エリア情報 軽井沢扉

「軽井沢を1日でめぐる自転車ルートマップ」を

何ともうれしいことに、前回の熱海散策記事「熱海の魅力は新旧共存にあり!~地元の人に聞く、人気の秘密とは?」を読んだ方から「ほかの地域についても教えてほしい」との声をいただいた編集部。ならば今回は、さらにじっくりと移住地や別荘地として人気のエリアをご紹介しようと、軽井沢を訪れることにしました。

軽井沢の木々に囲まれた道を自転車で颯爽と走り抜けるのは、何にも増して快感です。また、街の規模自体が自転車で回るのにちょうどよいサイズのため、名所めぐりにも自転車は最適のツール。実際軽井沢にはレンタサイクルの店舗が多く、自転車での軽井沢めぐりは天候のいい時期にはもっともおすすめのレジャーのひとつと言えます。

そこで今回編集部では、軽井沢に滞在する人向けに1日程度で自転車で周遊できるモデルルートを作成。実際にたどった同ルートについてレポートをお届けします。

軽井沢駅。北陸・長野新幹線に乗れば、1時間で到着

軽井沢駅。北陸・長野新幹線に乗れば、約75分で到着

気軽にアクセスできるリゾートエリア

早朝に東京駅から北陸・長野新幹線に乗車。約75分で軽井沢駅に到着しました。改札を抜けると空には霧がかかり、その向こう側には山々が見え隠れしています。前日に大雨が降った影響で、空気が湿っているからでしょうか。辺り一帯はしっとりとしていて、とても静かです。先ほどまで東京駅の雑踏のなかにいたのが嘘のよう。落ち着いた雰囲気にホッとします。

さっそく、駅前のレンタサイクル店へ直行。自転車を利用する観光客は多く、この日もミドルエイジのご夫婦や女性ふたり組が仲良くご来店。記者も同様に自転車をレンタルします。作成したルートプランを確認し、まずは軽井沢本通りを走行。三笠通りに向かいます。

鬱蒼と茂る木々は、都会ではなかなか見られない

鬱蒼と茂る木々は、都会ではなかなか見られない

どこまでも続く並木道

三笠通りを進むと、見事なカラマツの並木が現れました。“新日本街路樹100景”に選ばれているというだけあって、なかなか壮観です。並木道の両サイドにはほかにもさまざまな樹木が茂り、その木々にゆったりと囲まれる形で別荘が並びます。開放感にあふれ、空気もすがすがしく、どこまでも自転車をこいで行けそうな気分です。

左右に瀟洒な別荘が並ぶ、三笠通り

左右に瀟洒な別荘が並ぶ、三笠通り

宣教師が持ち込んだ“別荘文化”

軽井沢という土地は標高950mから1200mの緩い斜面に位置しており、そのため気候は冷涼。8月の平均気温は20.5℃で、東京に比べると5.5℃も低いそうです。そう聞くと、避暑地として好まれているのがわかりますね。避暑地としての歴史は古く、明治19年(1886年)、カナダ生まれの宣教師、アレキサンダー・クロフト・ショーが軽井沢を訪れた際、その気候風土を賞賛したことからスタートしたのだとか。彼は軽井沢を「hospital without roof(屋根のない病院)」と呼び、その夏家族や友人とともに軽井沢でひと夏を過ごしました。さらに2年後に旧軽井沢の大塚山に別荘を建てると、友人たちの宣教師も彼に続々とならったのです。

軽井沢に最初に“別荘文化”を持ち込んだのは宣教師たちだったのですね。日本人所有の別荘は明治26年頃になって初めて登場したのだとか。

日本を代表する政財界人が多く滞在した旧三笠ホテル

日本を代表する政財界人が多く滞在した旧三笠ホテル

三笠通りを自転車でグングン北上していくと、重要文化財の旧三笠ホテルが見えてきます。明治39年実業家の山本直良によって創業されたこの建物は、電灯式のシャンデリアや英国製タイルを貼った水洗トイレ、英国製カーペットなど当時の最先端かつ最高級の設備が今もそのまま残っています。書斎やティールームの設えなど、現代でも参考になるデザインが多く、そのクオリティの高さには圧倒されるほど。建築やインテリア好きにはたまらないスポットのはず。

