前回の記事では、別荘購入時に掛かる税金、「印紙税」、「登録免許税」、「不動産取得税」について、税理士の根岸 新先生に教えて頂きました。
初回にも述べましたが、別荘ライフにおける課税のタイミングは、大きく分けて、購入時・維持している時・売却時の3つのステージに分かれます。連載3回目の今回は、おそらくみなさんが一番気になるであろう、別荘を維持していく時に掛かる税金について根岸先生に解説して頂きます。
別荘維持に掛かる税金は、大きくは、「固定資産税」と「住民税」の2つです。まずは、「固定資産税」からみていきましょう。
1.固定資産税
固定資産税とは、土地・建物に対して、市区町村が課税する地方税です。課税対象者は、毎年1月1日時点の土地・建物などの所有者になります。正確には、毎年1月1日時点の固定資産税課税台帳に登録されている人が、課税対象者です。納税は、市区町村から送られてくる納税通知書を使い納税します。支払いは、一括払い又は年4回の分納のいずれかを選ぶことができます。
固定資産税の税額は以下の計算で求められます。
<固定資産税の計算方法>
税額 = 課税標準 * × 1.4%(標準税率)
* 課税標準…固定資産税課税台帳に登録されている固定資産税評価額のこと。ただし、土地の場合には負担調整措置が入る
【POINT】都市計画税がかかる場合も
建物・土地が、都市計画法による市街化区域内に所在する場合は、都市計画税がかかる場合もあります。都市計画税も地方税であり、固定資産税と同様に、毎年1月1日時点の固定資産税課税台帳に登録されている人が、課税対象者です。よって、市街化区域内に住宅を所有すれば、固定資産税と都市計画税が併せて徴収されることになります。
<都市計画税の計算>
税額 = 課税標準 × 最高0.3%(制限税率)
固定資産税 & 都市計画税 シミュレーション
土地の固定資産税課税標準額:1,000万円
建物の固定資産税課税標準額:500万円
合計1,500万円
1500万 × 1.4% = 21万円
都市計画税が賦課される地域に土地・建物がある場合は、
1500万 × 最高0.3% = 4.5万円
合計25.5万円
となります。
1-1. セカンドハウスで税額の軽減
住宅用地と新築住宅の建物に対して、固定資産税、都市計画税ともに軽減特例が設けられています。この特例は、セカンドハウスの場合にも適用されます。セカンドハウスとは、「週末に居住するため郊外等に取得するもの、遠距離通勤者が平日に居住するために職場の近くに取得するもの」を指し、「毎月1日以上居住の用に供するもの」とされています。自治体によって、セカンドハウスの要件が多少異なりますが、例えば月に1回、週末に購入した別荘で生活し、そこから仕事場に向かうといったことで、要件が満たされる自治体もあります。申告方法は、自治体に問い合わせ、申告書をもらい、記入・提出します。
固定資産税の軽減特例について
▼ 住宅用地の場合
- 小規模住宅用地(200m²以下)
課税標準 × 1/6 - 一般住宅用地(200m²超)
課税標準 × 1/3
但し、建物の課税床面積の10倍が上限とされます。
▼ 新築住宅の建物の場合
新築建物は、平成30年3月31日までに新築された場合、120m²(課税床面積)までの部分について3年間、もしくは5年間にわたり、固定資産税が1/2となります。
この要件は以下の通りです。
- 3階建以上の耐火構造・準耐火構造住宅で新築後5年間
- 上記以外の新築建物で新築後3年間
- 専用住宅・店舗併用住宅(店舗併用住宅の場合、居住用部分が1/2以上)
- 居住部分の課税床面積が一戸につき50m²以上、280m²以下であること
都市計画税の軽減特例について
都市計画税については、原則として新築建物に対する軽減特例はありません。ただし市区町村によっては、条例により軽減特例がある場合もあります。
▼ 小規模住宅用地(200m²以下)
課税標準 × 1/3
▼ 一般住宅用地(200m²超)
課税標準 × 2/3
