暮らし術

こんにちは。沖縄在住の編集者でセソコマサユキと申します。僕が「なぜ」移住をし、「どうやって」沖縄で暮らしているか、そんなことを紹介する当コラム。4回目では、「移住」をしたあと、どのように沖縄で仕事を生み出していったのか、というあたりのお話をしたいと思います。

編集者というやや特殊な仕事、という面もありますが、働き方が多様になってきている今、ひとつのカタチとして、参考にしていただけるのではと思いました。

 

移住後の仕事はノープラン?

最新の著作は4年前に発売した「あたらしい沖縄旅行」の、情報を更新した「新版」。

最新の著作は4年前に発売した「あたらしい沖縄旅行」の、情報を更新した「新版」。

移住前にしておくべきことの、大切なもののひとつが新天地での「仕事」の目星をつけておくことではないでしょうか? 自然がたっぷりで、深い歴史と魅力的な文化があって、どんなに理想の地域であっても、仕事がなければその場所で生活していくことはできません。移住を考える人にとって、大きな心配事のひとつであることは確かだと思います。もちろん、移住前に仕事の目星をつけておくことは大切。移住先を訪ねて、ハローワークに立ち寄ったり、求人誌を見て、その土地にどんな仕事があるか、給料の水準はどんなレベルかなど、知っておくとよいでしょう。会社員なのか、農家なのか、カフェを経営したいのか。どんな仕事をしたいか、というのは、移住先を決める上でも大切な要素です。

僕はといえば、会社員になるのか、フリーランスになるのかはわからないけれど、雑誌編集などを通して培ったクリエーティブのスキルを活かして、仕事をしていこう、ということだけは決めていました。ただ、ほとんど事前の就職活動のようなことをしなかったのは、雑誌などの紙媒体やwebサイト、イベントなどの編集やライティングを仕事にしていたので、そもそも東京以外ではそういった業種の就職先が少ないこともあるし、いっぽうで観光に力を入れている沖縄ではフリーランスで関われる制作の仕事がありそうだ、というような感触は持っていたからです。すでに同じような業種で生計を立てている知人がいた、というのも大きいかもしれません。ともかく、仕事についてはほとんどなんの準備もないままに、沖縄へと移住してしまったというのが実情でした。

 

ひととのつながりが、仕事を生んでいく

著書や編集を担当した書籍。「あたらしい旅行」シリーズはもはやライフワーク。自分の経験を生かした移住の本や、沖縄の企業「チューイチョーク」のコンセプトブックの制作も。

著書や編集を担当した書籍。「あたらしい旅行」シリーズはもはやライフワーク。自分の経験を生かした移住の本や、沖縄の企業「チューイチョーク」のコンセプトブックの制作も。

そんなわけで、最初の半年ほどはほとんど収入もなく、貯金を切り崩していく日々でした。結果論ですが、「まぁ、なんとかなるだろう」という楽観的な気持ちを持てたことが、いまにつながっているような気がしています。移住当初に何をしていたかというと、とにかく出歩くこと。自分の過去の実績をもって出版社などを回る、いわゆる「営業」も少ししました。でもそれ以上に価値があったのは、カフェやパン屋さん、観光スポットも含めてさまざまな場所に足を運び、沖縄での知見を増やし、ひととつながっていったことです。気になるカフェを見つけては足を運び、オーナーさんと話をしてさらにお勧めを聞いたり。もともとの知人たちは、僕が移住するとすぐに飲み会を開いてくれて、同じ業種の人、同じ価値観の人、いろんなひとを紹介してくれました。移住してからしばらくの間の、どんどん人とつながっていく感覚は、なんともいえない楽しさがありました。
 