まばゆいばかりの光が差し込む窓。テラスへの出口になっている

まばゆいばかりの光が差し込む窓。

窓の格子や椅子のアーチなど、現代でも真似してみたい

窓の格子や椅子のアーチなど、現代でも真似してみたい

旧三笠ホテルから外に出ると、先ほどまでのひんやりとした空気から一転。太陽が顔を出し、木々の間から木漏れ日がキラキラと差し込んでいます。軽井沢に来て驚いたことのひとつに樹木の多さがあるのですが、これらは植林されたものが多く、たとえば明治16年には、甲州財閥の雨宮敬次郎が落葉松を700万本ほど植えました。現在の軽井沢ではほかにもトチやモミ、コブシなどなど、実に多くの木々を見ることができます。

旧三笠ホテル近くの、赤の三角屋根が印象的な旧スイス公使館を見て、「こういう外観の別荘を建てるのもおもしろそうだなあ」などとひとりごちながら、再び軽井沢駅方面へ。緑の木々の下を自転車でシャーッと下るのは非日常で最高の気分です。

緑のなかにひっそりと佇む旧スイス公使館

緑のなかにひっそりと佇む旧スイス公使館

朝昼夕の変化も楽しめる軽井沢

さて、このあたりで一服しようかなと、旧軽銀座通りの入口付近にある喫茶店「珈琲歌劇」に立ち寄ることにしました。こちらはアンティークな雰囲気が特徴の、創業33年の老舗店。もとは兵庫県芦屋市にあった個人の住居を軽井沢に移築してオープンさせたのだとか。軽井沢を店舗の場所に選んだ理由は、オーナーにとっての「憧れのエリアだった」から。オーナー同様、軽井沢に長年魅了されているマスターの中村龍郎さんは次のように教えてくれました。

アンティークな雰囲気が特徴の純喫茶「珈琲歌劇」

アンティークな雰囲気が特徴の純喫茶「珈琲歌劇」

「軽井沢は朝昼夕と、時間の経過によってさまざまな表情を見せてくれます。その変化をよく知っている方は、たとえば別荘を冬も過ごせるように作られていて、オフシーズンの時期もその移り変わりを楽しむために軽井沢でお過ごしになったりしています。なので、観光客の方が真夏の日中だけ軽井沢にいらして『意外に暑いんですね!』と言ってすぐにお帰りになるのを見るともったいないなと思います(笑)」

ロイヤルコペンハーゲンの器が美しい「クラシカルオペラブレンドコーヒー」840円(ポットサービス付き)

ロイヤルコペンハーゲンの器が美しい「クラシカルオペラブレンドコーヒー」840円(ポットサービス付き)

水のきれいな癒しスポット

そんな“軽井沢愛”の強いマスターおすすめのスポットは、雲場池と御膳水。どちらも水が極めて美しく、癒しとパワーに満ちているのだそう。それならば店内でクラシック音楽を聴いて、ドリップしたての深みのあるコーヒーをいただいてリラックスできたことだし、よし、足を延ばしてみようと。まずは自転車で5分ほどの場所にある雲場池を目指すことに。

カフェや、イタリアン、フレンチなどのレストランが点在する離山通り

カフェや、イタリアン、フレンチなどのレストランが点在する離山通り

オシャレなカフェやレストランで賑わう離山通りを走行し、雲場池へ。天候によっては池全体が霧で包まれることもあるようですが、この日は水面に緑がクッキリと映り込む様子を見ることができました。秋になると木々が真っ赤に紅葉するというのですから、さぞ美しいことでしょう。