セカンドハウスとして要件を満たした別荘を持ち、以下の条件で、軽減特例の対象となった場合のシミュレーションをしてみましょう。
固定資産税 & 都市計画税 セカンドハウスの軽減を受けた場合のシミュレーション
土地の固定資産税課税標準額:1,000万円
建物の固定資産税課税標準額:500万円
建物の新築年月:平成28年4月
建物の床面積:120m²(全て居住用)
土地の面積:150m²
土地…1,000万円 × 1/6 × 1.4% = 2.33万円
建物…500万円 × 1/2 × 1.4% = 3.5万円
合計 5.88万円
都市計画税があり、こちらも軽減特例が当てはまれば
1500万円 × 1/3 × 0.3%(最高税率) = 1.5万円
合計 7.38万円
となります。諸条件はありますが、セカンドハウスの特例を受けることができれば、ぐっと維持費が下がることがわかると思います。
1-2. 固定資産税の清算について
固定資産税、都市計画税の注意点ですが、毎年1月1日時点の固定資産税課税台帳に登録されている方が課税対象者になるとお伝えしました。実際に別荘を購入、売却するときに、12月31日に売買契約をすることはまずありません。年の途中で、売買契約が行われ、所有権移転が行われます。つまり、仮に2月に所有権移転が行われても、納税義務者は、その年の1月1日時点の所有者である売主であり、売主は1年分の固定資産税を支払うことになります(都市計画税も同様)。
ただ、これでは、不平等なので、不動産売買の場において固定資産税の扱いは、一般的に日割り計算で売主と買主が公平に負担するというのが慣習となっています。この固定資産税の精算について、法律での定めはありません。あくまで、売主と買主との話し合いで決定されるものであり、日割り計算で、お互いが納得したからといって、その年の納税義務者が年の途中で変わることもありません。よって、売主が支払った税金に対し、買主が負担すると決まった日数分の税金の還付が行われることもありません。買主の負担の固定資産税分は、通常は税法上、税金の支払いではなく売買代金の一部と見なされます。
2. 住民税
住民税の内訳は「所得割」と「均等割」という二種類の課税方法で構成されています。
所得割は自治体によって多少の違いはありますが、概ね「市町村民税6%」と「都道府県民税4%」の合計10%となっており、前年分の所得に応じて決まるため、高額所得者ほど金額が高額になります。
均等割は、地域社会のサービスに対する会費的な意味合いであり、住民税の「基本料金」のような税です。例えば、東京都は都民税額(1,500円)+区市町村民税額(3,500円) =5,000円です。別荘地で有名な静岡県熱海市は、県民税額(1,900円) +市民税額(3,500円)=5,400円となっています。さらに、均等割とは別に1平方メートル当たり650円の別荘等所有税が課税されています。
このように、自治体によって多少金額が異なるため、念のため、別荘購入地の金額を確認されたほうがよいでしょう。
セカンドハウスや別荘を所有しても、そこに住民票を移さなければ、住民税は発生しないと思われがちですが、実際には、課税されます。住民票のある居住地では所得割及び均等割が課税され、住民票がないセカンドハウスや別荘のほうは家屋敷にかかる均等割のみ課税されます。手続きとしては、納税通知書が届くので、それに従って納付してください。
以上、別荘を維持していく時に掛かる税金、主に固定資産税を解説しました。大きなポイントは、セカンドハウスとして、認められるかどうかです。セカンドハウスと認定されれば、税制面での軽減措置を受けることがきます。
次回は売却時に掛かる税金について根岸先生に教えて頂きます。
監修
根岸 新
根岸税務会計事務所・所長代理。大学卒業後、新宿の高田馬場に事務所を構える同税理士事務所に入社。3代目として、所長代理を務める。ホームページでは「親子間のお金の貸し借り」や「ふるさと納税」といった気になるトピックスをわかりやすく解説するなど、「何でも相談されて、何でも答えられる税理士」を目指している。