税理士さんにお話を伺い、別荘購入にかかる税金について正しい知識を学ぶ当連載企画。
第1回では、別荘に関する課税の全体像を把握するために、購入時・維持・売却時の3つの課税タイミングに分けてそれぞれの概要を説明して頂きました。連載2回目の今回は、その中から、別荘ライフのファーストステップ「購入時」の税金について、前回同様、根岸先生に教えて頂きます。
別荘購入時に掛かる税金は、「印紙税」、「登録免許税」、「不動産取得税」の3つです。まずは、最初に支払うことになるであろう「印紙税」からみていきましょう。
1. 印紙税
印紙税とは、契約書・受取書などの「証明」に課税される税金です。不動産取引では、売買契約書や建物の建築請負契約書、ローン借入れのための金銭消費貸借契約書等が課税文書になります。税額は、契約書の記載金額によって決定します(表1参照)。なお、平成30年3月31日までは、不動産売買契約書及び工事請負契約書にせられる印紙税に対し、軽減税率が適応されています。印紙税の納付は、収入印紙を契約書に貼り、それを消印することによって完了します。
(表1)
記載金額 | 不動産売買契約書 | 工事請負契約書 | 金銭消費貸借契約書 |
---|---|---|---|
10万円以下のもの | 200円 | 200円 | 200円 |
10万円を超え 50万円以下のもの |
200円 | 200円 | 400円 |
50万円を超え 100万円以下のもの |
500円 | 200円 | 1,000円 |
100万円を超え 500万円以下のもの |
1,000円 | * 200~1,000円 | 2,000円 |
500万円を超え 1千万円以下のもの |
5,000円 | 5,000円 | 10,000円 |
1千万円を超え 5千万円以下のもの |
10,000円 | 10,000円 | 20,000円 |
5千万円を超え 1億円以下のもの |
30,000円 | 30,000円 | 60,000円 |
1億円を超え 5億円以下のもの |
60,000円 | 60,000円 | 100,000円 |
* 200万円以下のものは200円、300万円以下のものは500円、300万円超~500万円以下のものは1,000円。
2. 登録免許税
土地や建物を建築したり購入したりしたときに、所有権保存登記や移転登記などをします。この登記をする際にかかるのが、登録免許税です。
登録免許税を支払うタイミングは、登記を行う時となります。実際には、決裁が行われた日に、司法書士の先生が登記する事がほとんどです。
不動産業者から諸費用の案内が渡されますが、その中に登録免許税や、司法書士報酬などの費用が示されています。
登録免許税は、固定資産税評価額をもとに計算されます。
<登録免許税の計算>
登録免許税 = 固定資産税評価額 * × 税率
* 固定資産税評価額…総務大臣が定めた固定資産評価基準に基づいて、市町村が個別の土地・不動産に対して策定した評価額のこと
【POINT】新築か中古かで登記が違う
登録免許税は、新築物件か、中古物件かによって登記方法が異なり、登記にかかる税額の計算方法も異なってきます。
新築の場合には、「所有権保存登記」。計算式は以下の通りとなります。
登録免許税=法務局の認定価格(土地+建物) × 1000分の4
中古の場合には、「所有権移転登記(土地と建物にかかる)」。計算式は以下の通りとなります。
登録免許税:
・土地=固定資産税評価額 × 1000分の15(平成29年3月31日まで)*
・建物=固定資産税評価額 × 1000分の20
* 平成29年4月1日以降は「× 1000分の20」
では、次に不動産取得税をみていきましょう。
3. 不動産取得税
不動産取得税とは、所得に関係のない資産課税です。前回も述べましたが、自動車を取得した時に払う自動車取得税と同じです。売買・贈与で不動産を取得したとき、また新築・増築したときに都道府県が課税する地方税です。建物と土地にそれぞれ課税されます。
別荘を購入(登記)されると、半年~1年半くらいの間に各都道府県から「納税通知書」が送られてきます。納付期限は通知を受けてから2カ月くらいです。まとまったお金が必要になるので、注意しておきましょう。
不動産取得税の税額は以下の計算で求められます。
<不動産取得税の計算>
土地・建物の税額 = 固定資産税評価額 × 4%
ただし、現在、不動産取得税には特例が設けられており、以下の場合、標準税率が軽減されます。
土地及び住宅にかかる税率3%(平成30年3月31日まで)*
不動産取得税について、新築物件の場合・中古物件の場合に分け、それぞれの軽減税率について説明していきましょう。
* 店舗や別荘など、住宅以外の家屋は対象外となります。
3-1. 新築住宅に関する、不動産取得税額の軽減(建物・敷地)
新築物件にかかる不動産取得税額の軽減について、建物にかかる税額、および土地にかかる税額の特例をそれぞれ説明していきましょう。 まずは建物にかかる税額の特例です。新築の建物では、固定資産税評価額がなんと1,200万円も軽減されることがあります。
建物の特例:
不動産取得税 = (固定資産税評価額 - 1,200万円) × 3%
【POINT】建物にかかる税額は実質0円のことも!
