暮らし術

今回のテーマは、「食」のトレンド。
前回、グローバルの超富裕層がどのように別荘の立地を選び、どのような物件が人気となっているのかについてレポートしました。今回は超富裕層たちがこうした別荘でどのような生活を送っているのか、「食」に焦点を当ててご紹介します。

そこでしか食べられないものを求める

高いクオリティの別荘ライフを過ごすうえで、食は最も大切な要素です。近年はその土地でしか食べられないユニークな料理を重視する傾向が強まっています。

日本でも高級すし店や、「一風堂」「一蘭」といった著名なラーメンチェーンが海外に進出して人気になっていると報じられています。また日本に限らず、世界の有名なレストランはこぞって海外に積極的に進出しています。ニューヨークやロンドン、香港、シンガポール、東京といったグローバル都市では、フレンチ、イタリアン、和食といったメジャーな料理であれば、どこでも最高レベルの料理が楽しめる時代です。
だからこそ、別荘ライフを過ごす超富裕層たちは、どこでも食べられる最高レベルの料理だけでは物足りず、その土地でしか食べられないユニークな食材や料理法が求めるようになっています。

 

「食」でも注目を集めているリゾート オーストラリア・ニュージーランド

投資永住権が取得しやすいオーストラリアやニュージーランドは、私のお客さまも何名か移住を検討しているほど人気が高い国です。食の面では、放牧スタイルによる高品質の乳製品や肉がたくさん作られていることに加えて、海産物にも恵まれ、さらに近年ではワインのレベルも上がっているため、注目されています。

私はオーストラリアではシドニーやサンシャインコースト、ニュージーランドではオークランドやワイヘキ島、ネルソンといった場所を良く訪れます。例えばオセアニアで広く食べられる生ガキ一つをとってみても、各地で風味やサイズが異なって、日本のカニのように産地ごとに多様な楽しみ方ができます。
それぞれの特徴にどのようなワインがあうのか、色々試すだけでも様々な組み合わせが考えられて、何度も訪問する際の楽しみとなっています。

Auckland1

「ビオワイン」が注目されているのも同じ理由からです。ビオワインは無農薬で育てられたブドウを、天然の酵母を使って醸造し、瓶詰の際にも酸化防止剤をなるべく使わずに作られているものです。ブドウが育った土地の特徴が最大限ワインに反映され、各地のユニークな風味を楽しめます。
また、ビオワインは次の日にお酒が残りづらいと言われていて、アクティブな別荘ライフを過ごすうえでもよいでしょう。

 

世界一に選ばれたリゾート ニヒワトゥ

オーストラリアやニュージーランドだけでなく、最近訪れたインドネシアのスンバ島にあるニヒワトゥというリゾートでも地場の食材がふんだんに使われた料理が楽しめました。
ニヒワトゥは、ファッションブランド「トリーバーチ」の創業者でビリオネアのクリストファー・バーチ氏が私財を投じて、世界的なリゾートへと成長させました。米国の著名な旅行雑誌であるTravel + Leisure誌の2017年のリゾートランキングでも世界一に選ばれています。

現地の文化やコミュニティを尊重するというコンセプトから、ホテルの前のビーチで現地の人が漁をするのを認めていて、獲られた魚の一部はそのままホテルに持ち込まれて、レストランで新鮮な状態で食べることができます。
ニヒワトゥには、高級アジアリゾートの最近のトレンドであるプライベートレジデンスが併設されていますが、こうした別荘に滞在している人たちもホテルのレストランを訪れて、ホテルのゲストたちと一緒に食事を楽しんでいました。

Sumba

スンバ島空港から悪路を含めて車で2時間も掛かる秘境に位置しますが、地産地消の食でこれほどユニークな体験ができるとなれば、わざわざ辺鄙な場所まで訪れたり、この地が気に入れば別荘を購入したりすることも十分に納得できます。

 

名店も進出先で進化する

日本人が海外に別荘を購入する場合の不動の1位であるハワイにも、最近海外で取れた魚しか提供しないというコンセプトで、東京の名店「すし匠」がワイキキのザ・リッツ・カールトン・レジデンスに出店して、現地の別荘保有者の間でも話題となっています。
ワイキキという立地であれば、日本から高級な食材を取り寄せても十分ペイするでしょうが、世界中ですしが人気となって、高級魚の高騰が続いている中で、ハワイや米国西海岸の魚を中心に新たなスタイルで提供することで、すしという食べ物をサステイナビリティあるものとしたいという大将の心意気は海外でも高く評価されているようです。

東南アジアでも海外の富裕層から高い評価を得ている高級すし店は増えていますが、日本から食材を取り寄せている所がほとんどです。今後、ニヒワトゥやワイキキの「すし匠」のような地産地消の試みが、東南アジアの日本食店でも広がるのか注視していこうと考えています。

 

日本の別荘地に「食」で求められていること

別荘を所有して頻繁に訪れるのであれば、いくら高級食材が使われていても、どの都市でも食べられる料理だけでは飽きが来ます。近隣の土地を移動しながらどのように食材が異なるのか、吟味しながら食を楽しむのは、別荘を所有しているからこその楽しみ方でしょう。

このようなトレンドを踏まえて日本の別荘リゾート地を分析してみると、食の面で、さらに一歩踏み込んで考える必要があるのでは、と思います。

昨年末に関東地方のあるリゾート地のホテルに家族で滞在しました。外資系のホテルなので、世界中からゲストが集まっていて、暖炉があるロビーでは子供同士が一緒に遊んだことで、色々な国からの旅行者と知り合いになりました。
話をしていて驚いたのが、みなさんの食に対するこだわりの強さです。このホテルではディナーがフレンチとすし懐石から選べるようになっていますが、海外からのゲストのほとんどがフレンチを選んでいました。食べ慣れているからと思いましたが、仲良くなって話していると、ほとんどの旅行者が既に東京の名店ですしを食べてからこの地に来ているからだと知りました。もしここでしか食べられない、ユニークでクオリティの高い食があったなら、きっとそちらが選ばれていたことでしょう。

前回、世界的な大富豪の何人かが軽井沢に100億円以上という途轍もない規模の別荘を建てていることを紹介しました。軽井沢では地元で育てた有機野菜をふんだんにつかったフレンチやイタリアンの名店が数多く存在します。同じく海外の超富裕層が数多く別荘を持つニセコなど北海道も、特に冬の海の幸が近隣の都市で楽しめるということで人気となっていることは、この地に別荘を持つシンガポールの知人と話していても感じます。
その他の日本のリゾート地が別荘を持つ場所として世界的に人気となるには、ユニークな食体験がカギとなってくると見ています。

次回は、別荘でどのようなアクティビティが好まれるのかについて紹介します。

 

※本記事は、岡村 聡氏の知識と経験にもとづくもので、わかりやすく丁寧なご説明を心がけておりますが、内容について東急リゾートが保証するものではございません。
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