暮らし術 201802_061

1年を通じて、温暖な気候の熱海は、移住される方も多くいます。神奈川県川崎市から南熱海に移住した中屋香織さんもその一人です。
もともとは東京で不動産のお仕事をされていましたが、ご病気になったことや子育てがきっかけで自分と向き合い、「自然に囲まれた環境で暮らす方が、自分らしい」と移住を決意されました。
「子どもが小学校に上がる前には絶対に引越ししたいと思っていた」という中屋さんは、お勤めをしながら移住先を探し、南熱海に住宅を購入後は川崎と南熱海を往復しながら、自宅を自らリノベーションしてお住まいになっています。
今回は、南熱海の高台にある、リビングや庭のウッドデッキから南熱海の街や相模湾を一望できる中屋さんのご自宅へうかがい、移住するまでのお話をお聞きしました。

 

その街や自然を五感で感じられる場所が好き

キッチンとつながるリビング・ダイニングから見えるのは、南熱海の絶景

キッチンとつながるリビング・ダイニングから見えるのは、南熱海の絶景

── ご家族で移住される方は、家族全員の意思の確認がいちばん大変だと聞きます。中屋さんの場合はご家族をどのように説得されたのですか?

じつは、夫はもともと移住にも田舎暮らしにも全然興味がなくて、この移住にも賛成はしていないし、反対もしていないんです。私もとくに説得はしませんでした。
ただ、趣味が音楽やバイクなので、移住先ならそれらが全力で楽しめることをアピールして、不安材料を消しながら、少しずつ気持ちを移住へ傾けていきました。
決定的だったのは、南熱海の地域の小さなお祭りでの出来事ですね。そこに集まっている地元の方たちがとても気さくで、まだ移住もしていない私たちをよそ者扱いせずに、本当に、ごく自然に仲間に入れてくれたんです。
移住したいということを相談したら、『東京の勤務先に毎日通っているよ』という男性が隣に座っていたんです。新幹線通勤に抵抗があった夫は、実際に通っている人の話を聞いて、とても納得したみたいで(笑)。夫の会社の社長や上司も理解のある方で、すんなりOKを出してくれたので、移住の実現に一歩近づくことができました。

── 最初は、やはり住みたい場所から決めたのですか?

まず『毎月の住居費をいくらにするか』を決めました。『いくらの物件が買えるか』『いくらの支払い能力があるか』ではなく、理想のライフスタイルを実現するためには、住居費を毎月いくらまでに抑えたいか。長いスパンで見て、自分たちの年齢やライフスタイルのことを考え、毎月支払い可能な金額を決めてから住む場所を探しました。
きっとみなさんは、そこに一番時間がかかっていると思います。考えるきっかけもないですし、お金のことと理想のライフスタイルのことを相談できる場所もないんですよね。

 

「家を買う」のは「街を買う」のと同じこと

庭は段々畑になっていて、前の所有者から引き継いだレモンやミカンの木には、果実がたわわに実っていた

庭は段々畑になっていて、前の所有者から引き継いだレモンやミカンの木には、果実がたわわに実っていた

── その次に、住むエリアを探したんですね。どんな所を見たのですか?

どのエリアだったら好みの家が買えるのかを考えたとき、首都圏では物件がなかったんです。でも私は海や山が見える場所が好きなので、首都圏の郊外よりは田舎のほうがいいと思いました。三浦半島や千葉、小田原にも行ってみましたが、電車通勤が混雑で大変だったり、海や街の雰囲気がイメージと違っていたり。
故郷の浜松も選択肢に入れて『お試し移住』をしてみたんです。天竜区にカフェを経営している知人がいて、まちづくりも盛り上がっていて、楽しく暮らせそうだと感じたんですが……。やはり都内までの通勤には時間がかかってしまうので残念ながら、ちょっと現実的ではなかったんです。それに比べ、熱海は新幹線で通える範囲で距離感がとても良かったんです。

── 予算のほかに、家を買うときにチェックしたことはありますか?

街の雰囲気を見ました。その街と自分との相性が合うかどうか。家の両隣や近隣にどんな人が住んでいるかは、ほとんどの方がチェックされると思いますが、あまり街全体は見ませんよね。広い目で見ると自分の行動範囲って、毎日歩く場所であり、自宅の庭の延長だと思うんです。だから『家を買う』ということは、『街を買う』ことと同じ。
商店街に行ってみたり、カフェに入ってみたり、隣の人の会話を聞いてみたり。話しかけたりしないまでも、さりげなく観察してみて、その街に自分自身がいて違和感を感じないかどうかを確認します。
それから、子どもがいるので小学校が近いこと、スーパーや郵便局、ドラックストアなど生活に必要な施設がそろっていること。私は、建物だけにこだわるのではなく、外との関係が楽しめる家がいいと思っています。今も日中は家のなかより庭にいることが好きですし、カフェでも店内よりテラスに出てしまうタイプ。聞こえてくる音や流れてくる匂いを感じ、どんな風が吹くか、何が見えるかを大事にしています。その街や自然を五感で感じることができる場所が好きなんです。

── 熱海の街の最初の印象はいかがでしたか?

