エリア情報 今、なぜ熱海か——。

今、なぜ熱海か

昭和の温泉郷・熱海が、最近何やら元気らしい……。ここ数年、何度か耳にして、気になってはいた噂です。実際、ここ数年の間、熱海の宿泊客数は増加に転じて推移しており※、少子高齢化を背景に人口減は続いているものの、50歳代以上の移住者は増え続けているそうです。今、なぜ熱海なのか——。現地に行って取材しました。

※熱海市の統計によると、熱海の宿泊客数は、1991年度の440万人をピークに、バブル崩壊を経て大きく減り続け、東日本大震災の起こった2011年度には246万人まで落ち込みました。その後2012年度にやや持ち直し、2013年度には、287万人まで回復しました。最新の2014年度の統計は、今後、発表予定です。

変遷・・・・・・そして、変わらない熱海

東海道新幹線「こだま」で東京駅から45分。熱海駅の改札を抜けると、前方には古びたビルが立ち並び、昭和の香りが漂います。が、背後から響く大音量の工事音に振り向くと、旧ピッチで駅ビルの建設が進行中。取材の出だしから、「昔ながらの熱海」と「新たな熱海」が混在する象徴的なシーンに出会いました。

熱海駅前広場。左手が建設中の駅ビル、右手が昔ながらのビル群

熱海駅前広場。左手が建設中の駅ビル、右手が昔ながらのビル群

この、「昔ながらの熱海」と「新たな熱海」が共存している姿を私たちは取材の行く先々で目にすることになります。ひと昔前の大型観光ホテルが林立する横に、新コンセプトに基づくリゾートホテルが建っていたり、明治期の文学作品「金色夜叉」をモチーフにした「貫一お宮の像」が立った場所から少し歩いた所に、地中海北部のリゾート地を模した親水公園が整備されていたり(2009年に第3工区が完成)。

親水公園デッキ

地中海のリゾート地をイメージした親水公園デッキ

もちろん、こうした光景は、従来からそこそこに知られていた、熱海に特有のものといえます。今回、私たちが現地を訪れて知ったことの中で特におもしろいと感じたのは、カフェ文化の「新旧共存」でした。

熱海は、創業数十年という名店が軒を連ねる、純喫茶の聖地です(観光編)。名物オーナーが営む「ジャズ喫茶ゆしま」や「ボンネット」、別荘族が足しげく通ったとされる「café田園」など、この地で有名な喫茶店は枚挙にいとまがありません。こうした店々は、熱海が観光地としての隆盛を極めていたころからの味を守りながら、今でも昭和の雰囲気たっぷりに、路地裏で存在感を放っています。

別荘族が足しげく通った「café田園」。ケースに並ぶ食品サンプルが激シブです……。

別荘族が足しげく通った「café田園」。ケースに並ぶ食品サンプルが激シブです……。

一方で、こうした店舗から通りひとつほどを隔てた距離に、「CAFE KICHI(カフェキチ)」や「CAFÉ RoCa(カフェロカ)」を始めとする、しゃれたカフェがあったりします。洗練された内装に、ゆったりと落ち着いた雰囲気、素材にこだわったヘルシーメニューなどをそろえた、いわゆる、いまどきのカフェです。

熱海の地で愛されて14年、「CAFE KICHI(カフェキチ)」

熱海の地で愛されて14年、「CAFE KICHI(カフェキチ)」

これらのカフェは社会的な機能も担っていたりして、たとえば、「カフェロカ」は、NPO法人「atamista(アタミスタ)」が主催するカフェとして、熱海への移住者同士の交流の場や、熱海在住のデザイナー、アーティストなどの活動拠点としても使われています。さながらサロンのような役割を担っている店と言えそうです。レトロな雰囲気をまとってたたずむ往年の名喫茶も、かつてはそんな交流の場として脚光を浴びていたのかもしれません。

決して広くはないエリアに新旧のカフェ文化が共存する様には、なんだか熱海の縮図をみているようで、強い好奇心にかられます。いったい、どんな変遷を経て今に至るのか——それをたどるためだけに熱海を訪れてもいいかもしれない、などと思いました。

そして、実際、そんな好奇心にかられてこの地を訪れる人たちは、決して少なくはないようです。

「昭和レトロ」の代名詞的な老舗温泉旅館「福島屋旅館」(温泉編)を経営する松尾光貴さんは、新旧が同居する熱海の街を「混沌」と表現し、この混沌が多くの人を惹き付けるのではないかとみています。つまり、「混沌としているからこそ選択肢が多く、自分が探しているものが見つかると考える人が多いのではないか」というのです。

昭和が息づく「福島屋旅館」。入浴料は大人400円(税込)

昭和が息づく「福島屋旅館」。入浴料は大人400円(税込)

一方、カフェキチの姉妹店としてしらす丼などを提供する「KICHI+(キチプラス)」の高橋由希店長(グルメ編)は、新旧のカフェが共存する様子を「とてもおもしろい」と表現していました。その上で、今の熱海は「(従来とは)別の切り口でも楽しめるようになってきた」として、熱海という街の多様性を強調していました。

それぞれ、新旧の熱海を代表するような立ち位置にいる二人が、ともに、観光客が増えている背景のひとつとして、熱海の混沌として多様性に富んだ魅力について話してくれたのが印象的でした。

ADさん、いらっしゃい! 観光資源を生かす、熱海市の決断

言うまでもなく、熱海における「新旧共存」の魅力はカフェ文化に限ったものではありません。温泉・グルメ・観光・海といった熱海が誇る観光資源のすべてであてはまるものです。

そして、こうした恵まれた観光資源をうまく使い、熱海の魅力を積極的に発信していこうという取り組みが、熱海市を中心に動き出しています。

熱海市では、2011年度に宿泊客数が大きく落ち込むと、その翌年度にメディア広報に力を入れ始め、ロケ支援などを行う担当部署を経済観光課内に設置しました。

ADさん、いらっしゃい!」という専用ページを市役所のウェブサイト内につくり、山田さんという一人の担当者が365日24時間対応で、情報番組などのロケ支援に奔走しています。これにより、熱海市のメディア露出度が大きく増加しました。ちなみに、山田さんは、ドラマや映画などのロケをサポートする「制作部さん、いらっしゃい!」の担当者でもあります。

2014年に放送されたNHKの連続ドラマ「花子とアン」では、熱海市の指定有形文化財である「起雲閣」がロケに使われ、今年5月に公開された映画「パトレイバー 首都決戦」では、サンビーチや市役所などがロケ地になりました。このほか、多数の作品が熱海でロケを行っています。

昭和が息づく「福島屋旅館」。入浴は大人400円(税込)。

多くの番組でロケ地に使われているサンビーチ

今回、現地の人々に聞いたところでは、多くの人が、メディアへの露出増加が熱海の活況に大きく貢献していると考えていました。

福島屋旅館の松尾さんは、「そのうちネタ切れするだろう、なんて声もあるけど、熱海という街はネタ切れにならないんだよ」と、笑っていました。このあたりも熱海のスゴさかもしれません。

ネタ切れしない熱海のスゴさは、その歴史と文化の蓄積によるものなのでしょう。ここでお伝えしたのも、熱海の魅力のほんの一端にすぎません。

今回の取材で、編集部は、熱海エリアと近接する湯河原エリアのガイド情報を、地元の生活に密着した人の視点で記事にしました。以下をお読みいただけたら幸いです。

熱海・湯河原の「温泉」ガイド:別荘オーナー・地元の人も通う温泉をご紹介
熱海・湯河原の「観光」ガイド:別荘オーナー・地元の人の楽しみ方をご紹介
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