楽しみ方

木の香り、ゆらめく炎、パチパチと薪がはぜる音、ポカポカしたぬくもりに包まれながら燃える炎を眺めていると、心がやすらぎます。
いつものピザも、炉内で焼けば手軽に石窯風の本格ピザに早変わり。
いつもの料理がさらに楽しく、おいしくなります。
いつしか薪ストーブの周りには家族や仲間が集まって、一番あったかい場所でペットが寝そべり、ゆっくり一日が過ぎていきます……。

これから寒さが厳しさを増す季節。暖かな炎が豊かな時間を届けてくれる薪ストーブを別荘に置いてみてはいかがですか。慌ただしい日常を忘れ、ゆったりくつろげる別荘という空間で、薪ストーブのやわらかな炎は心と身体をやさしくときほぐしてくれることでしょう。別荘で趣味を堪能しよう、今回は薪ストーブのある別荘ライフの始め方を薪ストーブの達人にうかがいました。

 

まず知ろう! 薪ストーブの暖かさの魅力

薪ストーブの暖かさを「お風呂あがりのような、身体がポカポカする感じ」と表現するのは、薪ストーブの販売・施工・ライフスタイル提案などを手掛ける『東京ストーブ』の松田友馬さん。

薪ストーブは密閉された炉内で薪を燃やすことでストーブ本体を暖め、そこから放射される遠赤外線で部屋全体を暖める仕組みになっています。ごはんをふっくら炊き、さつまいもをホクホクに焼きあげ、温泉の湯上がりもポカポカにしてくれる遠赤外線効果で身体の芯から暖めてくれるのが薪ストーブの魅力です。

『東京ストーブ』にも冬になると「別荘に薪ストーブを入れたい」というお客さまが増えるそうです。お隣の別荘の方が薪ストーブを使っていて、その暖かさに驚いて来店される方が多いとのこと。

「薪ストーブの暖かさを知ってしまうと、もう他の暖房器具には戻れないと皆さんおっしゃいます。薪ストーブというと炎を眺めるとか趣味性が高いイメージですが、暖房器具としても優れているものなんですよ。しかも、現在の薪ストーブは性能も優れていて、メンテナンスも昔のストーブや薪風呂よりずっと楽です。煙突掃除も毎日使う方なら年に1度、別荘で週末のみ使う方なら3~4年に1度が目安で、それ以外はほとんど手がかからないんです」

 

  • 火のつけ方

最初に火をつけるときは、薪をたっぷり入れるのがポイント。「小さな火がだんだんと大きな炎になっていく様子を眺めているだけでワクワクします」と松田さん。

 

早く暖まる? 長く暖まる? あなたはどっち?

別荘に薪ストーブを入れたいというお客さまに、松田さんはどんなタイプをおすすめするのでしょうか。

「薪ストーブは薪に火をつけてストーブ本体が暖まるまでに30~60分かかり、徐々に部屋が暖まっていくのが特徴ですが、材質によって暖まり方に違いがあります。ですので、週末だけ別荘を利用されることが多い方には、暖まるまでの時間が早い鋼板製が使い勝手が良いと思います。長期間滞在されることが多い方には、火が消えても暖かさが長く持続する鋳物製のものなどがおすすめですね」

材質による暖まり方の違い

  • 鋼板…鋼板を折り曲げて成型するもの。早く暖まるが、蓄熱性が低いため冷めるのも早い。
  • 鋳物…鋳型に鉄を流し込んで成型。製造のしやすさからデザインのバリエーションが豊富。暖まるまで時間がかかるが、蓄熱性が高いため冷めにくい。

さらに、材質の違いと合わせて、「どんな空間で使いたいか」も薪ストーブ選びの重要なポイントになると言います。

「薪ストーブは部屋を暖める小型のものから1台だけで家全体を暖める大型のものまでありますが、例えば小さな部屋を暖かくしたいからといって、大きな薪ストーブを入れれば良いかというと、そうとも限りません。薪ストーブは本体をしっかり暖めないと部屋が暖まらない仕組みになっています。従って小さな部屋の場合、部屋のサイズに合ったスペック(暖房面積など)の薪ストーブなら適正な量の薪で済むのに、大きな薪ストーブだとストーブ本体を暖めるために必要以上の薪が必要になってしまうからです。部屋のサイズに合った薪ストーブを選べば、無駄に薪を使う必要もなく効率よく部屋を暖めることができます」

