暮らし術 DSC_0740

はじめまして! 伊豆半島在住でフリーライターとして活動している小林ノリコと申します。
日本名水百選のひとつ「柿田川湧水群」の清水で産湯をつかい、伊豆半島の自然と歴史に育まれ成長してまいりました。Uターン帰郷後、2005年にフリーライターとして活動をはじめ、2015年から熱海市を拠点として活動しています。ローカル民ならではの、伊豆・熱海で暮らすことの楽しさや魅力を、この連載でお伝えしていきたいと思います。

熱海を活動の拠点に決めた理由

まず、なぜ熱海を拠点に選んだのかをお話ししたいと思います。
10年ほど前までの熱海は(失礼を承知で言いますと)いわば“終わった観光地”でした。
しかし、自治体や地元の方の努力でここ数年、観光客の数が増加し、活気が少しずつ戻ってきました。オシャレなバーやカフェ、雑貨店なども増え、ショッピングビルを備えた駅舎もリニューアルオープン。テレビや雑誌への露出も手伝って賑わいがどんどん広がっています。
でも、駅周辺や観光名所から離れた場所へ行くと、まだまだ人が戻ってきたとは言えません。熱海駅から15分ほど歩いた場所にある「熱海銀座商店街」もそのひとつ。そこで活動している街づくり会社の運営で、ゲストハウスやコワーキングスペースがオープンするという情報を知り、ゲストハウス内装のペンキ塗りイベントに参加しました。

オープン前、内装工事中のゲストハウス。現在では国内外から宿泊客が訪れています。

オフシーズンの商店街は人影こそまばらですが、盛り上げようと頑張っている商店街の人たちの熱い気持ちが、私の心をグッとつかんではなさなかったのです。また、街づくり会社のスタッフやコワーキングスペースに集う人たちがユニークで個性的。彼らの街づくりに対する考え方が、私の考え方に合っていること。そして、熱海で開催されるさまざまなイベントに参加していく中で、この街が可能性を秘めた場所だと感じたこと。木を太く大きく育てたいなら土壌のよい場所を選べ……ということで、活動の拠点に決めました。

熱海だけでなく、伊豆の各市町にコワーキングスペースやコミュニティスペース(またはそれらに準ずる場所)が点在しています。伊豆は観光地としてだけでなく、住んでよし・働いてよしの街に発展していこうとしています。
移住したい・拠点にしたい場所があるなら、一度、地元の人たちとふれあうことができる施設を訪れてみてはいかがでしょうか。まずはきっかけを見つけて、一歩踏み出すことが大事ですよ。

熱海のコワーキングスペース。一人分のスペースが広く、メンバーとちょうどいい距離感で仕事ができる。

 

その街を知るため、最初にやったこと

帰郷した頃は、今のように毎週末、伊豆のどこかで街おこしイベントが開かれているわけでもなく、移住や多拠点居住についても盛んではありませんでした。
故郷を飛び出した18歳の記憶のまま帰郷したものですから、見知らぬ土地へ移住してきたのと同じような状態。仲の良かった同級生はみんな地元を離れているので、頼る知り合いもいませんでした。
地元を走る道路の通称を言われてもわからない、施設や店の名前を言われてもどこにあるのかわからない。そんな童謡「犬のおまわりさん」の“子猫ちゃん”のような状態から、まずは行動範囲を広げるために車の運転を練習し、地元の「道路」を知ることから始めました。

桜の季節の三嶋大社は大勢の観光客で混雑するが、桜を独り占めできる朝の散歩は地元の人だけの特権。

人間の生活に必要なのは「衣・食・住」だと言いますが、地方へ移住する場合はまず「車・職・情(報)」、この3つを手に入れるということに尽きると実感しました。
その頃はアルバイトをしながら、以前勤めていた東京の編集プロダクションや、東京にいた頃のつながりで仕事をいただき、「リモートワーク」のようなことをしていました。
それでも「書いて生きていきたい」「書くことで身を立てたい」という思いで、ようやく地元に居ながら「書ける場所」を見つけることができたのが2005年頃。
畑違いのグルメ系の仕事がほとんどでしたが、伊豆半島から静岡県東部、箱根までの観光地や飲食店をくまなく取材しました。地元の方々とお話しするなかで、「自分が住まう地域で今、何が起きているのか」ということをつぶさに知ることができ、これが今の仕事で大いに役立っています。おかげさまで、取材した施設やお店は約10年間で1,500軒を突破しました。