早朝は霧が多く、幻想的だという雲場池

早朝は霧が多く、幻想的だという雲場池

雲場池をあとにし、再び自転車をこいで7分ほど行くと御膳水に到着。御膳水とは「ホテル鹿島ノ森」の敷地内の渓谷に湧き出る水のことで、雲場池の水源にあたります。諸大名や宮家などの御膳に利用されたことから「御膳水」という名がついたのだとか。いざ足を踏み入れてみると……、おや、人っ子ひとりいません。観光客にあまり知られてないスポットなのかもしれませんね。木々の緑やコケの色が濃く深く、神秘的。川のせせらぎだけがサラサラーッと響いて、心が洗われます。精霊がいてもおかしくはない雰囲気です。

御膳水の周辺は、映画『もののけ姫』に出てくる森のよう

御膳水の周辺は清浄で神秘的。心が洗われるよう

心がホッとなごむ教会

御前水で清らかな空気に触れたあとは、再度、旧軽銀座通り方面へ。聖パウロカトリック教会を訪れます。ここは昭和10年にイギリス人のワード神父によって設立された教会で、傾斜の強い三角屋根が特徴的。中に入ると山小屋のような作りになっていて、何とも心が和みます。軽井沢にはこのような「ホッとする」場所が多いのです。

宣教師が来訪したことから、教会が多い軽井沢

宣教師が来訪したことから、教会が多い軽井沢

教会を出たあとは旧軽銀座通りに向かい、自転車を押しながら散策。この通りにはまさに観光地で見かけるようなお土産物店や昔ながらの喫茶店などが並ぶ一方、モダンな外観のウエディングレストランも。これだけ新旧の店舗が入り交ざっているのだから、本来なら雑然としてもよさそうなものですが、この商店街にはなぜか“品”を感じます。軽井沢がどこを訪れても“品”があるのはなぜなのでしょう。

平日でも賑わう旧軽銀座

平日でも賑わう旧軽銀座

昔からの名店も数知れず

昔からの名店も数知れず

庶民派フレンチレストランで、地元の食材に舌鼓

久々に朝から体を動かしたものだから、すっかり空腹に。気づくとお昼の1時を回っています。ここはしっかり腹ごしらえをしようと、旧軽銀座通りにある庶民派フレンチ洋食「KAZURABE(カズラベ)」へ。こちらでまったく驚かされたのは、メインのステーキに添えられた野菜が20種ほどあり、ボリュームたっぷりでメニューのすべてが美味だったこと。東京で15年修業し、10年前に同店をオープンしたオーナーシェフ浦部和也さんによると、「軽井沢はおいしい野菜を東京などの半分ほどの価格で買える」のだとか。

「無理をしなくても良質の素材を仕入れられるんです。それからお客様とゆっくりコミュニケーションを取れるのもうれしい。都会ではできないことだらけですね」

明治時代に宣教師のショーたちが訪れるまでは、軽井沢では野菜は栽培されておらず、ヒエやアワなどの雑穀類しか生産されていなかったのだとか。しかし、ショーたちは軽井沢の地に合ったキャベツや白菜などの栽培法を地元の人たちに教え、それが今日の高原野菜に転換していったらしいのです。軽井沢の文化の源には、何よりも宣教師の尽力があるのですね。

ランチは、ステーキやハンバーグなどのメインディッシュに、玄米とソフトドリンク付きで1,100円~。男性でも満腹になるボリューム!

ランチは、ステーキやハンバーグなどのメインディッシュに、玄米(パンも選択可能)とソフトドリンク付きで1,100円~。男性でも満腹になるボリューム!

街道時代の象徴的スポット

さてさて、おなかが満たされたところでサイクリング再開。再び、自転車を押してゆっくりと旧軽銀座を進みます。商店街が尽きたところから再度、自転車で走行。苔生した欄干が目にも鮮やかな二手橋に着きました。

苔生した欄干が目に鮮やかな、二手橋

苔生した欄干が目に鮮やかな、二手橋

この橋は、江戸時代に軽井沢が街道の宿場街だった頃、旅籠に泊まった旅人が翌朝出立の際にわたった橋とされています。一説には旅人同士が二手に別れる地点だったからとも、旅人が宿の人に見送られて別れる場所だったからとも言われています。