県外からいただく仕事は主に雑誌。ガイドブックやライフスタイル誌など、沖縄取材の仕事を請け負う。

県外からいただく仕事は主に雑誌。ガイドブックやライフスタイル誌など、沖縄取材の仕事を請け負う。

実際、沖縄にはフリーランスの編集者、ライターにとってさまざまな仕事がありました。たとえば全国で発売される雑誌の「沖縄特集」やガイドブックでの取材・執筆。県内では雑誌だけでなく、観光プロモーションのためのチラシやwebサイトの制作などなど。ひととのつながりが広がっていくなかでいつしかそういった仕事の話をいただくようになりました。最初は確か、沖縄県内で販売されている観光情報誌での取材・執筆だったと思います。移住して1年後には、幸運なことに東京の出版社から著作を発売させていただくことができました。そういった実績がまた仕事を呼び、ということを繰り返し、ひとつひとつの仕事と向き合っているうちに、あっという間に4年の月日が流れた、というのが正直な感想です。

「あたらしい沖縄旅行」と「あたらしい離島旅行」はどちらもハングルと中国繁体字に訳され、韓国と台湾でも発売。自分の著書が海を渡るなんて、移住前は想像もしていなかったこと。

「あたらしい沖縄旅行」と「あたらしい離島旅行」はどちらもハングルと中国繁体字に訳され、韓国と台湾でも発売。自分の著書が海を渡るなんて、移住前は想像もしていなかったこと。

 

県内の仕事と、県外の仕事。

「おきなわいちば」と「uchina」という圏内の雑誌では連載を担当させていただいている。

「おきなわいちば」と「uchina」という圏内の雑誌では連載を担当させていただいている。

地方で仕事をしていくことのむずかしさのひとつに、賃金の低さがあると思います。実際にぼくが携わってきた編集・ライターの仕事を取ってみても、東京からいただく仕事と、沖縄からいただく仕事では、同じ仕事内容でも大きな差があるケースがあります。沖縄の仕事だけで生計を立てていくのは、かなり難しい、というのが実感です。そんな理由もあって、たとえばSNSで仕事の実績を積極的に発信したり、自分の名前がしっかりと明記されるような仕事を選んだりと、県外からも仕事をいただけるような努力を欠かさないようにしています。そんなわけで、仕事の割合としては現在は県外の企業さんからいただく仕事の方が多いぐらいになっています。それと、東京で仕事をしていた頃よりも、いろいろな意味で仕事の幅は広がったように思います。編集・ライティングだけでなく、撮影もするようになったし、撮影のコーディネートやトークイベントへの参加などの機会も増えました。また、北海道から福岡、離島、海外ではソウルなど仕事で訪れる街も多岐に亘ります。地方では東京ほどに分業されていないのと、人材が不足しているケースもあるので、「できることはなんでもやる」という雰囲気があります。原稿を書くだけでなく、編集からライティングまで広く経験をもっていた自分にとっては、それが好都合だったように思います。

 

気分転換に、絶景を見に。

ぼくにとってはすでに「生活の場」となった沖縄ですが、多くの人にとってはリゾートであり、観光地です。それはひるがえってみれば、日常のすぐそばに非日常があるということ。自宅で原稿を書いていて、ちょっと気分転換がしたくなったら、少し車を走らせたら、どこまでも水平線のひろがる絶景スポットにたどり着けたりします。夕方早めに仕事を切り上げて、近くのビーチで遊び、夕日を見ながらそのまま晩ご飯を食べることも。そうやって家族や自然に癒やされるたびに、沖縄に移住してよかったなぁと、思うのです。

近所のトロピカルビーチへ。日中は日差しが強いので、海に入るのは夕方から。夏から秋にかけての夕景はダイナミックで、いつまでも見飽きることがない。

近所のトロピカルビーチへ。日中は日差しが強いので、海に入るのは夕方から。夏から秋にかけての夕景はダイナミックで、いつまでも見飽きることがない。

そんなわけで、次回は移住して驚いたことや面白かったこと。沖縄での日常について少しお話ししてみようと思います。

 
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※本記事は、セソコマサユキ氏の知識と経験にもとづくもので、わかりやすく丁寧なご説明を心がけておりますが、内容について東急リゾートが保証するものではございません。
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