の藤井直敬さん、同社共同経営者の恵子さんご夫妻の熱海の住居を訪ねました。

熱海駅から伊豆山に向かって車で坂を上ること10分。自然林に囲まれる小高い斜面に熱海の海を臨むよう建てられた住居は、一面が窓のまるでガラス箱のようなシンプルでモダンな一戸建て。世界的にも著名な建築家、手塚貴晴氏の研究所が2001年に手がけたこの住居と都内のマンションを拠点に暮らすご夫妻です。

その暮らしぶりは、働くためのインフラが発達した今だからこそ、固定観念にとらわれずそれぞれが住まいと仕事を存分に楽しむスタイル。これからの家族のあり方さえも示唆する、具体的なヒントの多い取材でした。前後編に分けてお届けします。

ドアを開けた先の赤いロビーと螺旋階段はまるでキューブリックの世界!

復元されたストイックなデザイン。建築という作品の中で暮らす

藤井恵子さん(左)、藤井直敬さん(右)のご夫妻。恵子さんは、旧姓の太田良恵子さんとしても活躍中

──まるで映画のセットのような空間ですよね。圧倒されます。今年の春にこちらに移られたと聞いていますが。

恵子さん:中古の住宅として購入したのが去年の夏ですね。築13年で、私たちはこの家の三代目になります。購入してから改修工事をして、移り住んだのが今年の4月です。

直敬さん:改修工事というより復元作業だよね(笑)。この物件はいろんなところで写真で紹介されていて、手塚貴晴さんという建築家の名前も出ていた物件。最初のオーナーがお金をかけてこだわって建てられた家だったんです。

恵子さん:でも住むとなるといろいろなところが劣化していて、不具合もでてきていて。手塚さんに連絡をとって修理したわけなんですが、二代目のオーナーの方は、自分の住みやすいようにカスタマイズもされていた。どうせなら、もともとのストイックなデザインに戻そうと、工務店さん、手塚研究所のみなさんと、ほぼ使命感のもと、復元したわけなんです。

直敬さん:次の人に渡すときがきたら、現状維持して元のまま渡さなきゃいけないという義務感もありましたね。

恵子さん:そうね。作品としてね。

二階から眺めた階下。ガラス戸、デッキや床の継ぎ目等々、すべてが1m間隔でデザインされています

──なかなか普通の家を買ってそういう気持ちにはならないですよね。

直敬さん:そうですね。これを自分が建てると思うと……、すごく大変だと思います。だから、こだわって作ってくれたこの家があってよかった、ありがとう、って気持ちです。

「このままでいいの?」激務の日々で湧いた疑問

──東京の原宿にもマンションがあると聞いてますが、こちらはセカンドハウスになるんですか?

直敬さん:僕にとって、ここはセカンドハウスだけど、家内にとってはメインハウス。僕は基本的に平日は原宿のマンションにいて、土日をここで過ごしているんです。いわゆる週末婚のかたちをとっていて、お互いがそれぞれ熱海と東京を行ったり来たりしているんですよ。

恵子さん:私は水曜日に会社の打ち合せで東京に行って、一泊する以外はこの家です。だから、私にとってメインハウスです。

──お二人それぞれの時間で過ごされているわけなんですね。そもそも熱海と東京の二拠点の生活をはじめたきっかけは何だったんでしょう?

恵子さん:もともと、今の東京の拠点でオフィスでもある原宿のマンションで暮らしていたんですが、賃貸なのでいつかは家を買おうと思っていて。出来れば畑が出来るような戸建の家が欲しかったんです。でも、そんなに急ぐこともないかと思っていたんですよ。主人がもうすぐ50歳で私は45歳ですが、「まあ、60歳とかのリタイヤのタイミングでいいか」と漠然と思っていたんですね。ところが、私の前職のネット系企業の新事業立ち上げが猛烈に忙しくて……。