昔の軽井沢のいわば象徴的なスポットと言えるこの橋を訪れ、矢ヶ崎川の流れをしばし眺めてからもと来た道へ。そして、ほんの100メートルほど走行するとすぐに左折。再び見えてきた矢ヶ崎川沿いに「お気持ちの道」を走行します。雨上がりで水量の多い川を横目に疾走し、今度はそのまま「ささやきの小径」へ。

文士を魅了した地

ここは軽井沢をこよなく愛した作家、堀辰雄の小説『美しい村』と『風立ちぬ』の舞台で、雄大なアカシアの木々が訪れる人を優しく迎えてくれます。堀のように軽井沢に魅了された文学者は実に多く、同時代では室生犀星や夏目漱石、有島武郎などなど、そうそうたる面々が軽井沢で思索にふけったのです。

ささやきの小径の近くにて。軽井沢は、「つい入りたくなる」脇道が多い

ささやきの小径の近くにて。軽井沢は、「つい入りたくなる」脇道が多い

軽井沢に生きる精神

軽井沢文化の礎を築いた宣教師のショーたちは、この地に魅了されて以来、「時間と約束を守ること、ウソを言わぬこと」などの考えを住民たちに伝え続けました。その精神は現代にも引き継がれ、昭和48年には「軽井沢町民憲章」が制定されました。憲章の一部は以下の通り。

「世界に誇る清らかな環境と風俗を守り続けましょう」

「すべての来訪者に心あたたかく接しましょう」

「かおり高い伝統と文化を育てあげましょう」

自分たちの町に誇りをもち、その上でほかの土地からやって来た人を受け入れる優しさももっている。住民のこれらの心のもちようこそが、町全体に“品”をもたらしているのかもしれません。……謎が少し解けた気がしました。

軽井沢の自転車散策は、本当に爽快でした。

軽井沢の自転車散策は、本当に爽快でした

全ルートを踏破、見事な夕焼け空

最後は、軽井沢駅前のレンタサイクル店へ自転車を返却に。気づけばもう夕暮れ時で、駅前には見事な夕焼け空が広がっています。ほんの1日とはいえ、軽井沢の美しさと奥深さを満喫できる散策でした。最近は東京から北陸・長野新幹線で約75分というアクセスの良さから、週末は軽井沢で過ごすなど、柔軟なスタイルで移住する人が増えています。たしかに住んで心地よいだけでなく、そこで生活することに誇りをもてる町はそれほど多くないはず。軽井沢は、その両方を満たしてくれる土地なのです。

 

軽井沢を1日でめぐる自転車ルートマップ

「軽井沢を1日でめぐる自転車ルートマップ」全ルート

総走行距離:14km
総走行時間:1時間33分(+徒歩10分)
自転車レンタル料金(1日料金):1300円(税込)

A.軽井沢駅 → B.旧三笠ホテル 走行距離:3.6km  所用時間:30分

B.旧三笠ホテル → C.旧スイス公使館 走行距離:0.8km  所用時間:5分

C.旧スイス公使館 → D.珈琲歌劇 走行距離:2.1km  所用時間:15分

D.珈琲歌劇 → E.雲場池 走行距離:1.65km  所用時間:10分

E.雲場池 → F.御膳水 走行距離:1km  所用時間:7分

F.御膳水 → G.聖パウロカトリック教会 走行距離:0.75km  所用時間:5分

G.聖パウロカトリック教会 → H.旧軽銀座(散策)→ I.レストラン・カズラベ 距離:0.65km  所用時間:6分(自転車2分+徒歩5分)

I.レストラン・カズラベ → H.旧軽銀座(散策)→ J.二手橋 距離:0.45km  所用時間:6分(徒歩5分+自転車1分)

J.二手橋 → K.お気持ちの道 → L.ささやきの小径 → 中山道 → A.軽井沢駅 走行距離:3km  所用時間:18分

※掲載の情報は、2015年9月10日現在のものです。
※本記事の情報は、公開当時のものです。以降に内容が変更される場合があります。
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