 

■鋼板製薪ストーブのおすすめ!
イギリス・ハンターストーブ社のフラッグシップモデル「ヘラルド8」は、鋼板製特有の早い火の立ち上がりで部屋を暖めてくれる即暖型の薪ストーブです。コンパクトサイズながらもストーブトップや炉内も広く、クッキングにも最適。 □価格:48万円~ □W635×H624×D434mm □暖房面積:59㎡

 

■鋳物製薪ストーブのおすすめ!
家全体をパワフルに暖めたい方におすすめ。世界でも最大クラスの暖房能力を誇るアメリカ・バーモントキャスティングス社の「デファイアント」。鋳物ならではの威風堂々とした造形美とクラシックなデザインが愛されています。ストーブトップや炉内も広く、クッキングにも大活躍。しゃがむことなく薪を入れられる開閉式のトップも便利。 □価格:59万円~ □W830×H735×D647mm □暖房面積:223㎡

 

暖まるだけじゃない!あなたはどう楽しむ?

また、炎をゆっくり眺めたい方にはガラス窓が大きくて炎がキレイに見えるタイプ、ストーブクッキングを満喫したい方には炉内が広くてストーブトップでも料理できるタイプなど、使い方や楽しみ方で薪ストーブのデザインや仕様も変わってきます。

「薪ストーブをどういう空間で使いたいか、どのように楽しみたいかを整理して専門店をめぐると、どんな薪ストーブが最適かイメージも掴みやすくなると思います。デザインも豊富にあり、カントリー調のデザインが魅力のアメリカ製や、シンプルでクラシックなデザインが特徴のヨーロッパ製、モダンなデザインの北欧製など、眺めているだけでも楽しくなると思います。
それらを実際に見ながら、自分のライフスタイルや空間に合ったスペックの薪ストーブを探してみてはいかがでしょうか。小さい空間を暖めるのに大きな薪ストーブは不要ですし、炎だけを楽しみたいならクッキング機能は要りません。もちろん、美しい炎もクッキングも両方楽しめるタイプもありますし、そのように整理していくと、しぜんと自分に合ったデザインとスペックを持った薪ストーブに出会えると思います」

薪ストーブ選びのポイントの整理

  • 使用する部屋の広さは?
    …リビングなど特定の部屋なのか、別荘全体なのか
  • どのように楽しみたいのか?
    …美しい炎をゆっくりと眺めたいのか、ストーブクッキングも満喫したいのか

■美しい炎を鑑賞したい方におすすめ!
ベルギー・ネスターマーティン社の「S43」は薪ストーブとして初めて2016年度グッドデザイン賞を受賞。優美なフォルムと優れた機能美に加え、高い燃焼効率が生み出す、夕日にかざしたシルクのベールのような“炎の美しさ”が受賞の理由です。
□価格:47万円~ □材質:鋳物 □W735×H803×D460mm □暖房面積:150㎡

 

■縦に伸びる炎を堪能したい方におすすめ!
モダンなデザインで愛されるスウェーデン・コンツーラ社の「C780アービスコ」は、インテリア性の高いスタンドタイプ。縦に伸びる炎の揺らめきを、正面だけでなくサイドからも鑑賞できるのが魅力です。 □価格:59万円 □材質:鋼板 □W459×H1200×D372mm □暖房面積:21~50㎡

 

■ストーブクッキングにおすすめ!
カントリー調のデザインが魅力のアメリカ・バーモントキャスティングス社の「イントレピッドⅡ」。コンパクトサイズながら、バーベキュー文化が発展したアメリカらしく、ストーブトップでの調理や炉内でのクッキングも使いやすく配慮された優れものです。□価格:36万円 □材質:鋳物 □W540×H610×D545mm □暖房面積:112㎡