さまざまなアクティビティが楽しめるサービスが伊豆半島の各所にある。

 

インターネットやSNSが発達した世の中だからできること

以前は、主に「地元の人に向けた地元情報の媒体」の仕事をしていましたが、ここ数年でスマートフォンでの情報収集やコミュニケーションが主流になり、手のひらの上で仕事から情報のやりとりまで完結できるようになったお陰で、地元以外から仕事の依頼が増え始めたのです。
仕事以外でも、県外(特に首都圏)の方から「地元の人が食べているものが知りたい」「地元の人が行く場所へ行きたい」「伊豆に住んでいるの?観光地に住むってどういう感じ?」という質問やアドバイスの要望が増え、「観光地のマクロな情報を多くの人が求めている」ということを肌で感じる機会が多くなりました。

モナコの港と見まごう、熱海親水公園付近の遊歩道。朝早くから散歩やランニングを楽しむ人が行き交う。

「ノマドワーカー」「リモートワーク」「多拠点居住」という自由な働き方・生き方を提唱するムーブメントが起こったことも、私にとってまさに「渡りに船」。「移動しながら仕事をする」「会社にいなくても仕事ができる」「地方に住んで自分の仕事を作り出す」という生き方は、今まで私がやりたいと思ってきたこと。それは夢のような理想の暮らしではなく、一歩踏み出す勇気さえあれば、誰でも実現できる世の中がやってきたのです。

しかも伊豆は交通の便が良く、三島駅や熱海駅からは、新幹線を使えば1時間以内。在来線でも2時間以内で首都圏へ出ることができます。東京で打ち合わせがあっても、すぐに対応することができます。
また伊豆縦貫道の建設が進み、東名や新東名へのアクセスがスムーズになりました。三島市や熱海市にお住まいで首都圏へ通勤しているという方は大勢いらっしゃいます。

新幹線・在来線・特急列車・高速バスと移動の手段が選べるので、乗り物好きにはうれしい限り。

 

帰郷した理由と、私ができること

私が帰郷することになったのは、仕事がちょうど楽しくなり始めた20代後半。
その理由は、祖父の看病のため。幼い頃からおじいちゃん子だった私は、人生の節目ごとに祖父から励ましやアドバイスを受け、たくさん支援をしてもらいました。自分の夢をかなえるまで伊豆に帰らないつもりで上京を決めた身でしたが、それでも祖父と家族で残り少ない時間を一緒に過ごしたいという気持ちが強く、思い切って帰郷することにしました。夢半ばで東京での仕事を辞めることは、本当に辛くて苦しい決断でした。

東海岸は朝日、西海岸は夕日が美しい。伊豆の美しい自然に魅せられて移住して来る人も少なくない。

現在、私は40代になりましたが、同年代の方のなかには、親のことや子供のことも含めて、これからの過ごし方について考える方も多いのではないでしょうか。もちろん、「趣味や勉強のために」「より暮らしやすい環境を求めて」「ゆったりとした人生を過ごしたい」といった方も多いでしょう。私も、そんな方々を大いにバックアップしたいと思っています。同時に、両親や家族に寄り添って生きていきたい方々のために、私の経験を活かして何かお手伝いできないだろうか……といつも考えています。

伊豆半島は交通を始め生活面での利便性がよく、現在の仕事や生活スタイルをほとんど変えることなく、自由な生き方・働き方が実現できる場所。
これから、伊豆での暮らし方やグルメ、レジャーなどの情報のほか、実際に移住してきた人・多拠点居住を実践している人へのインタビューを通して、伊豆暮らしの魅力をお伝えしていきます。

 
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※本記事は、小林ノリコ氏の知識と経験にもとづくもので、わかりやすく丁寧なご説明を心がけておりますが、内容について東急リゾートが保証するものではございません。
※本記事の情報は、公開当時のものです。以降に内容が変更される場合があります。
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