建物の固定資産税評価額は低く設定してあることが多く、実際の売買価格の半値くらいとなっていることが多いです。固定資産税評価額から1,200万円を引くと、建物にかかる不動産取得税は実質0円になることも少なくありません。
この特例が認められるためには、大きく2つの条件があります。1つは「住宅」であること、つまり別荘所有においては「セカンドハウス」としての条件を満たすことです。
セカンドハウスとは、「週末に居住するため郊外等に取得するもの、遠距離通勤者が平日に居住するために職場の近くに取得するもの」を指し、「毎月1日以上居住の用に供するもの」とされています。自治体によって、セカンドハウスの要件が多少異なりますが、例えば月に1回、週末に購入した別荘で生活し、そこから仕事場に向かうといったことで、要件が満たされる自治体もあります。なお、軽減の特例を受けるには、詳細は自治体によりますが、不動産取得税申告書に居住用である旨を記載し、それを証明する水道光熱費等の書類を付けて、提出することになります。
そして、もう1つの条件は、課税床面積が、50㎡以上(戸建以外の貸家住宅は1戸当たり40㎡以上)240㎡以下であることです。建物に関しては、上記を満たせば、軽減の対象になります。
続いて土地にかかる税額の特例についてです。
固定資産税評価額が1/2になり、さらにそこから控除が受けられることがあります。 *
* 土地の固定資産税評価額が1/2になるのは平成30年3月31日まで
土地の特例:
不動産取得税 = (固定資産税評価額 × 1/2 × 3%) - 控除額 *(AかBの多い金額)
* 控除額
A:45,000円
B:(土地1㎡当たりの固定資産税評価額 × 1/2) × (課税床面積 × 2(200㎡限度)) × 3%
土地の特例が認められるには、以下の3点を満たす必要があります。
- 前述した「建物」の特例の要件が満たされること
- 土地を先行して購入した場合、3年以内に建物を新築すること
- 土地を借りるなどして、建物を先に建てた場合は、新築1年以内に土地を取得すること。
では、次に中古物件の軽減税率をみていきましょう。
3-2. 中古住宅に関する、不動産取得税額の軽減(建物・敷地)
中古物件についても、新築物件同様に、建物にかかる税額・土地にかかる税額の特例について、それぞれ説明していきます。
建物の特例:
不動産取得税 = (固定資産税評価額 - 控除額 *) × 3%
* 特例適用には、自治体によってその他の要件が指定されていることがあります。
新築物件と違い、中古物件は築年数により控除額が違います。控除額は、各都道府県によって若干の相違があります。詳しくは、不動産所在地の各都道府県税事務所にご確認下さい。以下は参考として、長野県の控除額の例です。
(例)長野県の控除額
▼新築された日 … 控除額
S56.7.1~S60.6.30 … 420万円
S60.7.1~H元.3.31 … 450万円
H1.4.1~H9.3.31 … 1,000万円
H9.4.1~ … 1,200万円
この特例を受けるためには、新築住宅と同様にセカンドハウスであること、課税床面積が、50㎡以上(戸建以外の貸家住宅は1戸当たり40㎡以上)240㎡以下であることに加え、昭和57年1月1日以後に新築されたものであることが要件となります。ただし、新築年月日が昭和57年1月1日より以前でも、建築士等が行う耐震診断によって「新耐震基準」に適合していることの証明がされた場合は、この要件に該当します。
一方、土地の軽減税率については、新築住宅と同じです。
建物の特例:
不動産取得税 = (固定資産税評価額 × 1/2 × 3%) - 控除額 *(AかBの多い金額)
* 控除額
A:45,000円
B:(土地1m2当たりの固定資産税評価額 × 1/2) × (課税床面積 × 2(200m2限度)) × 3%
特例適用の要件は、以下の3点を満たす必要があります。
- 前述した「建物」の特例の要件を満たしていること。
- 土地を先に取得した場合は、取得から1年以内にその土地上の建物を取得すること。
- 土地を借りるなどしてその土地上の建物を取得した人が1年以内にその土地を取得すること。
購入時にかかる税金、及びその特例(軽減税率)についてのまとめ
概 要 | |
---|---|
印紙税 | 詳細は表1を参照。 |
登録免許税 | 【新築物件の場合】 法務局の認定価格(土地+建物)×1000分の4 【中古物件の場合】 ・土地=固定資産税評価額×1000分の15(平成29年3月31日まで *) (* 平成29年4月1日以降は、×1000分の20) ・建物=固定資産税評価額×1000分の20 |
不動産取得税 | 【新築物件の場合】 ・建物の特例 不動産取得税 = (固定資産税評価額 - 1,200万円) × 3% ・土地の特例 不動産取得税 = (固定資産税評価額 × 1/2 × 3%) - 控除額 【中古物件の場合】 ・建物の特例 不動産取得税 = (固定資産税評価額 - 控除額)× 3% ・土地の特例 不動産取得税 = (固定資産税評価額 × 1/2 × 3%) - 控除額 |
* 特例適用の条件についてはそれぞれ前述を参照。
今回は、別荘取得時に掛かる税金をみてきましたが、ポイントは、セカンドハウスとして認められるか否かです。セカンドハウスと認定されれば、税制面では軽減措置を受けることもできます。
税金の知識を頭に入れておくことで、より充実した別荘のある生活が過ごせそうですね。
次回は、別荘の「維持」に関する税金についてご紹介します。
監修
根岸 新
根岸税務会計事務所・所長代理。大学卒業後、新宿の高田馬場に事務所を構える同税理士事務所に入社。3代目として、所長代理を務める。ホームページでは「親子間のお金の貸し借り」や「ふるさと納税」といった気になるトピックスをわかりやすく解説するなど、「何でも相談されて、何でも答えられる税理士」を目指している。
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