 

■本格的なクッキングにおすすめ!
クッキングストーブの人気ブランド、オーストラリア・ピキャン社の「バロッサ」は、「本格的な料理と大きな炉」という日本人の要望から誕生。下部ボックスは広々したオーブン、上部ボックスで薪を燃やし、ストーブトップの2つのカバーを開けると直火で料理もできます。 □価格:56万円  □材質:鋼板 □W690×H828×D565mm □暖房面積:148㎡

 

1~2日で設置も完了。炎を楽しむ別荘ライフがスタート!

専門店をめぐり、部屋のサイズや自分の使い方に合った薪ストーブと出会えたら次のステップへ。薪ストーブを設置する部屋の図面をもとに、部屋を効率よく暖めるために最適な設置場所、床と壁の遮熱方法(レンガや鋳型のパネルなどを使用)、煙突の設置場所などを決めます。新築の場合は、別荘を建てていく過程で工事に何回か入って設置していくそうですが、後付けの場合は設置場所や遮熱方法が決まれば、『東京ストーブ』の場合、最短で1~2日で設置工事が完了するそうです。
(設置可否についても、専門店にご相談してみてください。)

  • 予算の目安

薪ストーブを設置したら、次は薪の手配です。『東京ストーブ』のお客さまの場合、『東京ストーブ』の店で薪を購入してから別荘に向かう方が多いとのこと。

「薪を自分で準備しようとすると、日当たりや風通しの良い場所でも最低1年は乾燥させておかないと使えません。そうした手間もあるので、週末だけ別荘を利用するお客さまの場合、その都度、薪を購入して別荘に行かれる方が多いですね。1日の薪の使用量はだいたい10kgで、30kgあれば週末に2泊しても足りると思います。万が一足りなくなっても別荘地に行けば薪を売っている店もあります。ですから最初は薪を購入し、薪の調達や薪割りは馴れてから少しずつ始めるのが安心ではないでしょうか」

また、以前は油分の多いマツやスギなどの針葉樹は煙突に煤が溜まりやすく、燃え方も激しいためストーブや煙突を痛める原因にもなり、薪には不向きとされていました。しかし、近年では薪ストーブも進化し、針葉樹でも薪として使えるようになっています。

「基本的にはどんな薪を使っても大丈夫ですが、燃えやすいマツやスギなどの針葉樹は火つけ用に、火が安定したら火持ちのするクヌギやナラなどの広葉樹を使用するのが賢い利用法です。薪ストーブはガンガン燃やせばいいというものでもありません。適度な温度で使えば心地よい暖かさで壊れにくく、20年は使えると思いますよ」

「本能的な感覚なのか、炎を眺めていると安心するんです」と薪ストーブの魅力を語る松田さん。

最後に松田さんに、別荘での薪ストーブの楽しみ方をうかがいました。

「薪ストーブは炎を眺めているだけでも楽しいですし、クッキング機能のあるストーブならストーブトップでつくる煮込み料理もいい香りがしてワクワクします。いつものピザも炉内で焼くと石窯で焼いたように周りがパリッと焼きあがったり、鶏も丸ごとローストできたりと、料理もイベント感覚で手軽に楽しむことができます。メンテナンスの心配もほとんどないので、寒い冬に別荘でのんびり過ごしたい方に、薪ストーブは心やすらぐ時間を届けてくれると思います」

 

東京ストーブ

住所:東京都杉並区下高井戸2-6-2 2階
営業時間:10:00~18:00 定休日:火曜日

オーナーが自宅に設置した薪ストーブの暖かさと豊かさに魅せられ、7年前に創業。薪ストーブの販売・設置・メンテナンスからライフスタイル提案まで幅広く手掛ける薪ストーブ専門店です。日本初のストーブ技術認定資格「WMEP」取得者も在籍しており、季節ごとに開催する薪ストーブ講習会や家族向けイベントも好評。

撮影:内田 龍

 
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