──それは激務そうですね。

恵子さん:朝7時には家を出て、夜は終電、土日も仕事みたいな(笑)。さすがに去年の1月、「こんなことをしていいのだろうか?」と。そのお正月、たまたま熱海から30分ぐらいの根府川という場所で過ごしたんですが、そのとき「いやいや、このままではいけない」と改めて思ったわけです。これからの生き方の優先順位を考えたら、「私が前から欲しかった戸建てで畑もある家を買うと、きっと明日死んでも満足だ」と思うに至って、真剣に不動産屋で探しはじめたんです。そうすると、7月に「これは!」という物件が見つかった。ところが、問い合わせると “もう交渉に入っているから売れない” と言われて……。

直敬さん:それで拍車がかかったんだよね。「すごく悔しい!」って言って。それでいろいろ調べていたら2012年に売り出されたときの、この家のウェブページが残っていた。「この家が売りに出ているなら、すぐ買うのにね。2012年の情報だから残念」って言ってたら、家内が5分ぐらいしてダーっと走ってきた。「今、売りに出てる!」と(笑)。

リビング奥には琉球畳の和室が。チェロは直敬さんのもの「この家は鳴りがいいんです」

VRで内覧! 翌日には即決した物件との出会い

恵子さん:売り物件としてインターネットに公開されて2日目の情報を偶然見つけたんです。「これはもう、今すぐに買いに行かなければ。」と、20年来の静岡の不動産屋の友人に入ってもらって、翌日には物件を見に行って。

──それは、またすごいタイミング。出会いでしたね。

直敬さん:僕は用事があって見に行けなかったんだけど、図面と写真だけで「もう、これはよいものだ」と分かってたので、結局物件を見ないで買ったんです。家内がiPhoneのフェイスタイム機能で現地から画像を見せてくれて、「もう、いいからハンコ押せ」って(笑)。

恵子さん:ちなみに、私たちは「ハコスコ」というVRのヘッドマウントディスプレイを使うビジネスを行っているんですけど、そのときも主人はハコスコを使って、あたかもそこにいるように、フェイスタイムで私が案内して(笑)。

──バーチャルで物件に立ち会ったってことですか?

直敬さん:バーチャル内覧をしました。

恵子さん:「もっと右」「上」とか指示されてね(笑)。今のテクノロジーだと頭の動きに合わせて自然にライブでその方向が見えるんですけど、1年前の当時はまだそういうことが出来なかったからね。

編集部注:フェイスタイムとは、いわゆるテレビ電話。VRとは、ディスプレイが内蔵されたゴーグルを通して、人工的に現実感を作り出すシステム。

ハコスコ社のネコスタッフ、いずさん。「伊豆大島で保護され、もともと「いず」と名付けられていたので、伊豆山に住むことになったのは偶然」(直敬さん)

「今から行きます」東京と往復できるのが大前提

──エリア選びという段階もあったと思いますが、そのあたりのこだわりはあったんですか?

恵子さん:やはり、そのお正月に根布川で過ごして考えたというのが大きかった。私は静岡県出身なんです。だから、駿河湾があって、海があって山があって、傾斜に面したところに建っている家がいいなと思ってて。具体的には小田原、根布川、熱海ぐらいの範囲で探したいと思っていましたね。

──それなら、この家はすべて条件が揃っていますよね。仕事で東京を行き来することは最初から考慮されてたんですか?

直敬さん:それは大前提。往復できるという距離。

恵子さん:東京に仕事のミーティングするにしても、普通に「じゃあ、今から行きます!」というレベルのところがいいなと思っていました。そうなると、熱海は新幹線があるから便利なんです。

直敬さん:在来線から新幹線に乗り換えると、ちょっと通勤のハードルが上がる。熱海からだと、ここから原宿のオフィスまでドアtoドアで1時間半。僕が勤めている埼玉の理化学研究所ならちょうど2時間。2時間ならギリギリ我慢できる(笑)。しかも、僕は行き来は毎日じゃなくて、金曜日の夜と月曜日の朝の週に一回の往復だけ。それなら許容範囲なんですよ。

リビングと二階全景。お二人のお人柄が反映されるのか、エッジのなかにも温もりがあります

【オーナーインタビュー】「リゾート暮らしは、引退まで待つ必要なし」藤井さんご夫妻の場合 後編」に続く。

 

撮影:内田 龍

※本記事の情報は、公開当時のものです。以降に内容が変更される場合があります。
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