熱海に足を運ぶまでは観光地のイメージが強くて住む街ではないと思っていました。ところが、実際に訪れてみたら街も人もとても素敵でした。熱海のまちづくり会社が運営しているカフェで、スタッフの子たちに『どこに住んでるの?』『住むんだったらどこがいい?』など、根掘り葉掘り質問しても嫌な顔せず、いろいろ教えてくれたんです。
まちづくりイベント『ATAMI2030会議』の南熱海で開催された回にも参加しました。そのイベントの関連で行った畑から海が見えたんです。本当に素晴らしい景色で感動しました。
それから、好きな仕事をして暮らしてる人や、面白くてちょっと変わった人たちがたくさん集まっていたのも魅力的でした。

 

ワークショップを開いて自宅をリノベーション

中屋さんが主催したリノベーションのワークショップの様子(中屋さん提供)

中屋さんが主催したリノベーションのワークショップの様子(中屋さん提供)

── 中屋さんご自身で自宅をリノベーションしたということですが、大変でしたか?

川崎から通いながらリノベーションしました。ワークショップ形式にして床貼りや壁塗りを体験してもらおうと、Facebookで参加者を募りました。17人も来てくれて、みんなでワイワイ楽しく作業ができましたが、なにぶん素人の集まりなので時間がかかりましたし、仕上がりが完璧ではなく、プロから見たら驚くほど適当な仕上がりだと思いますが、とても素晴らしい経験でした。
素材は自分の足でショールームを回って気に入るものを探したり、インターネットで探して購入したりしました。ペンキの色ひとつでもこだわり、床材は取り寄せたサンプルを重ねたら高さ1mを越してしまいました(笑)。キッチンの棚や洗面台など、以前住んでいた家で使っていたものを再利用しているものも一部あります。大変ですが、自分の理想をかたちにできる楽しさがあるので、現在でも少しずつDIYでリノベーションを続けています。

── リノベーションもイベントのひとつにしてしまったんですね。とても楽しそうです。自然いっぱいの場所へ移住するとレジャーや遊び場所にも困りませんね

子どもと遊びに行く場所もお金をほとんど使いません。夏は、休みのたびに近くの長浜海水浴場へ行っていました。海水浴場のシャワーは混んでいるときは順番待ちをせず、水着のままで車に乗って帰ってきて、家のお風呂へ直行できるところが便利です。海水浴場の駐車場は市民だと半額で500円。
ほかにも市民なら安く使える施設がありますよ。

── 毎日、充実していますね

熱海は、まちも人も多様性に富んでいて、日常がほどよく刺激的なところが私に合っているんですよね。実家のある静岡県浜松市は落ち着いた暮らし方をしている人たちが多かったように思います。私のような変わり者には逆にそれが落ち着かなかったのかも……(笑)。せっかく東京に出たのになぜ再び静岡県にもどってきちゃったんだろう…って、今思うと何だか不思議(笑)。

ウッドデッキは前の所有者から引き継いだ。本を読んだり、バーベキューしたりと大活躍(中屋さん提供)

ウッドデッキは前の所有者から引き継いだ。本を読んだり、バーベキューしたりと大活躍(中屋さん提供)


 

◆ ◆ ◆

 
現在、中屋さんは不動産のスキルと移住経験を活かして、ライフスタイルを提案する仕事の起業準備中。朝はビーチでウォーキングしたり、家族と庭で畑仕事や果実の収穫をしたりと、憧れていたライフスタイルを過ごしています。
中屋さんのような自分らしいライフスタイルを実現できる人が増えれば笑顔も増えていきそうで、とても楽しみですね。

今回が最終回となりますが、熱海や伊豆の情報を私なりにお伝えしてきました。熱海、伊豆半島に暮らしてみたいと思ってくれると嬉しいです。
まずは足を運んでみてくださいね!

 
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※本記事は、小林ノリコ氏の知識と経験にもとづくもので、わかりやすく丁寧なご説明を心がけておりますが、内容について東急リゾートが保証するものではございません。
※本記事の情報は、公開当時のものです。以降に内容が変更される場合があります。
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