こんにちは。アトリエ137の鈴木です。今回のテーマは、2階建てです。
別荘を計画するにあたって、敷地(面積)がもう少しほしい、隣家がせまっている、間口と奥行のバランスが悪い(間口が狭く、奥行が深い)など、思ったように建てられないと悩んでいるかたも多いのではないでしょうか。そんなかたには2階建てもおすすめです。2階建ては平屋と比べ建物の高さがでますので、ボリュームを感じさせない造形や仕上げ、色など、景観への配慮がとても大切になってきます。
シンプルなハコ型2階建ての例
シンプルな箱にしたい!そんなご要望も多くいただきます。人気は白いハコ型ですが、同じハコ型でも、板張りの外壁は森のなかにしっくり馴染みますし、木のやさしさやあたたかみを感じることもでき、時の流れとともに味わい深いものになっていく様子はとてもよいものです。
事例:長野県軽井沢Iさんの家
軽井沢など、地域によっては景観条例によって屋根勾配や軒の出が規定されているところも大きく、純粋なハコ型を実現できないこともあります。こちらの別荘も純粋なハコ型ではありませんが、白いハコ型の典型的な事例と言えると思います。
敷地は南北に長いだけでなく、北側へと細くなっていき、南に面する空間をとりにくい形状をしています。ここに必要なボリュームをどう納めるかが課題となりました。
西側隣地には借景となる自然が残っているため、南向きにこだわらず、吹抜けとなるLDKの大きなガラス面が西側の借景を大きく取り込むプランとすることで、森に開かれた別荘としています。
事例:長野県軽井沢Tさんの家
大きなハコと小さなハコによる造形的な特徴をもたせながら、板張りの外壁をスマートに見せるデザインでモダンな印象を与えています。
計画のポイントは敷地内の建物の位置。敷地は東西に長く、南向きの間口がとりやすい形状をしていますが、南北の幅が狭く、南側の隣家もせまっていたため、南側に庭を残して、そちらに建物を向けるには抵抗がある広さでした。そこで、敷地の北東側にできるだけ建物を寄せることで、西側に広がる原生林を残し、南側の安定した太陽の光を取り込みながら、西側の景観を活かすプランとしています。吹抜の大きなガラスが風景と光を取り込んでくれます。
三角屋根に特徴を持たせた2階建ての例
三角屋根のよいところは、建物両端の軒先が低くなるため、全体的なボリューム感をおさえられるところです。自然豊かな景観にも馴染みやすく、安心感のあるデザインです。
ただ、いわゆる「家」という印象の強い三角屋根は、平凡すぎて特徴のないものとなってしまいがちですので、何かひと工夫ほしい造形でもあります。
事例:長野県諏訪郡 原村Tさんの家
同じ三角屋根でも下見板張りの外壁は、カントリー調になりがちです。この事例では、軒のバランスや窓の取り方によって、モダンなファサードをつくり出しています。駐車スペースの屋根をキャンティレバー(片方に柱がない構造)で構造解析を行い、またドーマー窓の形状や窓上に三角形の庇をデザインすることで、少し違った表情を加えています。
*下見板張り:板張りも「縦に張る」「横に張る」でずいぶんと印象が違います。下見板張りはただ板を横に張るだけでなく、上の板が下の板に重なるように張っていきます。鎧張りとも呼ばれています。
事例:長野県軽井沢Tさんの家
和のテイストを感じさせるような色使いが印象的なTさんの家。長手方向に三角屋根をかけることで、同じ三角屋根でも視覚的な変化のあるものとしています。これによって、吹抜けとロフトのような空間を効率よく生み出すこともできます。また、隣家がせまっているため、壁を上手にレイアウトしながら、お隣の樹々が見えるところにガラスをしつらえています。
借景を取り込んだ2階建ての例
自然が多い別荘地は、家の景色の一部として周りの風景を取り込める利点があります。
事例:長野県軽井沢 カルイザワハウス
隣家も近く、敷地もそれほど広くないため、LDKなどのメインとなる空間を2階とすることをご提案しています。LDKを2階とすることで、周囲の視線をあまり気にすることなく、ガラス張りの空間にしたり、敷地の北側を流れる小さな川のせせらぎを借景として積極的に取り込んでいます。2階レベルでは樹々の葉が目線にくるため、借景の効果もより大きくなります。
事例:長野県軽井沢 YTさんの家
南側隣家の屋根越しに見える樹々を借景として取り込んでいます。2階をリビングにすることで、お隣でなく敷地の少し先の風景までも借景として楽しむ空間を実現できています。
ツートーンの2階建ての例
1階と2階で外壁の仕上げを変えることができるのも2階建てならではのデザインです。
事例:長野県軽井沢 Tさんの家
比較的傷みにくい2階部分を板張りに、泥はねなど汚れやすい1階部分を黒い樹脂系の吹付で仕上げています。外観のデザインだけでなく、経年変化などにも配慮したものとしています。
◆ ◆ ◆
2階建てなら、同じボリュームでも、敷地の余白を多くつくることができます。この余白を庭としてしっかり確保して、森を楽しむ別荘にしたいですね。
1階と2階の目線の高さの違いも楽しみのひとつとなるかもしれません。「2階はゲストの宿泊スペース」と考えがちですが、ぜひご自分たちが楽しむためのスペースとしても考えてみてはいかがでしょうか?
写真提供:アトリエ137 一級建築士事務所