暮らし術

こんにちは。沖縄在住の編集者でセソコマサユキと申します。僕が「なぜ」移住をし、「どうやって」沖縄で暮らしているか、そんなことを紹介する当コラム。5回目では、神奈川から「移住」をしたあとの実際の暮らしぶり、日常について綴りたいと思います。

「ちゃんぷるー文化」の島、沖縄

赤瓦にシーサー、外人住宅、うつくしい海、見慣れない風景が、沖縄には広がっていた

赤瓦にシーサー、外人住宅、うつくしい海、見慣れない風景が、沖縄には広がっていた

沖縄という場所は日本のひとつの「地方」ではあるけれど、そのなかでもかなり個性の際立つ場所だと思います。琉球王朝という独立した国家として歩んだ時代があり、中国や薩摩の影響を受け、戦後、アメリカ統治時代を経て現在があることからもわかるように、さまざまな文化が入り混じっています。そんなふうに多種多様な文化を受け入れ、成長して来た沖縄の文化は「ちゃんぷるー(ごちゃまぜ)文化」なんて言われたりもします。実際、沖縄に来てみると、市場に東南アジアのような雰囲気を感じたり。外人住宅にアメリカの雰囲気を感じたりと、異国情緒を感じるひとも多いのではないでしょうか? 僕自身も沖縄に移住したころは街並みひとつとってもなんだか新鮮で良く散歩をしたりしていました。

自宅の周辺は、ゆったりとした住宅街。どこか懐かしさを感じる風景

自宅の周辺は、ゆったりとした住宅街。どこか懐かしさを感じる風景

ただ、だからと言って沖縄に住んでから、神奈川での暮らしとのギャップに苦しんだ、というようなことは、実はあまりありませんでした。それはぼくが暮らしたのは那覇市だったり、宜野湾市だったりという、沖縄の中ではわりと都会的な場所だったせいもあるかもしれません。ちいさな集落がそうであるように、地域の催事に参加しなければいけない、ということもなく、近所の人たちとの付き合いが濃密すぎる、ということもありませんでした。それでも、近所の子どもたちが玄関をノックして息子を連れ出して遊んでくれたりする風景に、どこか懐かしく、見ているとあたたかな気持ちになりました。

 

言葉と食材の違い

ハイビスカスは「アカバナー」。子どもと一緒に少しずつ沖縄の言葉を覚えていく

ハイビスカスは「アカバナー」。子どもと一緒に少しずつ沖縄の言葉を覚えていく

沖縄には「うちなーぐち」と呼ばれる方言があります。おじぃやおばぁで方言のきついひとがいると、移住して5年経ったいまでもほとんど聞き取ることができません。それぐらい「違う言葉」なんです。でも、いまでは逆に「うちなーぐち」を復活させようというぐらい若い人の方言離れが進んでいるので、普段は言葉で困ることもほんとんどありませんが、「○○さー」「だからよー」など、沖縄ならではの言葉遣いはあります。幼稚園に通う息子がそんな方言を使っているのを聞くと、両親はあくまで移住者だけど、息子はうちなーんちゅなんだなと感じて、なんだかおもしろいです。移住して来て戸惑った方言といえば「○○しましょうね〜」という言葉。そのままの意味で受け取ると”Let’s”の意味合いだと思ってしまうのですが、沖縄では「(自分が〕〇〇しますね」という意味。「帰りましょうね〜」と言われて、一緒に帰ろう、という意味なのかと思いきや、自分が先に帰るよ、というだけの意味だったのでちょっとドギマギしたりしました。

季節ごとの県産の野菜はたのしみのひとつ。トマトもおいしい

季節ごとの県産の野菜はたのしみのひとつ。トマトもおいしい

さて、沖縄にはおいしい食材もたくさんあります。都心と比べてしまうと種類が少ないなどありますが、日常の暮らしで困るようなことはありません。ただ、トマトやきゅうり、なすなどのいわゆる「夏野菜」が春にはもうスーパーに並び、いざ夏ころになると収穫が終わってしまう、という感じで、内地の季節感とはちょっとずれています。夏野菜が終わると、スーパーには全国各地の野菜が並びますが、ファーマーズマーケットは冬瓜ばっかりだったりします。もちろん、すごく値段の安い食堂だったり、低価格が売りのスーパーなどはありますが、食材だったり、日々暮らして行くなかでの物価は、沖縄という地方だからといって格別に安い、という体感は、実はあまりないのです。

 

先祖を敬い、身近に神さまがいること

浜比嘉島にある「シルミチュー」。どことなく厳かな空気が漂っているのを感じる

浜比嘉島にある「シルミチュー」。どことなく厳かな空気が漂っているのを感じる

沖縄で暮らしていると感じるのは、島の人々が身近に神さまを感じながら暮らしている、ということ。たとえば先祖崇拝だったり、暮らしを支えて来た水場に御嶽(うたき)があったり、台所には「火の神(ひぬかん)」がいたり、ものすごくざっくりいってしまうと、暮らしのいたるところで、目に見えないけれど、暮らしを守ってくれている存在に対して、感謝を表明しながら生きている、というようなイメージ。ぼくも沖縄に来てからは、たとえば外での撮影があったとき、その場所自体だったり、その近くにある御嶽に手を合わせて名を名乗り、「ご挨拶」するようになりました。特に信心深い方ではないのですが、それでも御嶽の前で手を合わせてから撮影すると、晴天に恵まれたり、良い結果を生むことが多いような気がしています。旧暦の催事はいまでも根強く残っていて、旧正月や旧盆には多くの人が仕事を休んだりします。「エイサー」(沖縄の盆踊り)や「ハーリー競争」も地元の人が大切にしているイベントのひとつです。複雑でときに困難な歴史を歩んで来た沖縄だからこそ、日々の感謝を忘れない心を持っているのかもしれない。そういうやさしい気持ちがあるからこそ、ぼくはこの島に居心地の良い、やわらかな空気を感じたのかもしれないな、と思いました。

 

沖縄を代表するソウルフード

こちらは朝のメニューの「宮古味噌のゆし豆腐そば」。朝からしっかり食べられる。

こちらは朝のメニューの「宮古味噌のゆし豆腐そば」。朝からしっかり食べられる。

「そば」といえば普通は日本そばのことですが、沖縄ではもちろんそばといえば「沖縄そば」のことです。日本そばが食べられるお店自体が少ないので時にちょっと寂しくなりますが、逆に沖縄そばのお店は豊富。いたるところに個性的で、おいしい沖縄そば屋さんがあります。なので移住してからは、沖縄そばを食べる機会がかなり増えたと思います。その中でも最近特にお気に入りなのが「Okinawa Soba EIBUN」。ほかの沖縄そばのお店とは違ってカフェのようなオシャレな店内。オーナーの才能溢れる個性的なメニューが魅力で、朝営業もスタート。旅の初めに、旅の終わりに、ぜひ立ち寄って欲しいお店のひとつです。

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※本記事は、セソコマサユキ氏の知識と経験にもとづくもので、わかりやすく丁寧なご説明を心がけておりますが、内容について東急リゾートが保証するものではございません。
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